from :: Asahikawa Hokkaido

passer-by198

primetime pencil

2012/10/21


Posted

【ドラマ・企業攻防】「日の丸連合」がルネサス支援 外資による再建が覆った理由

source : 2012.10.21 産経ニュース (クリックで引用記事開閉)
 経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスに対し、官民ファンドの産業革新機構と、トヨタ自動車などの企業連合が合計で約2千億円を出資する支援策が固まった。自動車や家電の基幹部品となる半導体「マイコン」の安定供給を確保するのが狙いで、来月にも支援が決まる見通しだ。一時は米投資ファンドによる買収に傾きかけたルネサスの再建策。水面下で何があったのか。

■大口顧客が出資

「日本の産業界にとってはいいこと。だが、ルネサスは『生かさず殺さず』になるかもしれない」。経済産業省の幹部は、「日の丸連合」によるルネサス支援の意味をこう解説する。

支援によって、自動車業界を頂点とする部品のサプライチェーン(供給網)は守られる。技術流出も防げ、国内製造業の競争力は維持される可能性が高い。

だが、ルネサスに出資する企業はトヨタのほか、日産自動車、パナソニックなどルネサスがマイコンを供給する大口顧客だ。株主の意向が強く働き、ルネサスがマイコン供給の“下請け”から脱却できなければ、低収益体質はそのまま残ることになりかねない。

ルネサスは前身企業時代も含め、平成24年3月期まで7期連続の最終赤字。日立製作所、三菱電機、NECの半導体部門の寄り合い所帯で、3社の工場をそのまま継承、リストラで後手を引いたことが業績悪化の最大の要因だった。

ようやく大胆なリストラを決断したのは今年7月。今後3年以内に国内18拠点のうち10工場を閉鎖または売却する一方、大幅な人員削減にも踏み込んだ。赤尾泰社長が「痛みを伴いつつも会社を残す方法を選んだ」と話すように、経営破(は)綻(たん)を回避するため、追い込まれた末の決断だった。

5千数百人を見込んでいた早期退職には、結果的に全従業員の2割弱にあたる7446人が応募した。SMBC日興証券の嶋田幸彦シニアアナリストは「人員削減などで収益が改善すれば、来期以降の再建にめどが立つ」と、リストラ策に一定の評価を下す。

■KKRの支援に反発

ただ、巨額損失に伴う資本不足を解消するには増資が不可欠だ。ルネサスは当初、母体3社に増資の引き受けを要請。しかし、NECが「増資の引き受けまでは余裕がない」(首脳)とするなど、各社の業績やルネサスとの取引関係の違いもあって調整が難航した。

新たな支援先を探すなか、急浮上したのが米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)だった。

ルネサスは、交渉相手をKKRに一本化。KKRが約1千億円を出資する方向で調整していた。主力取引銀行も、外資系が筆頭株主になることに「問題はない」(主力行首脳)と理解を示した。むしろ、しがらみのない外資系ファンドが支援に乗り出すことで、リストラが加速するとみていたようだ。

KKRは運用資産が5兆円規模に達する世界有数の投資ファンドだ。これまで世界で約200の案件に投資し、新規上場を中心に120件で企業再生に成功している。オランダの半導体会社を再建するなど、同分野での実績もある。

しかし、KKRによる支援に反発したのが、自動車業界だった。KKRが経営の主導権を握れば、生産品種を削減し、高いシェアの車載用マイコンでは値上げが確実視される。それは、日本の自動車業界の競争力に貢献してきたルネサスとの“主従関係”が崩れることを意味する。

■低収益にあえぐ理由

KKRがルネサス株を売却する過程で、自動車メーカーと二人三脚で培った技術が海外に流出する懸念もあった。

パワーステアリングなど自動車の制御には30~50個ものマイコンが使われる。とくにハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)ではガソリン車に比べ使われる数が多く、今や自動車の中核技術の一つだ。

車載用マイコンでルネサスは世界シェア4割超を握るトップメーカー。東日本大震災でルネサスの主力工場が被災した際には、多くの自動車工場も止まった。

このため、枝野幸男経済産業相は16日の会見で「個社にとどまらず、わが国の競争力として重要だ」と述べ、官民によるルネサス支援に理解を求めた。

ただ、高いシェアを誇るルネサスが低収益にあえぐ要因の一つが、顧客の要求に応じ多品種を低価格で提供する“下請け”に甘んじてきたことだ。この構図が変わらないことに、関係者からは「公的資金を投じたにもかかわらず、経営破綻したエルピーダメモリの二の舞になるのでは」との不安も漏れる。

自動車や家電などに多く使われるマイコンは、日本の製造業の競争力を左右する。中途半端な再建だけは決して許されない。




0 Comments :

 ■Sponsored Link