source : 2010.10.18 三橋貴明オフィシャルブログ (クリックで記事開閉)
日本の反中デモに対抗した中国における反日デモを受け、中国リスクが再び取りざたされています。
中国の四川省成都など数都市で16日に発生した反日デモによる被害が出たことで、中国各地に進出している日系企業に再び警戒感が高まっている。
日本企業の中国市場への依存度が増す中で、ビジネス上のリスクの存在が改めて表面化した格好だ。
成都市郊外に合弁会社を持つ神戸製鋼所の子会社コベルコ建機は、日本人従業員約20人と連絡を取り、全員の無事を確認した。同市でスポーツ用多目的車(SUV)などを合弁生産するトヨタ自動車も、現地法人を通じて日本人社員14人に注意を呼びかけた。(後略)
しかし、実は現在の日本では、未だに「最悪の中国リスク」が全く知られていないのです。「最悪の中国リスク」とは、「中国民事訴訟法231条」になります。
東ア板などをご覧になられていた方々は、07年ごろにやたらと「韓国企業の中国からの夜逃げ」のニュースが報じられたのを覚えていらっしゃると思います。あの大量韓国企業夜逃げを受け、中国共産党がいわば「夜逃げ防止法」として07年秋に作ったのが、本「中国民事訴訟法231条」になります。
この法律、中国で「民事上の問題(要はカネの問題)」を抱えている外国人に対し、法的に出国を差し止めることができるという凄まじい内容なのです。
まずは文面を見てみましょう。
中国民事訴訟法231条
被執行人は法律文書に定めた義務を履行しない場合、人民法院は出国制限をし、或いは関係部門に通達をして出国制限を協力要請をすることができる。
-司法解釈規定
出国制限される者の具体的範囲としては、被執行人が法人或いはその他の組織であった場合、法定代表人、主要な責任者のみならず、財務担当者等債務の履行に直接責任を負う者も含む。
読めばわかりますが、本231条は極めて「拡大解釈」がしやすい条文になっています。何しろ「法律文書に定めた義務を履行しない」が条件で、「主要な責任者」を出国停止にできてしまうわけです。
本法律が施行された結果、中国に進出した企業で働く人が、日本人だけでも百人近く、台湾人は桁が違う人々が「出国停止」すなわち中国から出れない状況に至っているのです。
具体的なイメージをつかみにくい方は、是非とも以下を御視聴下さい。
この法律が恐ろしいのは、例えばある企業が商標法違反などをでっちあげられ、原告が裁判官を買収し、被告企業に損害賠償が命じられた場合、その支払いを果たすまで被告企業の関係者(主要な責任者)を中国からの出国停止措置にすることができることです。また、現在、中国で事業活動を行っている日系企業が、ベトナムなり他国へ移転しようとしたとき、でっち上げた債務問題を理由に関係者が出国停止を命じられる可能性もあります。
そして最も問題だと思うのが、この法律が最近できたものとはいえ、日本では全く周知されていないという現実です。上記「中国合弁会社幹部が体験した出国停止事件」では、中国の領事館に勤める外務官僚さえ、この法律の存在を知りませんでした。無論、国内マスコミが大々的に報じたことはありません。
わたくしは現在、ワック社の中国経済本を執筆していますが、本問題について具体例を元に大々的に取り上げるつもりです。
現実に日本の企業関係者が不当に中国からの出国の差し止めを食らっている以上、これは事実上「中国による人権侵害」あるいは「中国による拉致事件」も同然です。
外務省、経済産業省、そしてJETROの皆様。本法律の中身と危険性を、大至急、中国に進出しようとしている企業に周知徹底する仕組みを整えて下さい。また、中国に進出しようとしている企業の経営者、あるいは進出した企業の経営者の皆様は、是非、本法律と事例を理解した上で、ビジネスを展開して頂きますよう切に願います。
ちなみに、上記事例にご出演された方々は、本法律の危険性を国内マスコミに報じてもらうよう、努力を重ねられました。しかし、きちんと報道してくれたところは、未だにチャンネル桜、ただ一局です。
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