source : 2012.10.25 日本経済新聞 (ボタンクリックで引用記事が開閉)
新日本製鉄(現新日鉄住金)が韓国鉄鋼大手ポスコを相手取り、高級鋼板の製造技術を不正に取得したとして、約1000億円の賠償などを求めた訴訟の第1回口頭弁論が25日、東京地裁で開かれた。情報の流出源とされる元社員宅で証拠書類を差し押さえるなど入念な準備を進めてきた新日鉄住金。ポスコ側は「提訴は法的に問題があるうえ、事実誤認がある」と全面的に争う構え。対立は長期化も予想される。
25日の第1回口頭弁論は裁判長が事前に提出された書面に基づき、請求棄却を求めるポスコ側の主張を確認。双方の代理人弁護士と今後の日程を打ち合わせ約5分で終了した。次回弁論は12月。
両社が対立しているのは、電力インフラの変圧器に使う「方向性電磁鋼板」の製造技術。訴状などによると、新日鉄住金側が主張する技術流出の構図はこうだ。
技術をポスコに漏らしたのは少なくとも4人の元社員。うちポスコとともに訴訟の対象になったのは元研究職の1人で、90年代半ばに退職後、ポスコと関係が深い韓国の大学の客員教授として迎えられたとしている。
残る3人(うち2人は故人)は方向性電磁鋼板の開発や製造に携わっていた。新日鉄住金は3人が退職後に設立した会社などと契約して、ポスコが技術提供を受けていたと主張。ポスコが学会などの場で研究者らと接触し、億円単位の金額を提示したとみている。
一方、ポスコ側はまず日本でこの訴訟を扱う「管轄権」や不正競争防止法を適用することの是非を巡って争う構え。答弁書では、自らの技術で開発したことなどを指摘した。韓国では債務不存在の確認を求める訴訟を起こすなど守りを固める。
半導体などの分野で日本からの技術流出が疑われるが立証は難しいとされる。今回の訴訟は韓国の裁判所でポスコから中国・宝山鋼鉄への技術の転売が明らかになったことが引き金の珍しい例。新日鉄住金側は「準備の成果を使いながら粛々と進める」(友野宏社長)と自信を見せる。
流出防止策に限界があるのも事実。研究者が身につけた知識を守るのは、最終的には個人個人の順法意識。今回の訴訟で新日鉄住金は、損害賠償約1000億円のうち800億円は、自社の元研究者がポスコと連帯で支払うように求めた。仮に多額の報酬を受けていても支払いきれない金額を示すことで、「次」の芽をつむ意図があったとみられる。
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