東日本大震災の被災地の復興の加速を最優先します。
そして、事前防災の考え方に基づいて、近い将来起こることが十分に予想される巨大地震・津波などの大規模災害の被害を想定の半分以下に抑え、復旧・復興に要する経費を最小化するために、民間投資も最大限活用しつつ、ハード・ソフト両面にわたる「国土強靭化」に積極的に取り組みます。
■1.復興加速
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1 復興事業の適正な執行及び必要な予算の確保
政府は、阪神・淡路大震災の例を参考にして、集中復興期間(5年間)の事業費を19兆円と想定していましたが、平成25年度概算要求ベースで既に2兆円以上想定を上回っているのが現実です。さらに、今後予定されている復旧・復興事業、集団移転とそれに伴うまちづくり、復興住宅の整備などを考えると、復旧・復興事業費の大幅な増加が見込まれています。
そのため、わが党はいわゆる「基本方針」及びそれに基づく復興計画を総点検した上で、必要な事業費を財源の制約の名のもとに抑制することなく国が責任を持って確保します。また、復興予算の使途については被災地の復興に資するものを優先することは当然のことであり、復興予算の適正かつ迅速な執行に努めます。
2 被災地における人的対応力の強化
被災地での復興に向けた取組(特に、高台移転や土地区画整理など)が進展・本格化するのに伴い、土木関係の技術職や用地交渉を担う行政職等の公的部門の人員不足が深刻化するとともに、被災者の心身の健康を守る医療、保健、福祉活動等を担うマンパワーの確保が不可欠となっています。行政経験者を積極的に採用できる仕組みや支援要員等を受け入れる環境の整備、人的支援全体をコーディネートするセクションの設置等について、国が責任を持って各自治体の対応力を強化するとともに、広域連携の機能的な枠組み作りを進めます。
また、災害時に活動する民間の医療関係者の研修・訓練、装置整備を支援し、大災害に対処できる体制づくりを進めます。
3 迅速な復興を担う機能する復興庁へ向けた再検討
わが党の主張により設置された復興庁が、残念ながら能力に欠ける民主党政権の下、機能していません。強力な政治のリーダーシップの下、被災自治体からの要望に迅速に一元的に対応できるよう、復興庁の機能を強化するとともに、迅速な復興の推進に資するように復興局や支所の役割を一層明確化しつつ、被災地に寄り添うかたちに復興庁の体制を抜本的に強化し、迅速な復興の推進に努めます。
4 復興交付金の充実
復興交付金の運用が硬直的で、特に効果促進事業において当初期待されたような「使い勝手の良い交付金」となっていません。事業のスピーディーな進行を図るため復興交付金の柔軟な運用を図るとともに、必要な復興交付金を確保します。
また、埋蔵文化財調査等の規制緩和をはじめとして復興交付金の対象となる集団移転事業の円滑な推進のための環境を整備するとともに、事業が遅れた場合にも財政支援が行われるように基金の設置も検討します。
5 ガレキ処理の早期完了
ガレキ処理の遅れは、まちづくりの遅れに繋がることから、わが党も全国の党組織を通じ、各自治体に対して広域処理の協力を呼び掛けました。国が実効ある調整を行うとともに、これまでの経緯や処理遅滞の要因を検証し、被災自治体における処理施設増設や広域処理のあり方の見直しをはじめ、ガレキ処理の方策を抜本的に強化し、その早期完了を目指します。
6 事業再建への徹底支援
土地利用計画やインフラ整備の遅れ等から中小・小規模事業者や農林・漁業者の事業再建の歩みは遅々としており、地域の復興を担う人々が故郷を離れざるを得ない状況に陥っています。こうした産業復興の阻害要因を早期に解消し、仕事や雇用の場を確保し、人々が故郷で安心して暮らせる環境を整えます。
特に、二重ローン対策や資金繰り対策を強化するとともに、農地・漁港の復旧や陥没地帯の嵩上げを急ぎ、要望が多い企業グループ補助金などの予算の拡充を図ります。また、再生可能エネルギーや医療関係分野などの新産業事業の育成を強力に進めます。
7 被災地の生活インフラ整備の迅速化
被災者の生活再建や就労に役立つ被災地の産業再生には、社会資本の整備・活用が不可欠にもかかわらず、一向に進んでいません。寸断された道路、鉄道、防潮堤、河川堤防、さらには医療関係施設及び社会福祉施設、農地、漁港などの生活インフラ等の整備、下水汚泥の処理の体制の構築等を迅速に行います。
なお、東日本大震災の経験を踏まえ、大規模災害時における生活インフラの機能維持に向けた取り組みを最大限支援します。
8 環境モニタリング・放射線モニタリングの実施
国民の健康不安の一刻も早い解消のため、被災地におけるアスベスト・モニタリング、大気、水域・海洋、土壌等の有害物質の環境モニタリングを実施するとともに、放射性物質による汚染が懸念されていることから放射線モニタリングを実施します。
9 除染の加速化
被災者の故郷への一刻も早い帰還を実現するためにも除染を加速させます。そのため、除染の目標値を明らかにし、1兆円近い予算を計上した除染が着実に実施され得る体制を講じます。併せて、海底土の除染にも万全を期します。
10 原発事故被害に対する万全な対応
原発事故被害の範囲は文字通り未曽有のものとなっていますが、原発事故による災害という特殊な事情及びこれまでの国によるエネルギー政策に対する責任を踏まえ、福島県内外への避難者が、将来への展望を持って生活再建できるよう、賠償や就労、自治体機能のあり方といった諸問題について確実に対処します。
また、農林水産業・商工業・観光業等への風評被害対策と国の食品新基準値への対応などにも万全を期します。
11 健康被害への万全な支援
放射能による健康への不安を多くの住民が抱いています。国が責任を持って健康不安にしっかりと対処するため、健康調査事業の強化と併せ、放射性物質による環境汚染の状況についての監視・測定の実施、食品安全のための放射性物質の基準値の設定や医療費に係る負担の軽減策、特に子供の健康を守るためには万全を期します。
12 原子力災害への対応と原子力専門人材の充実
放射性物質による汚染対策として、詳細な汚染マップの作成や有効適切な除染の実施、放射性廃棄物の適正な処分を国の責任で行うこととします。
また、『原子力規制委員会設置法』の成立に伴い、IA制を実現するとともに、原子力・放射能に関する高度の知見を有する人材の採用、養成を図ります。
さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓をもとに、平時から避難等の事故対応に関する訓練を充実させるなどにより、世界最高の危機管理体制を確立します。EA(国際原子力機関)の国際基準に則った原子力規
13 原子力に関する知見の国際的な共有化
他国の安全性確保に資するため、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験から得た知見の国際的な共有化を進めます。
また、原発事故による放射性物質の拡散が人体や生態系に及ぼす影響を長期的に調査・公表することによって、安全な国民生活に寄与するとともに、世界と将来の人類への責任を果たします。
14 原発事故への対応と、安全を最優先とした原子力研究開発の再検証
東京電力福島原子力発電所の事故対策において、環境モニタリングや地元住民の支援などで現行施策を拡充するとともに、新たに研究開発が必要となった原発事故の後処理や廃棄物の処理・処分、効果的な除染の方法などを早急に確立します。
また、福島第1原発の廃炉に向けた取り組みは、単に事業者任せにするのではなく、国が主導的な役割を果たすことによって、より早く、安全・着実に進めます。
核燃料サイクルや高速増殖炉などについては、エネルギー政策の基本的な方向性の議論を踏まえ、今後のあり方について、慎重に見極めます。
なお、研究開発政策について、基盤・基礎研究や量子・放射線利用研究、重粒子線がん治療などの医学的研究などは、その必要性を踏まえつつ、安全性を最優先にして進めます。
15 被災地での国家プロジェクトの推進
わが党が主導して作成した『東日本大震災復興基本法』の理念に基づき、東北全体の復興を目指し、広域防災拠点や先端医療拠点の整備、世界のフロントランナーとなる防災研究、エネルギー研究などを国家プロジェクトとして推進します。
16 G空間による東日本大震災復旧・復興への支援
G空間プロジェクトの活動成果として、正確で効率的な測量や地図作成技術、地震予知技術、早期津波検知技術、衛星利用による避難誘導技術、更にはG空間情報を一括管理運用する事で災害予知、災害対応、復旧・復興に貢献するG空間情報センターと防災センターの設置等があげられます。東日本大震災からの復旧・復興に当たってはこれら先進的技術の活用で将来を見据えた安全・安心なG空間社会の実現を目指して推進します。また、この成果は今後予想される震災対応のため、全国展開、更には海外展開等も図っていきます。
■2.国土強靭化
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17 国民の生命と財産を守る「国土強靭化」の推進
今後予想される首都直下地震や東海地震と連動性が指摘されている東南海・南海地震等に備えるため、事前防災、減災の考え方に基づく『国土強靭化基本法案』『南海トラフ巨大地震対策特別措置法案』『首都直下地震対策特別措置法案』を速やかに成立させ、早急に(今後10年間)避難路・津波避難施設や救援体制の整備等の減災対策を強力に推進します。特に、今後3年間は集中的な取り組みを展開します。
加えて、首都機能等の維持・強化及び分散を図るとともに、日本海国土軸など多軸型国土の形成と物流ネットワークの複線化を進め、国土全体の強靭化を図ります。さらに、国土強靭化の取り組みを地域経済の中長期的発展の呼び水とするとともに、雇用を創出します。また、今後急速に老朽化する橋梁等の道路施設、港湾、河川管理施設、下水道等を計画的に更新し、安全と安心の確保を促進して国民の生命と財産を守ります。
民主党が進める国の出先機関の特定広域連合への移管は断固反対し、地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化を図るとともに、国と地方のあり方と道州制の議論を整理します。
18 災害につよく国民に優しいまちづくり
東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模地震災害に備えるため、公共交通インフラ等をはじめ住宅・建築物の耐震化や密集市街地の解消、広域的な基幹ネットワークの整備・複線化、津波・高潮対策のための避難路・津波避難施設の整備を進めます。近年頻発するゲリラ豪雨等の集中豪雨に対応するため、河川堤防の整備やダムを活用した治水機能の強化、下水道による都市の浸水対策を緊急的に推進し、特に事業中のダムやスーパー堤防は地元の意見を踏まえながら建設の促進を図ります。平年を大きく超える豪雪に対しては市町村に除雪費を臨時に補助する制度を創設するとともに、地域の孤立化を防ぐ緊急防災公共事業を推進します。
また、基幹的広域防災拠点の整備及び運用体制の構築や地震監視機能の強化、緊急地震速報や土砂災害警戒情報の提供など、災害につよいまちづくりを推進するため総合的な対策を推進します。さらに、自転車専用道を整備するなど自転車利用者や歩行者の安全な環境を確保し、環境と健康に配慮した、すべての国民に優しいまちづくり、歩いて暮らせるコンパクトシティーづくりを進めます。
事前防災制度の考え方を確立し、地震、津波が来る前にまちぐるみで高台移転等の必要がある地域に対して、移転補償費を含み、段階的なまちづくりが可能となる支援制度、税制を創設します。
19 都市防災の推進
特に人口が密集している三大都市圏を始めとする大都市の機能(政府機能含む)を守るため、通信ネットワークの確保、帰宅困難者対策、木造住宅密集地域における不燃化・耐震化、コンビナート対策、液状化対策、老朽化した上下水道対策を進めるとともに、ゲリラ豪雨に備えて河川を改修し、地下調節池を整備するとともに、排水施設の効果的な整備を進めます。
また、八ッ場ダムを完成させ、沿線地域に洪水被害を防ぐとともに、一都五県の水需要に対応します。
20 国民に約束した国の基幹ネットワークを含む道路網の整備
高速道路のミッシングリンクの解消や4車線化など、国民に約束した国の基幹ネットワークを含む全国の道路網の整備を促進します。高速道路料金については、受益者負担の原則を堅持し、国民の利便性や高速道路の有効活用に資する割引制度を維持・拡充し、分かりやすいものに見直すとともに、道路公団民営化法見直し規定に基づいて民営化された高速道路会社のあり方を見直します。また、その整備手法についても日本のグランドデザインに鑑み国民に分かりやすく明示します。巨大津波時に防潮機能を発揮するとともに緊急避難路や避難所となり、復旧・復興支援物資などを輸送する代替路になる道路など「命の道」や生活道路・通学路の安全対策など、地域生活に不可欠な道路等については、B/C(費用便益比)にとらわれることなく、積極的に整備を進めます。道路は、国民の貴重な資産であり、的確に維持更新します。
21 重要インフラの防御
行政インフラや通信インフラに加えて、医療、道路、航空、港湾、電力、ガス、水道等の社会の重要インフラを防御する事の重要性も東日本大震災や原発事故から得られた教訓です。しかし現在は、各々のインフラが別々の事業者によって運営されており、災害時の対策もバラバラなのが現実です。例えば、被災地における拠点病院では、電力だけが復旧しても機能が完全回復する訳ではなく、通信網、上下水道や交通網、さらには緊急医療の仕組みが復旧しなければなりません。そのためには、日常的に災害時復旧の優先順位や各インフラの相互依存性の分析等を情報共有しておく必要があります。これは医療機関だけでなく、政府・自治体等の行政機関や金融機関についても同様で、特に首都圏直下型震災の脅威がせまる現状では、積極的に予算投入をして社会の重要インフラ防御態勢を整備します。
22 情報インフラ整備の強化と災害時即応能力の促進
携帯電話や無線アクセスなどの新規電波利用ニーズの増大に伴い電波の逼迫は日々深刻化しています。防災の観点からも、最も身近な社会インフラとなった携帯電話網の途絶を最小化すると同時に、大容量の基幹通信網が必要となるデータセンターなどの分散化・地域産業化をはかり、全国的に通信網を強化します。また、首都圏に集中している政府情報システムを分散配置するとともに冗長性のある超高速ネットワークで接続する等、バックアップ体制を緊急に整備します。
東日本大震災では房総半島に集中している海底ケーブルの多くが被害を受けました。現状のままでは海外との通信網が途絶する恐れがあるので、他地域への増設を早急に手当します。また、離島も含め全国では、災害時における住民への情報伝達手段等において都市部との格差が生じており、早急な地方の情報インフラ整備が不可欠です。そのため超高速ブロードバンド整備の促進や自治体システムのバックアップ体制をクラウド技術により充実させ、地方のハンデキャップを逆手に取り、分散型の情報企業・産業シフトを敷き、新規事業者が参入する際の初期投資や運用コストに対する財政支援が充分に行われるよう所要予算を確保します。
23 ICTによる復興と経済成長の両立
今やICTは社会インフラに不可欠な存在となっており、被災地の復旧・復興と被災者への支援にICTの活用は欠かせません。震災や原発事故を教訓とした超広域災害への備えを固め、ICTによる新たな復興・防災の仕組みを経済成長への出発点とします。特に津波で役場が流された自治体や医療機関等の被災状況を見れば、広域の自治体クラウドや医療情報連携システム等各分野に渡る体系的な被災者支援システムの構築は急務です。被災時の住民サービスや医療サービスの継続はもとより、広域の統合防災システムや自治体の事業継続計画を早急に整備します。また、原発事故や被災地での高台移転等を契機としたスマートシティの実現は、環境やエネルギー問題の解決にも資するものです。このように復興のためのICT活用施策は、復興後の成長や社会問題の解決にも大きく貢献するのみならず、従来からの課題である社会問題解決による国民生活の向上、経済成長と雇用創出、官の国民サービス向上のためにもICTを最大限活用します。
24 消防団の充実・強化
首都直下型地震、東海・東南海、南海地震などの大地震への対応が緊急の課題となっています。東日本大震災の苦い教訓を活かし、消防団員の増員確保、消防団の装備の充実、消防団員の処遇の改善、防災拠点となる施設の耐震化などを促進し、消防団を中心とする地域の総合防災力を高めます。
Ⅱ.経済成長
「日本経済再生本部」を新たな司令塔に「失われた国民所得50兆円奪還プロジェクト」を展開し、「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の創出」への転換を図ります。デフレ・円高からの脱却を最優先に、名目3%以上の経済成長を達成します。
政権公約 : 25 ~ 59 (クリックで開閉)
25 日本経済の再生―新たな国家経済モデル『ハイブリッド経済立国』の構築
デフレ・円高からの脱却を最優先の政策課題と位置付け、経済の司令塔機能として内閣に「日本経済再生本部」を創設し、「失われた国民所得50兆円奪還プロジェクト」を展開することで「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の創出」への転換を図ります。今後5年間を集中改革期間とする「日本経済再生・産業競争力強化法」(仮称)を制定し、「世界で一番企業が活動しやすい国」「個人の可能性が最大限発揮され、雇用と所得が拡大する国」を目指します。大胆な金融緩和策、税・財政政策、成長戦略など、あらゆる政策を総動員し、名目3%以上の経済成長を達成します。
繁栄への道を切り拓くため、海外の経済成長を国内雇用の維持・発展に資し、かつ国内外の金融・経済の環境変動に強い新たな国家経済モデルを創ります。すなわち「貿易立国」単発ではなく、国内の新たな付加価値創造につなげる「産業投資立国」でもある、双発型のエンジンが互いに相乗効果を発揮する強い産業国家『ハイブリッド経済立国』を目指します。世界市場から日本を見た時に「世界のヘッドクォーター機能」と位置付けられ、本社、研究開発部門、マザー工場の立地が促進される環境を整備します。
26 大胆な金融緩和でデフレ・円高から脱却
デフレ・円高からの脱却に向けて欧米先進国並みの物価目標(2%)を政府・日銀のアコード(協定)で定めるとともに、日銀の国債管理政策への協調などにより大胆な金融緩和策を断行します。金融緩和の実効性を高めるため、日銀法の改正も視野に、政府・日銀の連携強化の仕組みを整えます。財務省と日銀、さらに民間が参加する「官民協調外債ファンド」を創設し、基金が外債を購入するなど様々な方策を検討します。
また、日米欧中を中心とした国際マクロ政策協調(平成のルーブル合意)の合意形成に向けた積極的な通貨・経済外交を強力に推進し、安定化を図るとともに、危機防止に向けた国際交渉に果敢に取り組みます。
27 弾力的な経済財政運営
今後2~3年は国内景気の落ち込みと国際リスク(欧州危機、新興国の景気減退)等に対応できる、より弾力的な経済財政運営を推進します。まず、新政権発足後、速やかに「第1段緊急経済対策」を断行し、本格的大型補正予算と平成25年度予算とを合わせ、切れ目ない経済対策を実行します。
28 経済規模の拡大・雇用の創出へ向けた戦略的な国際展開―新たなGNI大国の実現
現状維持に汲々とすることなく、経済全体のパイの拡大・雇用の創出を図るため、GDP(国内総生産)に代わって日本人・日本企業が世界全体で行う経済活動、すなわちGNI(国民総所得)を最大化することを目指します。日本企業が積極的に外へ打って出て、内外一体で活動を広げることにより海外に新たな拠点を生み出しつつ、トータルでより多くの国富を獲得できるような戦略を取ります。
そのため、日本経済のグローバル化、地域の産業集積、企業・人の新陳代謝を政策による誘導で行い、国内の知恵を創造します。そして、グローバル人材の育成、世界の頭脳を日本に集めるための教育環境・研究環境・生活環境の整備や、国際競争力を持ち海外展開する企業が世界中で大きく稼ぎ、その富を国内に還元し、新たな事業と雇用を生み出す「資本の好循環」を作り出すための環境を整えます。
これらの政策を強力に実施するための拠点として日本経済再生本部に「国際経済戦略会議」を設置し、成長するアジア経済圏の取り込み、戦略的な海外投資と経済連携協定、国際資源戦略を展開します。
29 戦略的国際標準の獲得
わが国産業が国際市場で有利に戦うためには、工業製品等における「国際標準」の獲得が重要であり、「どの分野の工業製品」が「どのような標準」を求めているのか的確な情報収集を行わなくてはなりません。そして、新たな付加価値をどこよりも早く産み出し、その標準化を図り、市場に一番近いところで大量生産を開始する必要があります。
そのため、政府が率先して、こうした情報収集に努めると同時に、その情報を企業にも伝え、政府と産業がタッグを組んで国際標準の獲得、特に、再生可能エネルギーやスマートグリッドの技術、高度なものづくりの部品・材料等、「日本の強み」を最大限に発揮するために積極的に取り組む体制を整備します。特に、成長著しいアジアをターゲットとした技術支援を通じ、例えば、アジア標準を国際標準とするような「戦略的標準獲得」にも果敢に取り組みます。また、そのためのエキスパート育成を強化します。
30 「国富」を生み出す知財戦略
資源に乏しいわが国にとって「知的財産」はまさに、「国富」を生み出す一つの手段であり、確固たる知財戦略を構築する必要があります。巨額な費用と時間をかけて生み出された「財産」を保護し、それを利用してさらなる「国富」を生み出すことは持続発展可能な経済にとっては不可欠なことです。知財の取得・活用を国家戦略としてサポートするため、まずは、研究開発の成果物が迅速に知的財産として保護されるよう「審査の迅速化」を進めます。特に、別の国においても早期に審査が受けられる体制も併せて進めます。
また、大学等の研究機関が専門的知識と経験を有する知財人材を十分に確保できる支援体制の整備に努めます。
一方、わが国で確立された最先端の技術が知的財産として保護されることなく流出することは、国益を大きく損ねることになるため、技術流出を防止する制度をさらに強化していきます。
31 わが国発国家プロジェクトの世界的躍進
再生可能エネルギー等の先端的環境エネルギー技術や新幹線・リニア等の鉄道技術、上下水道で用いられている膜技術、漏水対策や再生水利用技術、電気・ガスなどのライフライン・システム等、わが国の優れたインフラ関連産業やサービス産業、コンテンツ産業の国際展開を強力に支援し、受注競争での“競り負け”を防ぎます。先進国・途上国を問わず技術・ノウハウ・製品が統合されるパッケージとしての国際展開を積極的に支援します。
併せて、近年役割が増しているプロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)の資格保持者の養成を積極的に進めます。
32 科学技術政策の強力な推進力となる真の「司令塔」機能の再構築
資源の少ないわが国にとって、今後の社会・経済をさらに発展させるため、企業の研究開発投資が激減する中、新たな成長に向けて国主導で科学技術イノベーションをリードするのが喫緊の課題です。
しかし、年間約3.6兆円にも及ぶ科学技術関係予算については、文部科学省を中心に、経済産業省や厚生労働省等、関係省庁に予算が配分され、各省内で同様な研究が行われている事例も見受けられ、縦割りの弊害が顕著です。また、限られた予算にも関わらず、効果的な配分が行われていないのが現状です。
そこで、産業の生命線である科学技術を国家戦略として推進し、「価値の創造拠点」とするべく、総合科学技術会議の「権限」「体制」「予算システム」を抜本的に強化し、真の「司令塔」機能へと再構築します。
具体的には、各省庁の縦割りを排し、強力な予算配分権限を集中させ、適正な評価を行うことができる人材育成とシステムの構築を行います。例えば、素粒子物理分野の大規模プロジェクトであるILC(国際リニアコライダー研究所建設)計画等を含む国際科学イノベーション拠点作りに日本が主導的な役割を果たし、再生医療や創エネ・省エネ・蓄エネ等の重点分野を産学の知を結集した国家戦略として強力に推進します。
33 新ターゲティングポリシーの大胆な遂行と産業化に向けた支援強化
日本経済再生本部の「産業競争力会議」の下、将来の市場拡大が期待される分野を特定し、産学官の協調体制を築いた上で、投資ニーズに沿った規制改革や減税・資金調達環境を整えるといった税・財政等の支援等を集中投入する新ターゲティングポリシーを大胆に遂行します。まずは「国民的課題を解決し世界に展開可能な戦略目標の設定」(健康寿命世界一、クリーンかつ経済的なエネルギー需給等)を行い、これに基づき戦略産業の育成、コア技術への集中投資、制度改革など、一気通貫の政策を進めます。
例えば、iPS細胞を中心としたバイオ・テクノロジー研究のメッカとするべく、その技術を活かした再生医療や創薬の分野をわが国のリーディング産業に育成するべく、その産業化拠点として京阪神地域を「バイオ・ベイ(BB)」として発展させる等、特に、各ターゲティング分野の集積地を集中的に支援します。
34 不断の規制改革
消費者行政とのバランスをとりつつ、各種規制のあり方を行き過ぎたものを含め不断に見直し、潜在需要を顕在化させて発展的経済活動を支援します。戦略分野ごとに企業の活動のしやすさを世界最先端の制度にするため、諸外国との違いを合理的に説明できない制度的障害は3年以内に撤廃するといった「国際先端テスト」を導入し、各種規制・運用を見直します。
また、新たな立法時における規制の新設についても、国民の安全安心を確保するとともに、自由で活力ある経済活動を阻害しないようにする観点から、引き続き十分な事前審査を行います。各種事業の規制については、事業仕分けの手法を用いた“政策棚卸し”を実施し、見直しを鋭意進め、産業の新陳代謝を阻害する規制は直ちに撤廃します。併せて、競争力の強化に向け、各省が持っている権限を再編・整理します。
35 「ニッポン産業再興プラン」の実行
「ニッポン産業再興プラン」として、世界で勝ち抜く製造業の復活に向け、先端設備投資の促進、革新的研究開発への集中投入、長期資金に対する政策金融の強化(「融資」から「出資」へ)を図ります。
また、日本の立地競争力の復活(海外流出防止)に向け、円高・デフレ対策と併せて電力・エネルギー制約の克服やイノベーション基盤の強化、雇用の拡大につながる企業環境の整備等を行います。
36 法人税の大胆な引き下げによる雇用の拡大につながる企業環境の整備
日本企業が世界で勝負するためには、税制を含めた競争条件のイコールフッティングが必要であり、日本を拠点に海外で活動できるだけでなく、海外の企業が日本に進出する環境を整える必要があります。そのため、法人税については、国際的整合性及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意し、法人税を国際標準に合わせて思い切って減税します。
37 医薬品・医療機器の審査体制の充実・強化
再生医療、医療・介護ロボットなど、日本発の革新的医薬品・医療機器の研究・開発を促進するために、医療の安心・安全に十分配慮しつつ、医薬品・医療機器の審査体制の充実・強化、各種規制の改革、早期臨床試験(POC)実施体制の整備などによって、薬事承認の迅速化、ドラッグ・ラグやデバイス・ラグを解消します。
また、医薬品・医療機器等の革新性に対する適切な医療保険での評価、医薬品開発に関わる人材育成体制の整備を充実させます。国際共同による治験を推進し、医薬品の治験・承認を国際標準とするために、日本版FDA(米国食品医薬品局)構想を推進します。
38 ビジネスクラスの介護の促進
利用者の様々なニーズに応える質の高い介護サービスの提供を新たな成長分野と捉え、公的仕組みでは十分に対応できないニーズ等に応える多様な民間サービスを民間保険の活用を含め支援します。
39 世界へ向けた情報発信力の強化、デジタルコンテンツ市場の拡大
「クール・ジャパン戦略」を推進し、日本のものづくり技術と世界に誇る日本のアニメを掛け合わせた他の追随を許さない真のJAPANオリジナルコンテンツの創造や東京国際映画祭のグリーンカーペットをアジアのステイタスとするための環境整備(大規模展示会場の建設等)、世界のコンテンツのメッカとして秋葉原を街ごとバージョンアップさせる等、観光資源としてだけでなく世界的イベントのホスト国となる機会を増やすための取り組みを進めます。
文化・伝統(衣食住)などわが国の持つ魅力(ソフトパワー)を積極的に海外に発信します。特に、世界に広がりをみせる放送コンテンツの海外展開や電子書籍・電子雑誌の流通促進、電子看板(デジタルサイネージ)の推進などにより、デジタルコンテンツ市場の拡大を支援し、地域を含めたわが国社会経済の活力を増大させます。JAPANブランド委員会を設立し、国をあげて、日本の伝統工芸品を新しいかたちで世界へ向けて飛躍させるとともに、アニメ・マンガ・ゲームなどのコンテンツ作成だけではなく、「イベント創造」「営業方法」など、利益を生むトータルでのシステム構築を支援します。あわせて、文化・感性商品としての特性を有する日本の生活支援ロボットなどロボット製造技術の活用・育成に繋げていきます。
また、海賊版・模造品対策を一層強化します。
40 アジアNo.1の金融・資本市場の構築
日本をアジアの金融・運用の中心地にするべく、企業の活力ある経済行動と国民資産を適切に運用できる公正な競争条件の確保かつ十分競争できる活発な金融資本市場を構築します。まずは金融セクターの対GDP比を英国並みの10%台に押し上げ、「業」としての金融を育成します。
そのために、「貯蓄から投資へ」の流れを促進する簡素で分かりやすい証券税制への見直しや東証「グローバル30社」インデックスの創設、「日本総合取引所」の創設、外資誘致のための新たな金融特区の創設など、民間金融機関・証券市場の活性化や資産運用マーケットの強化を行います。その際、国民にとって健全な経済と成長に結びつく企業法制と資本市場法制を統合したガバナンス構築を目指します。
41 新しい「モノづくり」につながる「コト」づくりの推進
わが国経済が成長していくには、従来の「モノづくり」の強みを活かすだけではなく、時代や人のニーズを先取りした、新しい「モノづくり」を行い世界市場に打って出ることで、国内だけではなく「海外で儲ける」ことが、我々の目指す新しい国家経済モデルの一翼を担うと考えています。
そこで、新しい「モノづくり」を生み出すには、より多くのアイデアや技術が組み合わさることが重要であり、多くのヒトやモノがボーダレスにつながる手段として現在、「Facebook」や「Google」など、「コト」が注目されています。わが国においても、世界に類を見ない「コト」が生まれるよう「コト」づくりを強力に推進するため、「コト」をつくり出す新しい価値創造産業の基盤を醸成します。
42 社会全体のICT化
ICT化により、様々な分野において事業の効率化、サービスの向上など、国民生活の利便性が飛躍的に伸びました。今後、産業がグローバル化する中、産業界においても、さらなるICT化を進めると同時に、国、地方、企業、個人それぞれがICTの恩恵を受けられるよう「社会全体のICT化」を進めます。例えば、電力供給効率化につながるスマートグリッドの導入・スマートシティの形成、ITSによる交通の円滑化、電子政府の実現など、国民生活の利便性向上と環境への負荷低減に向けたICT利活用を力強く推進します。
情報サービス・コンテンツ産業としてデータセンター等の設備投資は生産波及効果が2倍と大きく、雇用誘発力も高いことから、これらの分野への投資機会を積極的に増やします。
43 政府CIO制度の確立
政府のICT政策を一元的に把握し、政府のICT投資計画を策定する政府CIO(最高情報責任者)を法的根拠に基づいて設置します。政府CIOは、政府業務を徹底的に見直すとともに、電子行政の推進に向けた予算を確保し、統一した設計思想の下で電子政府を再構築することにより、オープンでデジタルな政府による国民サービスの向上を実現します。
44 サイバーセキュリティの対策強化
頻発するサイバー犯罪から国民を守るため、さらに各省の連携を強化し、総合力を発揮できる体制を整備するとともに、官への投資と民間転用を呼び水に経済成長へ貢献します。
特に、警察庁や防衛省、海上保安庁において、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関の全ての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。これらの施策と共に、最高度のセキュリティ技術を製品/サービス化し政府機関に納入するとともに、民間へ転用するための拠点を構築する事を呼び水として、わが国の高度情報セキュリティ産業を創出し、10万人規模の新規雇用を創出して経済成長へ貢献します。
45 G空間(地理空間情報)プロジェクトの推進
わが国独自の衛星測位システム(準天頂衛星「みちびき」日本版GPS)の実用化と全国一律の基盤地図整備を「地理空間情報活用推進基本法」に基づいて促進することで、世界最先端の地理空間情報を高度に活用できるG空間社会を実現し、「国民の安全と安心を守る社会」「新たな産業・新サービスの創出と地域の活性化」「行政の効率化と高度化」等を促進します。
また、この様なG空間社会をパッケージとして海外展開することで、途上国支援等の国際貢献やわが国経済の活性化も図ります。
46 G空間プロジェクトによる資源確保と海の防災システム高度化の促進
わが国は世界第6位と言われる排他的経済水域を持つ国土大国です。「海洋基本法」、「宇宙基本法」と「地理空間情報活用推進基本法」を連携推進することで、わが国近海の地形をメートル単位で正しく把握し、正確な位置情報の下で大陸棚や深海に眠るエネルギーやレアメタル資源等の発掘、水産資源の確保等に努めます。
また、海底プレートの移動や遠海の津波の高さをセンチメートル単位で常時監視するシステムを開発することで、地震予知や津波検知技術の高度化等も図り、防災・減災に資します。
47 わが国競争力の維持・強化につながる企業環境の整備
世界経済が米国一極集中から多極化へ向かっている中、日本は依然として、多数のプレイヤーが国内で消耗戦を繰り広げる構図です。そのため、企業規模の拡大など企業を強化する過程において、現行の企業結合審査を迅速化し、併せてその透明性・予見可能性を確保します。各種業界の統廃合を妨げないような環境を整え、わが国がグローバルな競争に勝ち残っていくために必要な産業競争力の基盤を強化します。
さらに、わが国産業の空洞化を阻止し、海外企業等を呼び込むことによりわが国経済の相対的な地位を維持・向上させることを目指し、医療研究、サステナブル都市、国際コンテンツ拠点、自治体による国内外の企業や研究施設の誘致促進を可能とするため、税・財政上の措置も含めた「グローバルトップ特別区」の創設等、特区制度を深堀りします。
また、地域活性化の観点もさることながら、大震災によるサプライチェーンの分断という教訓を踏まえ、経営効率や国際競争力の低下につながらないよう配慮しつつ、危機管理上の点からも基幹部品の立地分散を促進する支援策を緊急かつ集中的に行います。
48 ベンチャー事業等の創造・活路支援
ベンチャーを既存企業とともに経済成長の両輪ととらえ、日本の強みを更に活かした挑戦に対してエンジェル税制等を含めて積極的に支援し、新規開業を促進します。技術力・経営力の基盤が強固な大学発のベンチャーを継続的に創出するための体制整備等を支援します。その際、研究成果を目利きによって厳格に選定します。
また、この過程において、優良・有望な開発シーズを選別し、ベンチャー企業の事業を再編するための「目利き人材」の確保も同時に行います。また、エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)については、その普及が進んでいない現状を踏まえ、町おこし・村おこしに向けて取り組む企業等も対象に加える等の検討を行い、使い勝手の良いものとします。
49 ソーシャルビジネス及びコミュニティービジネスの進化による新たな雇用の創出
東日本大震災によって改めて日本人の「絆」が復旧・復興に大きな力を発揮し、人々及び地域の連携の重要性を再認識しました。一方、まちづくり・地域づくりに際し、環境問題や少子高齢化の問題等、多くの地域が多種多様、かつ固有の課題を抱え、その解決に苦慮している現実もあります。
そこで、地域の「絆力(きずなりょく)」を利用し、地域住民をはじめとして地域に根付いているNPOや地元企業などが協力し合い、地域に応じたサービスを行えるビジネスとしてソーシャルビジネスやコミュニティービジエスを進化させ、地域住民へのサービス向上と雇用の創出を目指します。
50 中小企業の事業再編・転換への支援、既存基幹・在来産業の底上げ
国内の生産拠点の減少や国全体の購買力の減退による産業の空洞化、相次ぐ大企業の経営不振は、内需に依存している中小企業にとって死活問題です。また、大震災によってダメージを受けたサプライチェーンを修復するとともに、足腰の強い経営体を作るには、企業内のムダを取り除き、新規事業を開拓する必要があります。そのため、企業内の不採算部門を除去し、新部門を創設するための専門家との相談体制の強化、資金上の支援等を可能とする体制を整備します。オンリーワンな中小企業もさることながら、企業群を連携・組織化することで経営資源を補い、企業の経営基盤を強化します。製造業や流通業といった在来産業の底上げも併せて行います。
さらに、全く新しい分野へ事業転換をする場合においても、短期的ではなく、中長期の展望が切り拓けるよう、事業転換から経営の安定(経営ノウハウ、商品開発、IT化等)までトータルの視点で支援できる体制を整備します。
加えて、中小企業の経営基盤の強化を図るため、創業企業への税制上の支援措置や事業承継税制の適用要件の緩和、事業主報酬制度など中小企業関係税制の充実・強化を図り、中小企業の創業や個人事業主の活性化、事業承継を応援するといった「創業・第二創業」を徹底して促進・支援することにより雇用増加に結び付けます。
51 「日本から世界へ」中小企業のグローバル化・海外展開の支援
日本では生産性が高いのにグローバル化していない企業が多数あり、特に中小企業において顕著です。生産性が高く競争力のある企業がグローバル化することで、さらに生産性は高まり、ひいては日本の経済成長を促進させ、国内の雇用も増加させます。
こうした在野に埋もれた有力な企業を国内から海外へと飛躍させるため、ワンストップサービスで対応する「海外展開戦略室」を政府に設置する等、マーケティングや資本調達、人材育成、現地事業環境といったあらゆる面をオールジャパンで支援する体制を強化します。また、中小企業に輸出や海外進出のチャンスを提供する啓蒙活動についてもJETROによる助言や中小企業診断士の活用に加えて、商社など大企業のOBを活用したマーケティング支援などを積極的に行います。
52 EPA・FTAの促進
日本経済は外需依存体質と言われつつも、実際の輸出に占める対GDP比は1割強に過ぎません。内需・外需にけん引された力強い経済成長を達成するためにも、国益を最上位とした多角的自由貿易体制を確立し、諸外国の活力をわが国の成長に取り込む必要があります。そのために、わが国が国際的なリーダーシップを発揮して、WTOドーハ・ラウンド交渉の早期妥結に取り組みます。また、重点国を戦略的に選定し、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)交渉を積極的に行います。世界的に貿易競争が激化する中で、わが国の貿易が安定的に行われるために、先進国・新興国を含めた諸外国のニーズを踏まえた相互協力関係を構築します。
53 投資協定・租税協定締結の促進
海外市場で得た利益を国内の新たな付加価値創造へと向かわせることを可能とするために、二国間の投資協定や租税協定等により資本移動の自由化を推進します。海外子会社の配当、ロイヤリティ等の還流資金の二重課税は完全撤廃を目指します。そのため、現在28ヶ国(24年4月現在)と他の先進国に比べて大きく後れを取っている日本の投資協定について、経済界の実需に併せて、アフリカをも視野に入れ、戦略的に展開するとともに、協定の質の向上にも努めます。
54 本社機能、拠点機能の戦略的な地方展開
産業空洞化に歯止めをかけ、産業活動の地方展開を促進すると同時に危機管理と一極集中の是正の観点から、戦略的に選定した地域における産業等の新規立地に対して、大幅な税制上の優遇措置を講じます。また、首都圏に集中する本社機能、研究開発拠点、データセンターの移転に関しては、さらに一段の支援措置を行います。
55 企業のBCPの策定支援
東日本大震災によるサプライチェーンの分断を教訓とし、企業が緊急事態に備えたBCP(事業継続計画)を策定し、継続的な改善を行うことに対する支援制度を強化します。
また、従来のBCPは自社が被災した時の対応を中心に定められてきましたが、東日本大震災を教訓として、全国的なサプライチェーンの維持のため、被災を受けなかった場合の被災地に対する支援のための緊急的な生産体制の変更についても、BCPに盛り込むよう働きかけていきます。「企業単独型のBCP」から「企業連携型のBCP」の策定に向け、支援を行っていきます。
なお、策定されたBCPのうち、緊急事態において、被災地に対する自社の緊急支援内容については、日頃から可能な範囲で公開するシステムを構築し、いざという時のために備えます。
56 若者の就職応援
学生を取り巻く就職環境が最悪期は脱したものの依然として厳しい状況であることに鑑み、就職活動を頑張っている若者が前向きになれるよう、将来を見通せる雇用制度に再整備します。
特に、公的機関と大学が連携し、新規学卒就職できなかった人を孤立化させない取組みを行います。技能・技術、実践的知識を身につける職業教育・キャリア教育の強化、インターンシップの拡充、年長フリーター等(25歳~39歳)を重点とした正規雇用化の支援や産学官が連携しての人材育成等を活用します。それにより、後継者不足の業種等、人を必要としている産業への雇用システム・求職マッチングを円滑かつ強力に支援し、労働力の流動化など健全な競争を通じて人材が適切に配置される「適材適所社会」を目指します。10%前後の若年層の失業率を4年で半減させることを目指します。
57 女性力の発揮によるいい国づくり
女性の潜在的な力を活用することは成長戦略の原動力です。そのために、日本社会の基盤である伝統的な家族や地域の絆を大切にしつつ、社会全般の多様性の実現を目指します。
まずは、女性力の発揮による社会経済の発展を加速させるため、社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする目標(“2020年30%”(にぃまる・さんまる))の達成に向け努力します。
58 女性の就業環境の整備
女性への就労支援、特に子育て中の母親への支援として、再就職に積極的に取り組む企業に対する支援制度の創設、マザーズハローワーク事業の拡充等を実施するとともに、資格取得についても支援し、就業と出産・育児の両立、つまりは継続して働くことが可能な環境を整えます。新しい家族像、家族ビジョンを踏まえ、夫婦が共に働き、共に家事を負担(協働・分担)できるワークライフバランスを推進します。大都市部を中心に保育所の拡充を図るとともに、放課後児童クラブのより一層の量的・質的向上だけでなく、待機児童が多い地域における自治体の取組みについても支援します。
59 高齢者の社会参画、生涯現役社会実現
人生100年時代を見据え、働く意欲のある高齢者の方々が個人の能力・経験を活かし、生涯現役として働きやすい環境を整え、「70歳現役社会―生涯現役社会」の実現に向け、65歳までの雇用の着実な実現や定年延長等に加え、「70歳はつらつ現役プラン」として50歳代からの定年後のキャリア形成についてカウンセリング等の支援と職業教育訓練を行います。シルバー人材センターの活用に加え、高齢者の方々の起業や就職についても後押しします。更に、職域の拡大や処遇の改善に取り組む事業者に対する支援とともに、65歳以上の方を継続して雇い入れる事業者に対する助成も行います。
Ⅲ.教育・人材育成、科学技術、文化・スポーツ
「人づくりは国づくり」。日本の将来を担う子供たちは、国の一番の宝です。わが党は、世界トップレベルの学力と規範意識を備え、歴史や文化を尊重する態度を育むために「教育再生」を実行します。日教組の影響を受けている民主党には、真の教育再生はできません。
政権公約 : 60 ~ 94 (クリックで開閉)
60 世界トップの人間力と学力を実現するための教育投資の充実
『教育基本法』の理念に基づき、「自助自立する国民」「家族、地域社会、国への帰属意識を持つ国民」「良き歴史、伝統、文化を大切にする国民」「自ら考え、判断し、意欲にあふれる国民」を育成します。そのための「教育振興基本計画」「新学習指導要領」を確実に実施するため、恒久的な財源を確保し、OECD諸国並み(5%)の公財政教育支出を目指します。第1期「教育振興基本計画」の成果を検証のうえ、教育基本法に則った第2期基本計画を策定し、実行します。
全国学力・学習状況調査を全国一斉の学力テスト(悉皆(しっかい)調査)に戻し、全ての子どもの課題把握、学校・教職員の指導改善に生かします。さらに土曜授業を実現します。
61 わが国を愛する心と規範意識を兼ね備えた教育
国旗・国歌を尊重し、わが国の将来を担う主権者を育成する教育を推進します。不適切な性教育やジェンダーフリー教育、自虐史観偏向教育等は行わせません。規範意識や社会のルール、マナーなどを学ぶ道徳教育や消費者教育等の推進を図るため、高校において新科目「公共」を設置します。
中学・高校でボランティア活動やインターンシップを必修化し、公共心や社会性を涵養します。職業教育やキャリア教育、農山漁村地域での体験学習等を推進します。あわせて「村祭り」など地域に根差した伝統・文化や、スポーツクラブ、サークル活動などの地域の絆を守り、コミュニティを支える取り組みを支援(「伝統文化親子教室」の創設など)します。
62 公教育における国の責任体制の確立
義務教育については国が責任を果たすとの理念に立ち、教育の正常化を図ったうえで、教育の地域間格差が生じないよう、義務教育費国庫負担金については、国が全額(100%)負担します。
さらに、地方自治の精神を尊重しつつ、いじめの隠ぺいなど、地方教育行政において、法令に違反している、あるいは児童生徒の「教育を受ける権利」を著しく侵害するおそれのある場合、公教育の最終責任者たる国(文部科学大臣)が責任を果たせるよう、『地方教育行政の組織及び運営に関する法律』を改正します。
63 激動の時代に対応する、新たな教育改革(平成の学制大改革)
世界トップの教育立国とするため、幼児教育の無償化、小学校5・6年生への教科担当制の導入、飛び級制度、中学・高校において未達成科目の再チャレンジ、義務教育化を含めた高等学校の理念・あり方等、現行の6・3・3・4制の是非について検討し、子どもの成長に応じた柔軟な教育システムとするため、新時代に対応した「平成の学制大改革」を行います。あわせて、改正教育基本法に対応した関係法令の見直し・改正を行います。
小・中学校卒業時における学力評価や高校での達成度試験の実施を図り、確実に学力を身に付けさせます。あわせて、高校在学中も何度も挑戦できる達成度テスト(日本版バカロレア)の創設や、それを前提とした論文、面接、多様な経験重視で潜在力を評価する入試改革など、大学全入時代の大学入試のあり方そのものを検討します。
高校授業料無償化については、所得制限を設け、低所得者のための給付型奨学金の創設や公私間格差・自治体間格差の解消のための財源とするなど、真に公助が必要な方々のための制度になるように見直します。
大学の9月入学を促進し、高校卒業から入学までのギャップターム(半年間)などを活用した大学生の体験活動(国とふるさと、環境を守る仕事-例えば、海外NGO、農業・福祉体験、自衛隊・消防団体験等)の必修化や、学生の体験活動の評価・単位化を行い、企業の採用プロセスに活用します。
一度社会に出てからも、学び直しができるよう、社会人が再び大学で学べるシステムを導入し、キャリアアップの機会保障と再チャレンジを促進します。
64 教育委員会の責任体制の確立と教育行政の権限のあり方の検討
地方分権を受けて、自治体の教育政策決定や教育行政運営において、首長や地方議会の役割が高まっています。いじめ問題でも明らかになった、形骸化・名誉職化しているなどの批判がある教育委員会の責任体制を再確立し、本来の職責を果たせるよう、教育の政治的中立を確保しつつ、自治体の教育行政に民意を反映させ、効率的・迅速に運営する必要があります。
例えば、首長が議会の同意を得て任命する常勤の「教育長」を教育委員会の責任者とするなど、国と地方の間や、地方教育行政における権限と責任のあり方について、抜本的な改革を行います。
65 真に教育基本法・学習指導要領に適った教科書の作成・採択
教育基本法が改正され、新しい学習指導要領が定められてから、初めての教科書の採択が、小学校と中学校で行われ、本年は高校の教科書採択が行われましたが、多くの教科書に、いまだに自虐史観に立つなど、偏向した記述が存在します。
真に教育基本法・学習指導要領に適った、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」ための教科書で、子どもたちが学ぶことができるよう、教科書検定制度や、副読本なども含めた教科書採択の構造について、文部科学大臣が各教科書共通で記載すべき事項を具体的に定める、複数の説がある際は、多数説・少数説を明記し、数値については
根拠を示す等、抜本的に改革し、いわゆる「近隣諸国条項」に関しては、見直します。
66 安心して、夢の持てる教育を受けられる社会の実現
質の高い教育ときめ細かい指導を行うために、わが党の考えを受け入れて改正された「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」に基づき、教職員定数のあり方全般について検討を行います。さらに東日本大震災の被災地に対する教職員の加配やスクールカウンセラーの充実等を引き続き措置し、あわせて被災地の教職員の心のケアも図ります。
いじめや不登校の解決のため、スクールカウンセラーの充実等、問題を早期に発見し、適切に対応できる体制をつくります。小・中・高で17万5千人を超える不登校者、5万5千人を超える高校中退者(平成22年度)を減少させるための教育を実現します。
真に公助が必要な児童・生徒が安心して学校に通えるよう、就学援助制度の拡充(援助の対象や国庫補助など)や、給食費の無償化、給付型奨学金の創設、特に私学における低所得者の授業料無償化等を行い、家庭の経済状況に関わらず、志ある子どもたちの夢を徹底支援します。
67 いじめを無くし、一人ひとりを大切に(『いじめ防止対策基本法』の制定)
「いじめは絶対に許されない」との意識を日本全体で共有し、加害者にも、被害者にも、傍観者にもしない教育を実現します。
第一に守るべきは、いじめの被害者です。いじめを繰り返す児童生徒への出席停止処分や、行為が犯罪に該当する場合は警察に通報する(いじめと犯罪の明確な区別)、道徳教育の徹底など、今すぐできる対策を断行します。
『いじめ防止対策基本法』を制定し、全都道府県や全市区町村において『いじめ防止条例』を制定する、いじめ対策アドバイザーを設置するなど、統合的ないじめ対策を行うとともに、いじめ対策に取り組む自治体を、国が財政面などで強力に支援します。
68 公私間格差の是正・私学助成の拡充
公教育において私学が果たしてきた重要性に鑑み、私学の建学の精神を尊重しつつ、『私立学校振興助成法』の目的の完全実現(教育条件の維持・向上、修学上の経済的負担の軽減、経営の健全性向上)のため、公私間格差の解消を図るとともに、私学助成を、2分の1を目標に、大幅な拡充を目指します。
69 教育の政治的中立を確保するための「新教育三法」
教育公務員を「教育専門職」と明確に位置付け、「教育公務員倫理規程」(仮称)を制定して、職務規律を確立します。
『教育公務員特例法』違反者に罰則規定を設け、教職員組合(日教組等)の政治的中立確保及び、選挙活動・強制カンパ等の違法活動を防止します。教職員組合の収支報告を義務付け、公金を原資とした資金の透明化を図るとともに、違法活動団体は、『地方公務員法』に定める人事委員会の登録団体から除外します。『義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法』の徹底を図り、教育委員会等に必要な調査を義務付けるための法改正を行います。
北海道教職員組合による民主党議員への違法献金事件では、教育委員会が行った勤務実態調査により、勤務時間中の組合活動など数多くの違法行為の実態が明らかになりました。わが党はこれを厳しく追及し、給与(義務教育費国庫負担金)の不正受給にあたるとして、会計検査院による調査を実施させました。現在、北海道・札幌市の教育委員会が、全ての教職員を対象とした再調査を行っています。さらに、わが党の指摘により発覚したPTA会費の不正使用について、徹底的に全国調査を行わせ、再発を防止します。わが党は、今後とも、教育の政治的中立・正常化に徹底的に取り組みます。
70 教師力を向上し、適切な教育内容を確保
世界のリーダーとなる日本人を育成できる力ある教師を養成するため、大学・大学院卒業後、准免許を付与し、インターンシップ(1~2年間)を経て、採用側と本人が適性を判断し、インターンシップ修了後、認定の上、本免許を付与して正式採用する、「教師インターンシップ制度」を導入するなど、教師力向上のための改革を行います。
メリハリある給与形態の確立や優秀教員認定及び教員が子どもたちに没頭できる教育システムを構築し、真に頑張っている教師を徹底的に応援します。教員の勤務評価及び、それに基づく処遇が適切に行われるよう、教育長及び校長の責務を設けます。
教育長、指導主事、校長、主幹、教諭等の役割と責務を法律上明記し、責任体制を確立します。教員人事への教職員組合等の介入を排し、教育委員会の責任のもと、バランスのとれた教員配置を実現します。任意設置となっている主幹教諭を「必置」とし、一部の地域で教職員組合に流用されている主任手当、及び主任制度を廃止します。
教職員の資質向上と教育水準の維持・向上のため、教員免許更新制度の運用面での課題を是正し、実効ある制度設計を行います。一方、指導力不足教員は教壇に立たせません。
さらに、わが党政権時代の「教員の長期社会体験研修事業」のように、現職の教員を民間企業や、社会福祉施設などに派遣して交流を図ることなどにより、教員の視野の拡大を図るとともに、社会人教員の採用や特別免許状の発行の拡大などを行い、多様な人材を確保します。
71 安全・安心な学校環境の構築
災害からの子ども達の生命・身体の安全の確保に加え、津波からの避難ビルとなるなど地域の避難所として重要な役割を果たしている学校施設について、天井材などの非構造部材を含めの耐震化・老朽化対策を加速します。あわせて、災害時においては学校施設が避難所となることから、独立して域外と連絡可能な通信設備の設置や、自家発電装置の設置、プロパンガス設備、井戸の設置、汚水対策として浄化槽の設置等、学校施設の防災拠点としての整備を進めます。さらに、各自治体が財政上、困窮していることに鑑み、国からの補助率のかさ上げを含め、追加的な支援のあり方について、早急に検討します。
東日本大震災の教訓を生かし、保護者が帰宅困難になった際などに、子どもたちを学校に留め置いて安全を確保するなど、保護者や子どもの立場に立った災害対応体制を整備します。
地震・台風・火災などの災害を身近な危険として認識し、日頃から備え、災害の被害を防ぐため、地域の実情に合った「防災教育」を充実します。
あわせて、通学路の安全を確保するなど、子どもたちが安心して通学できる学校環境を整備します。
72 幼児教育の充実・強化と幼児教育の無償化
教育基本法の定めの通り、幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものです。全ての子どもに質の高い幼児教育を保障するとともに、国公私立の幼稚園・保育所・認定こども園を通じ、全ての3歳から小学校就学までの幼児教育の無償化に取り組みます。
就学前の多様化する教育・保育ニーズに柔軟に対応するため、幼稚園・保育所・認定こども園の教育機能の充実・強化を図ります。
73 家庭教育の支援体制強化
すべての教育の出発は家庭教育であり、教育基本法では、保護者が子どもの教育について第一義的責任を有すること、国や地方公共団体が家庭教育支援に努めるべき事を定めています。幼児教育の前提として、安定した家庭の存在が不可欠であり、孤立しがちな若い親に対し、家庭教育を支援する施設をきめ細かく設置する等の支援体制を強化します。
74 読解力を高める国語教育
国語科は各教科等の学習の基盤であり、小・中・高等学校を通じて国語教育の一層の充実を図ること、特に、読解力、知識・技能の活用等、思考力・判断力・表現力の育成を重視することが必要です。そのため、国語科の授業について、「子どもの言語能力を育てる授業」へと改善し、具体的には、OECD/PISA調査の読解力の育成のため、子どもが「聴いて→考えて→つなぐ」学習を展開します。
75 英語(外国語)教育の充実
「教育振興基本計画」には「小学校段階における外国語活動を含めた外国語教育の充実」を目指す「新学習指導要領」の着実な実施が盛り込まれています。国際的共通語となっている「英語」のコミュニケーション能力を身に付けることは、子ども達の将来のためにも、わが国の一層の発展のためにも、非常に重要な課題であり、今後とも外国語教育の充実を図ります。
76 理数教育及び才能教育の大幅な充実・強化
次世代を担う理数好きな子どもを増やすため、体験活動や実験教室の充実、理工学部の学生や企業関係者等の外部人材の活用、さらには理数教育に携わる教員の指導力向上等、初等中等教育段階での理数教育を大幅に充実します。
将来、世界のリーダーとなるような明確な目的意識を持つ子どもの育成に向けて、優れた資質を伸ばし、育てる才能教育を強化します。「スーパーサイエンスハイスクール」を一層拡充するとともに、国際科学オリンピックに参加する児童生徒数の大幅な増加を促進し、国際的な交流機会を拡大します。
77 真に外国人との友好を築く日本語教育
外国人の子どもが公立学校に通っても、日本語が分からない等の理由により授業についていけず、不就学になる者が多いとの指摘があり、日本語指導員の配置等、学習者の日本語能力に応じたきめ細かな受入体制を構築します。
外国人の大人に対する日本語教育は、体制が十分に整備されているとは言えません。外国人に対する日本語教育の質と量を十分に確保するためには、日本語を学習する機会の拡充が必要であり、『日本語教育推進法』を制定し、「生活者としての外国人のための日本語教育事業」等を継続的に実施・充実させるなど、真に外国人との友好を育むための環境整備を行います。
78 一人ひとりを大切にし、充分に力を伸ばす特別支援教育
養護教諭の複数化の充実、特別支援教育コーディネーターの機能強化、高等学校への支援員の配置、発達障害のある児童生徒の実態調査を検討した個々の生徒に必要な教育環境の整備、ICT等の技術を活用した教材等の研究、指導内容・方法の工夫改善、障害のある生徒に配慮した高校入試の実施、中・高連携による進路指導の充実、特別支援学校等と産業界との連携による実践的指導の実施、障害者就労支援コーディネーターの配置、国立大学法人附属学校における特別支援教育の推進・充実等に重点的に取り組みます。
すべての小中高教員が特別支援教育の基礎を身に付けられるようにし、発達障害を含む障害のある子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な教育を推進します。
79 受験一辺倒でない多様な選択肢を持つ教育
人材育成に関する社会の要請に応えるため、普通高校以外に、最先端の職業教育を行う専門高校を整備する等、多様性・専門性のある選択ができるようにします。
高等教育における産学連携を強化するとともに、専門学校の果たしてきた実績に基づき、職業教育に特化した新しい高等教育機関を創設し、『学校教育法』上の地位についても検討します。現状の専修学校・各種学校の存在意義を十分認識して、他の学校群との制度的格差の解消を目指し、財政的支援や教育内容の充実に向けての公的支援等を図ります。
大学等と産業界・地域社会とのより幅広い連携協力の下で、インターンシップを充実します。地域密着型のコミュニティカレッジ化により、技能習得と就労を支援します。
80 高等教育政策・大学政策の積極的な推進(大学ビックバン)
「大学力」は国力そのものであり、質・量両面の充実・強化が必要です。経営が悪化したり、質が著しく低下した大学の改善を促し、成果が認められない時は退場を促す仕組みの確立や、社会や学生ニーズの観点からの新規参入認可プロセスの明確化など、大学強化のための設置基準の見直しを行います。
世界トップレベルの大学は特区化し、諸規制を撤廃します。オープンラボ、研究サポートスタッフの設置を義務化します。世界トップレベル大学からの博士号を持つ若手研究者の大量スカウト、資金支援などを行います。
大学教育の質の保証徹底を義務化し、評価に基づく資金の重点配分(授業評価、教員の業績評価の厳格化等)を行います。
開かれた教育と研究体制をつくり、学長のリーダーシップを強化するため、学長と教授会の役割の明確化や、学長を支えるスタッフ(理事、副学長、財務等の専門スタッフ)の抜本的強化、学長裁量経費の充実などを行います。
私立大学の収入の約8割は学生納付金であり受益者負担が重く、国公私立大学の設置形態論・経費の受益者負担論の見直し等を行い、財政支出の仕組みを再構築します。地域共創(大学と地方・地域社会、産業の連携)運動を積極的に推進します。
81 国立大学法人運営費交付金等の安定的な確保
わが国の基礎科学の中核を担っているのは、多様な人材が集い、教育活動や研究活動を行っている大学ですが、近年、その安定的な教育研究活動を支える基盤的経費(国立大学法人運営費交付金及び施設整備費補助金、私学助成)が大幅な減少傾向にあります。
これにより、教員数の維持や施設・設備の管理・運用等で、多大な困難が生じていると指摘されていることから、わが国の基礎科学を強化する観点からも、これらの基盤的経費を安定的に確保します。
東日本大震災の被災地にある大学が、被災地復興の拠点として研究やプロジェクト実践を進められるよう、重点化して支援を行います。
82 大学院教育の抜本改革
大学院について、研究活動のみならず教育活動を一層重視し、文系・理系それぞれの設置目的に応じた多様性を確保して、体系的かつ集中的な人材育成の取り組みを強化します。社会の多様な場で活躍する人材を育成・確保するため、産業界や優れた人材育成の取り組みを行っている公的研究機関等との密接な連携・協力を推進し、社会人が学べる環境を整備するなど、大学院における教育活動を強化します。
世界をリードする大学院の形成を促進するとともに、世界水準にある大学院の層に厚みを持たせるため、世界最先端の優れた教育研究活動を行う大学や、特定分野で質の高い教育研究活動を行う大学等に対する重点的支援を強化します。教育研究活動の閉鎖性・排他性を排除するため、学問分野別に細分化されて設けられている学協会の改革を促進します。
83 博士課程学生に対する支援強化及び若手研究者の活躍促進
入学金や授業料免除の対象拡大、給付型奨学金の創設、ティーチング・アシスタント及びリサーチ・アシスタントの充実など博士課程学生への経済支援を抜本的に拡充し、学生全員が安心して学べる環境を整備します。
単なる任期付ではない若手研究者のポストを大幅に増やすとともに、キャリアパスを多様化するため、産業界の研究職や知的財産管理等の研究支援に携わる専門職等での活躍を促進します。公的研究機関等における、ポスドク等を対象とした専門人材育成の取り組みを支援し、活躍機会を拡大します。若手研究者が自立して研究に専念できるようにするための新たな研究資金制度として、当該研究者の名前を冠した「冠プロジェクト」を創設します。
84 「留学生30万人計画」と学生・研究者の国際交流の積極的推進
「留学生30万人計画」の実現を目指し(当面20万人目標)、国・地域・分野等に留意しつつ、優秀な留学生を戦略的に獲得します。東日本大震災の影響により、日本で学ぶ留学生や研究者が減少しないよう、日本の学校や研究機関の教育研究活動に関する情報発信の強化、生活支援など在学時の受け入れ環境づくり、卒業・修了後の就職支援など社会の受け入れの推進を図ります。
わが国の学生や若手の研究者が内向き指向にあると指摘されており、世界で活躍する優れた人材の育成を強化するため、高校生を含む学生の留学機会を拡大するとともに、若手をはじめとする研究者の海外研鑽の義務づけや機会の大幅拡大を推進します。
世界水準の教育研究活動を展開するためには、海外から優れた研究者を受け入れ、協働で研究活動に取り組むことが不可欠であり、奨学金の充実や受け入れ機関の体制整備、周辺の生活環境の整備等を推進し、優秀な留学生や海外からの研究者の受け入れを大幅に拡充します。
85 「スポーツ基本法」に基づく「スポーツ立国」の実現
スポーツを国家戦略として推進するため、わが党主導により議員立法で制定した『スポーツ基本法』に基づき、「スポーツ立国」を実現するための諸施策を強力に推進するとともに、スポーツ庁、スポーツ担当大臣を新設します。
スポーツを人間の調和のとれた発育に役立てるため、文化や教育と一体として捉え、競技的価値のみならず、教育・健康・国際交流促進などを拡充することにより、スポーツを国民に浸透させ、その文化的・教育的価値や社会的責任を高めます。
オリンピック等国際大会で日本人選手が活躍できるよう、ナショナルトレーニングセンターの利用を無料化する等、国際競技力向上に向けた諸施策を推進するとともに、わが国の復興を示す象徴として、2020年東京オリンピック・パラリンピックを招致するため、国立霞ヶ丘競技場を全面改修し、被災地での競技開催とキャンプ地の全国展開を実現します。あわせて、2019年ラグ
ビーワールドカップの成功に全力を尽くします。さらに、各競技の国際大会の誘致に取り組みます。
学校における体育や運動部活動の充実、全国体力・運動能力等調査の結果の活用による子どもの体力向上の取り組みを推進します。国民体育大会、総合型地域スポーツクラブ、指導者養成事業など各種スポーツ振興事業の充実を図り、国民各層のスポーツの生活化を促進します。
86 スポーツ振興体制の充実・強化
スポーツ振興に対する一層の財源を確保するため、独立行政法人日本スポーツ振興センターの実施する「スポーツ振興くじ」の拡充を行い、助成対象団体等が申請しやすいシステム整備を検討します。また、寄付金の全額が法人税の損金算入の対象となるよう、指定寄付金のあり方について検討します。
生涯スポーツの振興並びに競技力の向上を実現していくため、スポーツ関係団体・組織の一層の充実・活性化を目指し、プロ、アマチュアを問わないアスリートの雇用促進や引退後の選手の生活の保障も合わせたセカンドキャリアの活用をはじめ、優れた人材並びに財源の確保を図り、地域スポーツ社会における人材の好循環と社会貢献を目指します。そのために、スポーツ立国戦略にあるワンストップの「セカンドキャリアセンター」の創設を検討します。
87 世界に誇るべき「文化芸術立国」の創出
文化が新たな国富を生み出す観点からも、既存施設の改修や人材の積極的育成など、世界に誇るべき「文化芸術立国」を目指します。日本文化を戦略的に海外発信するため、伝統的な文化・芸術の継承・発展を引き続き推進するとともに、アニメなど新たな日本ブランドとしてのメディア芸術の振興や人材育成、制作者の待遇改善を図ります。文化交流の相手先と内容の重点化、優れた芸術の国際交流の推進、海外の日本語教育拠点の拡充等を行います。
文化芸術の創造性が産業や地域の活性化に結びつく取り組みを行う「文化芸術創造都市」が全国各地に形成されるよう支援します。また、義務教育期間中に、全ての子どもが、質の高い文化芸術を最低2回(伝統文化と現代文化を各1回)は鑑賞・体験することができるようにするとともに、地域に伝わる伝統芸能などを、親や子ども達にしっかりと伝えるための「伝統文化親子教室」を創設します。
わが国の文化関係予算は高い水準にあると言えず、「文化芸術立国」の創出に向けて、予算の増額を目指します。
88 文化芸術活動の支援、文化財の後世への継承
文化芸術団体の円滑な活動のため、専門的人材の育成や意欲的・先進的な活動に対して、手厚い支援を行います。寄付文化の醸成を図るための税制上の優遇措置を検討します。東京には伝統寄席演芸の鑑賞の場(国立演芸場)がありますが、関西にはないため、関西(大阪)における「国立伝統芸能演技場」(仮称)の設立について検討します。
東日本大震災で被災した文化財の復旧を進めるとともに、地震や火災等の災害から文化財建造物を護るための防災対策を推進します。貴重な民俗文化財について、後世に確実に引き継いでいくため、映像記録(デジタルデータ)等の作成を推進します。
89 世界遺産・無形文化遺産などの保存・活用
昨年、小笠原諸島と平泉がユネスコの「世界遺産」に登録されました。わが国には、12件の文化遺産、4件の自然遺産があります。さらに、地域に根付く伝統・慣習など文化の多様性を象徴する「無形文化遺産」では、能楽や人形浄瑠璃文楽、歌舞伎など20件が登録されています。また、国連食糧農業機関の「世界農業遺産」には、新潟県佐渡市と石川県能登半島が登録されています。
これらの世界遺産・無形文化遺産などの保存・活用を図ることによって、海外への日本文化の発信及び諸外国との相互理解の増進や、わが国の文化を再認識し、歴史と文化を尊ぶ心の育成、文化財の次世代への継承などを積極的に推進します。
90 「科学技術・イノベーション推進」の国づくり
震災復興の原動力として「科学技術・イノベーション推進」の国づくりを目指すため、人材・予算・制度や研究体制の改革など、科学技術基盤を根本から徹底強化します。安保・外交、経済・財政、規制改革等の総合戦略として科学技術イノベーション政策を位置づけ、官邸のリーダーシップを発揮するための司令塔を整備します。特に、福島第一原子力事故対応の教訓を踏まえ、政治決定と科学的助言の機能強化を図ります。第4期科学技術基本計画で掲げている25兆円を上回る政府研究開発投資総額を目指し、必要な経費の確保を図ります。
「事業仕分け」により停滞してしまった地域発のイノベーション創出を改めて強力に推進し、地域の元気を科学技術により取り戻します。
世界をリードする新たな知の資産を絶え間なく創出し続けていくためには、研究者の自発性や独創性に基づいて行われる研究の一層強力な推進が不可欠であり、これを支える科学研究費補助金をはじめとする競争的資金について、その多様性や連続性を確保しつつ、大幅に拡充します。同時に、全ての競争的資金について、間接経費30%を確保します。
91 イノベーションの実現に向けた制度改革
新たな産業や雇用を創出するため、企業だけでは実現できない革新的なイノベーションを産学連携で実現するとともに、イノベーションを妨げる各種規制を官邸=司令塔主導で抜本改革します。
研究開発税制やエンジェル税制の対象拡充等の税制改革や、ベンチャー支援の充実等の制度改革、特許等の知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度等の改革を強力に推進します。国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、特に、アジア諸国等との連携・協力の促進を念頭に置いて、官民協働による戦略的な国際標準化活動を抜本的に強化します。
わが国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとしてとらえ、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。
92 世界に冠たる研究開発拠点の形成
イノベーションを生み出していくためには、大学や公的研究機関、産業界等が集い、協働で研究開発に取り組む「場」の構築が必要です。特に、わが国の強みを有する分野において、地域資源等も柔軟に活用しつつ、オープン・イノベーションに対応した「競争」と「協調」による世界最先端の研究開発拠点を形成します。
わが国が世界の頭脳の獲得における中核的な地位を占めていくためには、国内のみならず海外の優れた研究者を惹きつける国際的な研究ネットワークの拠点形成が不可欠であり、「世界トップレベル研究拠点(WPI)」の大幅な拡充や、素粒子分野の最先端大型実験施設「国際リニアコライダー」のわが国への誘致を目指すなど、世界水準をしのぐ優れた研究活動を行う大学や公的研究機関などに対する支援を抜本的に強化します。
93 科学技術の国際活動の強化
わが国の科学技術水準の一層の向上を図り、自然災害や感染症等、地球規模で発生する深刻な課題の解決に積極的に貢献するためには、諸外国との連携・協力を一層強化することが不可欠です。先端分野での科学技術協力やODAを活用した科学技術協力等、科学技術外交を大幅に強化するとともに、新興国の科学技術力の急伸等に時期を逸せず対応し、国家存立のために必要な科学技術を強力に推進します。また、優れた教育活動や研究活動を行う国内の大学と海外の大学との連携・協力を進め、外交面からも、これらの教育研究活動の積極的な活用を促進します。
さらに、海外動向の収集・分析体制を確立するとともに、安全保障に関わる技術等の管理を強化します。一方で、国際的な核不拡散体制の強化に向けて、わが国の技術を積極的に活用し、これに貢献していきます。
94 戦略的宇宙政策の推進
国際的なプレゼンスの確保と日本の国益のために、必要な予算を確保し、宇宙科学の推進と不断の研究開発に加え、国民生活の質の向上のための利用の促進、安全保障対応、産業振興等を加速します。
宇宙の開発利用体制は、宇宙基本法の理念と、宇宙基本計画に明記された5年間2兆5千億円の事業試算に基づき、ロケットなどの輸送系及び衛星システムの開発・整備・運用など宇宙の開発利用を強力に推進するための重要分野・重点プロジェクトへの資源配分を行う等、戦略的な宇宙政策を実施していきます。そのために、予算編成に権限を有する内閣府の宇宙政策委員会及び、執行機関である独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の理事長及び理事に国家観をもった人員を配置させ、内閣総理大臣の重要な政策の一つとして、宇宙科学の振興、宇宙産業基盤の振興、わが国の安全保障、シーレーン確保、戦略的ODA、資源外交、海洋政策等と宇宙政策等と密接に連携させます。
Ⅳ.外交・安全保障
わが党は、国民の生命・領土・美しい海を断固として守り抜きます。
自由・公正・法の支配など世界の普遍的な価値に基づき、国益を守るため、戦略的な外交をダイナミックに展開します。また、自助自立の日本を基本としつつ、国家の独立と平和を堅守する総合的な安全保障政策を推進し、危機的状況に陥った外交・安全保障を立て直します。
■1.外交
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95 強固な日米同盟の再構築
わが国の外交の基軸は日米同盟であり、アジア太平洋地域の平和と安定の礎です。民主党政権による外交の迷走により、日米の信頼関係が大きく損なわれています。これ以上の同盟弱体化を防ぎ、わが国防衛力の実効性をさらに高める努力を不断に行い、抑止力の維持・強化を図るとともに、沖縄をはじめとする地元の切実な声に良く耳を傾けつつ、負担を軽減する在日米軍再編を着実に進めます。その上で、安全保障、政治、経済はもちろん、防災、医療・保健、教育、環境問題等、地球規模の諸課題などの幅広い分野において、協調と協力を進め、日米同盟の一層の深化を図ります。
96 自由で豊かで安定したアジアの実現
豊かで安定したアジアの実現に向けて、近隣諸国との友好協力関係の増進に努めます。中国・韓国・ロシアとの関係を改善するとともに、ASEAN諸国・インド・オーストラリアとの安全保障やエネルギー政策での協力を推進します。また、これらの国々とはそれぞれ二国間にとどまらず、アジアと世界の平和、安定、発展にともに貢献する幅広い協力関係を築いていきます。
アジアの経済力を中長期的視点から強化し、その潜在力を引き出すため、広域開発の推進(ヒト、モノ、カネの流れをスムーズにする)やアジア市場の内需化に向けた施策・貢献策を、着実に実施していきます。
97 テロとの闘いの継続
インド洋における補給支援活動は、アフガン復興支援とともに、国際社会が一致して取り組む「テロとの闘い」の車の両輪です。わが国が実施した補給支援活動は、インド洋における国際的な海上阻止活動の重要な基盤であり、各国からも高い評価を受けてきました。また、この活動は国際協力というだけではなく、日本と中東を結ぶ重要なシーレーンの安全確保にも資する、わが国の国益そのものにつながる活動でもありました。わが党は、お金さえ出せば事足りるという、いわゆる「小切手外交」に反対します。国際社会の一員として、インド洋上での補給支援活動を早急に再開し、あわせて海賊対策の艦船にも補給ができる『補給支援特措法』の成立を目指します。
98 海賊対策の強化
わが国にとって、航行の安全や海上の安全確保は国家の存立と繁栄に直結します。日本国民の生命及び財産の保護の観点から、海賊対策は重要な課題です。これまでも、沿岸国の海上取締り能力の強化と人材育成への協力を通じ、海賊対策に取り組んできましたが、引き続き、国際社会と連携しつつ、ソマリア沖・アデン湾での海賊対策に積極的に取り組んでいきます。このために、前述の『補給支援特措法』を成立させ、海賊対処のための艦船にも補給支援を行うことを可能とします。さらに、日本籍船へ武装警備員が乗船可能となる法整備を推進します。
99 海洋資源の開発、海洋権益の確保
わが党が策定した『海洋基本法』に基づき、エネルギー資源等の海洋資源の開発・利用促進及び排他的経済水域の開発や大陸棚の延長など、国の海洋権益を確保します。また、環境保全と調和を図りつつ、積極的な開発・利用を進め、真の海洋立国を目指し海洋産業を振興させます。
100 災害時における国際協力の強化
東日本大震災に際して、国際社会から受けた支援に感謝し、災害時における国際的な支援活動に、今後も積極的に協力します。その際、必要となる装備についても整備を進め病院船等の保有も検討します。また、防災・減災・避難救援体制等、わが国が震災対応によって得た教訓・知見をソフトパワーとして世界に紹介し、その活用を図ります。
101 北朝鮮の核開発の阻止
拉致・核・ミサイル問題の包括的解決が基本です。北朝鮮による核実験、ミサイル発射はわが国の安全保障に対する重大な脅威であり、対北朝鮮措置の継続とともに、国連安保理決議に基づく行動を関係諸国と一致して取り組みます。
102 拉致問題の解決
拉致は国家による重大犯罪です。昨年、金正日体制から金正恩体制に移行しましたが、拉致問題に対する姿勢の具体的変化がない以上、引き続き拉致被害者全員の帰国、真相究明、実行犯引渡しを基本方針とし、一切の経済支援を行いません。また、政府認定以外の特定失踪者の調査を徹底するとともに、「対話と圧力」という一貫した考えのもと、国際世論をリードして、必要に応じて「ヒト」「カネ」の移動をさらに制限していくなどの制裁強化を行い、北朝鮮に拉致問題の全面的な調査のやり直しを強く要求します。
さらに、北朝鮮による米国人拉致の疑いも濃厚であり、米国政府の認定への働きかけを強化して、日米連携して問題の解決を迫るとともに中国の協力を強く要請しつつ、国連に拉致問題に関する調査委員会を設立する努力などを通じて国際社会と連携しながら、国家の威信をかけて拉致被害者全員の帰国を実現します。
103 国際社会での貢献と国連安保理の改革
時代の変化と共に、国際社会の平和と安全の維持に主要な役割を果たす意思と能力のある国が常に「安保理」の意思決定に参加することは、「安保理」の代表性と実効性を向上させます。わが国の常任理事国入りを含む「安保理」改革の早期実現に向けて引き続き取り組みます。また、各種国際機関において制度構築などの主導的な役割を果たします。
104 核軍縮の推進
国際的な軍縮・不拡散体制の強化に向けて主導的に取り組みます。特に核軍縮分野での現実的かつ具体的な取り組みを進めます。また、安全保障に懸念を生じさせないため、わが国の「核抑止政策」について、根本的な議論を開始し、基本方針を確立します。
105 ODAの充実と、開発途上国の支援
政府開発援助(ODA)は、外交施策を実現していく上での必要不可欠な手段です。中長期的な戦略に基づき、重点化・効率化を進めつつ、「人間の安全保障」の考え方のもと、ミレニアム開発目標の達成に向けて課せられた責任も踏まえて、「質」と「量」の双方でODAの拡充を目指します。そのためにODAの基本理念を定め、運営の透明化を図るODA基本法を制定します。さらに、民間経済界やNGOとの連携強化に引き続き取り組み、JICAの投融資機能の本格再開や円借款の迅速化を図ります。また、わが国企業の海外進出の後押しも行うなど、海外進出する日本企業の支援を在外公館の本来業務として位置づけ、人脈形成・情報提供など、最大限の支援を行います。
106 資源外交の強化
ODAを含む外交ツールを活用し、主要な資源供給国との関係強化に努め、供給源の多様化を図るなどの「資源外交」に力を入れます。特にアフリカについては、対アフリカODAの倍増、民間投資の倍増支援という国際的な約束を着実に実行に移しつつ、この地域の経済成長、人間の安全保障の確立、環境問題といった課題にリーダーシップを発揮します。
107 対外発信の強化
ODA卒業国との円滑な関係が維持される仕組みを構築します。イスラム圏やアフリカ等との相互交流を深め、わが国の独自の役割を果たします。
わが国の優れた法制度や保健医療システムなどの対外発信を高めるとともに、各国の法整備支援、戦略的な日本語普及、知的交流、科学技術外交を推進し、日本のソフトパワーを強化します。併せて、外交政策の対外発信及び国民に対する情報発信を抜本的に強化し、シンクタンク等との人的ネットワークの強化を行うなど、知的交流を強力に推進します。
108 地球規模の課題への取り組み強化
気候変動・地球温暖化や新型インフルエンザ対策・保健システム強化をはじめとする保健分野、水・衛生、国民の生活にも直結する資源・食料問題といった、地球規模の諸課題への取り組みを強化します。
109 自由貿易への取り組み
自由貿易の推進は、わが国の対外通商政策の柱です。WTOドーハ・ラウンド交渉の早期妥結に向け、引き続き取り組んでいきます。その際、農業交渉等については、各国の持つ多様な農業の共存や林・水産資源の持続的利用が可能となるルールの確立を目指します。
また、EPA/FTA・地域協定等の経済連携に関しては、国益に即して、メリットの大きなものについては積極的に推進するとともに、これによって打撃を受ける分野については必要な国境措置を維持し、かつ万全な国内経済・地域対策を講じます。
TPPに関しては、政府が国民の知らないところで、交渉参加の条件に関する安易な妥協を繰り返さぬよう、わが党として判断基準を政府に示しています。
①政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
②自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
③国民皆保険制度を守る。
④食の安全安心の基準を守る。
⑤国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
⑥政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
110 外交の体制強化
刻々と変化する国際社会において、わが国の国益を踏まえつつ、平和と繁栄を確保するためには、総合的な外交力を一層強化することが必要です。そのため、わが党で取りまとめた「総合的な外交力強化へのアクション・プラン10」(外交の礎となる人材の育成、150大使館体制の実現等)、「5つの重点分野への具体的な取り組み」(中型の政府専用機導入の検討、在外公館の施設整備と現地職員の確保、在外公館と海外公的拠点(JICA、JBIC、JETRO、国際交流基金等)の施設統廃合や調達共用化によるコスト削減等)を実施します。また、引き続き邦人保護の強化を図ります。
111 議員外交の積極展開
議員外交を積極展開し、大臣経験者等も活用するなど、わが国の国際関係に幅と厚みを持たせます。
■2.安全保障
政権公約 : 112 ~ 128 (クリックで開閉)
112 変化する安全保障環境に適応する人員・予算の強化
北朝鮮の核実験・ミサイル発射、中国の軍事力増強、ロシアの軍事的復調など、わが国を取り巻く安全保障環境は大きく変化しています。このような環境に適応させるため、防衛力を「質」「量」ともに見直し、予備自衛官を含む人員と予算の強化を図るべく、民主党政権で策定された防衛計画の大綱、中期防衛計画を見直します。特に総人件費改革等により、充足率が約90%前後に抑制され、部隊での「実員」不足が常態化していることを踏まえて、行政改革推進法の自衛官への適用を見直します。また、退職自衛官の転職支援を充実強化し、自衛官の年齢構成の適正化を図ります。自衛官の処遇等を改善し、震災対応などにおける献身的な働きに報います。
113 米国の新国防戦略と連動した自衛隊の役割強化
米国の新国防戦略に対応し、抑止力を高めるため、日米防衛協力ガイドラインなどを見直します。また、共同訓練を活性化し、物品・役務の融通や情報保全のための協定締結を進めるなど、同盟国・友好国との防衛協力を進め、アジア太平洋地域全体の抑止力を高めます。
114 国家安全保障基本法の制定
政府において、わが国の安全を守る必要最小限度の自衛権行使(集団的自衛権を含む)を明確化し、その上で『国家安全保障基本法』を制定します。また、その法律において、内政上の施策に関する安全保障上の必要な配慮など国・地方公共団体・国民の責務を始め、自衛隊の保有と文民統制、国際社会の平和と安定のための施策、防衛産業の保持育成と武器輸出などを規定して、安全保障政策を総合的に推進します。
115 国家安全保障会議の設置
外交と安全保障に関する官邸の司令塔機能を強化するため、「国家安全保障会議」を内閣に設置します。国家の情報収集・分析能力の強化及び情報保全に関する法整備による態勢の強化を図り、的確な情報を活用して国民の安全を守ります。
116 防衛省改革の推進
民主党政権で停滞している防衛省改革を加速させます。特に統合運用、内部部局と各幕僚幹部との関係の見直し、専門性に応じた自衛官と文官の適切配置(UC混合組織への改編)、部隊運用組織の統合などを進め、より積極的・効率的に機能する防衛省・自衛隊にします。
117 国際平和協力法の制定
世界の平和構築に資する自衛隊の国際平和協力活動の推進のため、補給支援特措法やイラク人道復興支援特措法といった、その都度定める特措法ではなく、自衛隊の海外派遣が迅速に対応可能となるような一般法としての『国際平和協力法』の制定を目指します。
また、災害時などの国際緊急援助隊の活動の経験と教訓を踏まえ、より迅速で実効性のある派遣が可能となるように、関係法を整理します。国連のPKO、ソマリア沖・アデン湾での海賊対策等、自衛隊の海外派遣は、今後とも国益と国際協調のために積極的に実施します。
118 危機管理体制の強化
非常事態(武力攻撃事態も含む)に際して、国として迅速な対応が可能となるよう、関係省庁の連携を強化し、憲法に緊急事態に関する規定を設けるなど、法制度や組織を整備します。
119 在外邦人の避難措置に関する自衛隊法の改正
外国における緊急事態に際して、在外邦人等の避難や輸送を迅速かつ効果的に行えるように、『自衛隊法』を改正します。
120 新たな脅威からの日本防衛
必要な水準の防衛力を基盤として、即応性や実効性の高い弾道ミサイル防衛システムの配備を進め、大規模なテロ・ゲリラへの対策、NBC(核、生物・化学)兵器などの対策を講じます。特に安全保障に資する宇宙利用の推進とサイバー空間における対応能力を早急に高めるため、国を挙げて取り組みます。
121 原発等の重要施設の警備
テロ等の不測の事態から、原子力発電所を始めとした重要施設を守るため、警察・海上保安庁・自衛隊の連携を強化し、必要な人員・組織・装備を充実させます。その際、自衛隊が原発施設等の重要施設を警護できるような法的措置を行います。特に福島第一原発の警備は喫緊の課題であり、作業員の入退出の管理を厳格化するとともに、緊急措置として自衛隊を中心とした万全な警備体制を確立します。
122 大規模災害時等に対する訓練の充実
自らの危険を顧みず、東日本大震災の被災者の救援、復旧・復興に全力を傾けた自衛隊・警察・消防・海上保安庁等の活動に感謝しつつ、日頃から地方自治体等との合同訓練を充実させる等、今後も大規模災害等に連携して対処できる体制を整えます。
123 防衛を支える地域との連携
防衛施設は、自衛隊及び在日米軍の各種活動の拠点であり、自衛隊と日米安保体制を支える基盤として必要不可欠なものです。これらの施設がその機能を十分発揮するため、国民の国を守る意識を涵養するとともに、基地周辺対策を推進し、関係地方自治体や住民、支援組織との連携を重視します。
124 基地周辺住民への負担軽減の推進
基地周辺住民の方々に様々な負担をかけていることを踏まえつつ、沖縄における米軍基地の整理・統合・縮小をはじめ、基地周辺住民の方々の負担軽減や生活環境の整備、雇用の創出などの諸施策を推進します。特に普天間飛行場の固定化に対する沖縄の懸念を払しょくするとともに、新たな負担を被る関係自治体には特別な配慮・施策を講じます。
125 技術立国日本の未来のための防衛技術、生産基盤の維持・強化
国の防衛政策上の観点から国内の防衛産業の技術、生産基盤を維持・強化するため、自主的な技術研究・開発や日米共同開発・生産を推進します。わが国の卓越した技術・製品の国際社会での活用、防衛省が開発した装備品等の民間・他省庁への転用など、抜本的改革を進めます。
その中で、武器及びその技術の輸出に関しては、わが国及び国際社会の平和と安全の確保の目的に資するため、テロ支援国、国連決議対象国、国際紛争当事国、輸出貿易管理の不十分な国を輸出禁止対象国とし、それ以外の国・地域を対象とする武器輸出について、許可に係る判断基準「武器及び武器関連技術に関する輸出管理の指針」を定めて、厳正に武器等の輸出を管理し、個別に輸出の可否を決定する仕組みを構築します。
126 サイバーセキュリティの対策強化
わが国の情報セキュリティ技術は未だ世界最高峰にはほど遠く、現行目標(2020年)では足下の有事に対処できません。国家安全保障、外交、国民の安心・安全等の観点から、外国からのサイバー攻撃を有事と定義し、情報セキュリティの抜本的強化を図ります。具体的には、今後5年程度に目標を短縮し、官民の設備投資、情報システム担当者等の集中的な訓練や人材育成、啓発活動、研究開発等の総合的な対策を推進するための基金の創設や予算措置を行うと同時に、有事関連法令や秘密保護関連法令の法的整備や情報セキュリティ関連組織の増強を行います。
特に、警察庁や防衛省、海上保安庁においては、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関の全ての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。
127 G空間(地理空間情報)プロジェクトによる社会基盤インフラの構築
地理情報と衛星測位情報を電子国土基盤情報として統合活用したG空間情報(地理空間情報)は領土、領海、領空統治の基本情報となります。この様な情報を国として担保し、発信するための社会基盤インフラを構築することでわが国の外交、経済、防衛上の安全保障の確保、国土の強靭化に努めます。
128 日本の外交、防衛の向上に直結する宇宙システムの構築
宇宙覇権各国の動向に注視しつつ、日本の国益に直結するグローバル・コモンズにおける宇宙空間を国家領域として捉え活用します。具体的には、わが国のミサイル防衛に必要な高分解能かつ高頻度の偵察衛星と早期警戒衛星に必要な開発を加速し、自衛隊が利用する通信、気象衛星、偵察等、様々な用途の衛星システムを開発・構築します。これらの運用を支える輸送系、新射場の新設・整備を含む地上系、技術基盤の維持・向上を図るため、デュアルユースの観点からの宇宙システムの開発を推進し、その保全策を立案します。また、準天頂衛星「きずな」を7基打ち上げ、アジア・オセアニア地域の情勢安定の観点からも、測位政策を推進させ日本の国際的プレゼンスを高めていきます。
■3.領土・主権
政権公約 : 129 ~ 133 (クリックで開閉)
129 領土・主権問題を担当する政府組織の設置
民主党政権発足後、わが国の領土・主権問題に関わる周辺国の挑発行動が相次いでいます。この流れに歯止めをかけるべく領土政策の立て直しが急務です。そのため、国家として取り組みを強化するために、内閣府設置法を改正し「領土・主権問題対策本部(仮称)」を政府に設置します。不法占拠の続く北方領土と竹島の問題については、交渉を再活性化してわが国の強い意志を示します。
130 領土・主権・歴史問題に関する研究機関の新設
領土問題に関する歴史的・学術的な調査・研究を行う機関を新設します。新機関は研究成果を活用し、国内及び国際社会に対し、法と歴史に基づく日本の主張について普及・啓発、広報活動を行います。また、各種の戦後補償裁判やいわゆる慰安婦問題の言説などにおいて、歴史的事実に反する不当な主張が公然となされ、わが国の名誉が著しく損なわれています。これらに対しても新機関の研究を活用し、的確な反論・反証を行います。
131 国境離島の保全・振興等に関連する法整備
国境離島の適切な振興・管理に資する『特定国境離島保全・振興法』、『無人国境離島管理法』を制定し、『領海警備法』の検討を進めます。
132 尖閣諸島の実効支配強化と安定的な維持管理
わが国の領土でありながら無人島政策を続ける尖閣諸島について政策を見直し、実効支配を強化します。島を守るための公務員の常駐や、周辺漁業環境の整備や支援策を検討し、島及び海域の安定的な維持管理に努めます。
133 領域警備の強化
世界第6位の排他的経済水域と6852もの島々の安全を確保するため、海上保安庁等の人員・装備・予算を拡充し、領海・領域を護る体制を整えます。特に南西諸島においては、警察、海上保安庁、自衛隊を重点配備するとともに、海上輸送能力の向上を図るなどの対応能力を高めます。
Ⅴ.社会保障・財政
社会保障は、経済を成長させ雇用を確保する中で、納税し、社会保険料を負担する者があってはじめて成り立つものです。
わが党は、「自助」、「自立」を第一に、「共助」、「公助」を組み合わせ、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を目指します。
消費税は、全額、社会保障に使います。
■1.社会保障制度
政権公約 : 134 ~ 176 (クリックで開閉)
134 妊娠から子育てまで切れ目のない家族支援
・特定不妊治療に要する費用の助成の充実
・妊婦健診費用の公費負担の継続、出産一時金の充実
・妊娠中から出産・子育てを通して利用できる公的な相談窓口の整備
・居住地域で出産できるよう産科医療機関の開業を支援し、周産期医療ネットワークを整備・充実するなど出産環境の整備
・産後ママ検診など産後の母親に対するケア体制の整備拡充や、新生児から3歳まで発達段階に応じた訪問育児支援の充実
・3歳から小学校就学までの国公私立すべての保育料・幼稚園費の無償化に向けた施策の推進
・病児・病後児保育や一時預かり保育、地域子育支援センター・ファミリーサポートセンターなどの保育メニューが利用したい時に利用できる体制整備への支援
・感染症の拡大防止システム構築や小児医療の充実など乳幼児の命を守る仕組みの構築
・5歳児検診の実施など、乳幼児健診を充実し、発達障害などを早期に発見できる体制の整備
・子どもの医療費無料化を検討
・小学校給食の無償化など小・中学生の子どものいる家庭への支援への推進
・放課後子ども教室を活かした補習支援への推進
など
上記の子育て支援サービスの一部については、自民党が修正した「子ども・子育て支援法」を更に一歩進め、各自治体において、地域の実情に合わせ、親・保育関係者・地域住民・行政の協議に基づき事業が実施できるようにします。そのため子育て交付金創設などを検討します。
その他にも、
・パパママ教室を充実し、出産前に命の大切さや成長発達を学ぶ機会の提供
・父親の産休・育休取得のための環境整備(8819運動)をはじめ、父母ともに育休をとりやすい、育休をとることが不利にならない環境の整備などでゼロ歳児に親が寄り添って育てることができる社会の推進
・母子家庭及び父子家庭が子育てと就業の両立ができるよう環境整備の充実
・祖父母などの子育て経験者が子育て家族を支える制度の整備
・多世代同居の促進
・仕事と生活の調和(ワークライフバランス)の推進
などにより子育て環境の整備を図ります。
また、保育に関しては、児童福祉としての現行保育制度の改善・拡充を思いきってすすめることにより、子どもの健やかな成長と安心・安全な保育を保障するとともに、子育て家庭の支援を積極的かつ大胆に行います。
さらに、保育を必要とする全ての子どもたちが質の高い保育を受けられるよう、
・保育所施設基準の維持・改善、保育士配置基準の改善、保育士等の処遇改善及び人員の確保や保育士等の研修時間を確保する仕組みとキャリアアップ制度の創設
・待機児童の解消と、質の高い保育施設整備の同時推進
・地方における保育所の定員割れ対策
・親の働き方等の如何によらず、子どもの生活及び教育の観点からの適切な保育時間の確保
などの実現を図ります。
また、民間保育所運営費については、児童福祉法第24条に基づき市町村の保育の実施義務を堅持するとともに、国庫補助を守ります。
・放課後児童クラブについて、既設の小学校施設の活用などにより全ての小学校区での設置と全学年での利用促進、その規模の適正化や指導員の増員・処遇改善などによる質の確保、「公的責任」や「最低基準」などの法的根拠の明確化などにより、公的支援の充実を図ります。
「子ども手当」に関しては平成24年度より廃止し、「児童手当」を復活させ、その内容を拡充しました。
所得制限を設けることで、子育て支援がより必要な世帯へ重点配分されるとともに、「子どもは社会が育てる」との民主党の誤った政策を撤回させ、第一義的には子どもは家庭が育て、足らざる部分を社会が支援するというわが党の主張が実現しました。社会の基本は「自助」にあり、家族の助け合いの役割も正しく評価されなければならないとの観点から、児童手当との関係を整理した上で年少扶養控除を復活します。
135 児童虐待の早期発見のため、地域や社会による取り組みを加速化
児童虐待専門のホットラインを設け、適切な担当者を確保することを義務付けるとともに、要保護児童対策地域協議会が有効に機能するよう、医療機関や警察が連携して取り組む仕組みを作ります。また、子どもたちを取り巻く医療職を対象に、早期発見のための研修を実施するほか、児童虐待の実態をより正確に把握し、解決に向けて必要な法整備を積極的に進めます。さらに子どもの虐待を防ぐための啓蒙活動を、積極的に展開します。
136 虐待された子どもたちに笑顔を
児童養護施設等で育った子どもたちの自立を可能にするために、18歳以降の就業や生活支援の制度を充実させるとともに、子どもたちが家庭的な雰囲気の中で生活し、多世代間の交流や地域交流ができるよう児童相談所や児童養護施設などの機能を拡充し、必要な法整備を進めます。また、グループホームや里親制度を推進するなど、虐待した親や虐待された子どもたちが再び笑顔を取り戻せるよう支援策を拡充します。
137 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立
年金保険料率の上昇を抑制するため、消費税を中心に所要の財源を確保した上で、基礎年金国庫負担割合を二分の一へ恒久的に引き上げます。
無年金者対策として、年金の受給資格要件の期間を25年から10年に短縮するとともに、低年金者対策として、年金制度とは別途に、福祉的給付などの対策を実施します。
高齢者の方々の働く力や意欲を生かせるように、働き方等人生設計に合わせて年金の受給時期や受給額を弾力的に選択できるように、給与に応じて年金受給額が減少する現行の在職老齢年金制度をはじめ制度の見直しを行います。
パート等非正規雇用者への被用者保険(医療、介護を含む)の対象拡大については、今次の法改正において実現しましたが、今後とも雇用や経営に対する影響を踏まえつつ検討します。
年金記録問題の早急な解明と迅速な救済により、年金への信頼を取り戻します。
社会保障番号制度を早期に導入し、年金をはじめ社会保障サービスの信頼性と透明性、さらには効率性を向上させます。
今後の年金制度については、現行の年金制度を基本としつつ、社会保障制度改革推進法に則り、社会保障制度改革国民会議での審議結果を踏まえ、必要な見直しを行います。
138 国民が安心できる持続可能な医療の実現
国民が必要な時に質の高い医療が受けられるように、次の施策を実施し、地域において必要な医療を確保します。
・医師の科目別、地域別偏在を是正するとともに、必要な医学部定員の確保
・臨床研修医制度の見直し
・勤務医の処遇改善
・女性医師の働きやすい環境の整備
・有床診療所をはじめ診療所の機能の強化・充実
・地域の医療の必要性の調査などに基づく、診療科目ごとの診療所数や病床数、及び高度医療機器等の適正配置、医療機関の連携体制の充実
・総合診療医の育成とかかりつけ医の導入
・救急医療機関の機能充実
・かかりつけ薬局の充実・強化
・医療人材を活用したチーム医療の推進
・産業医と精神科医等との連携を含め地域産業保健センター事業の充実・強化
等
人間としての尊厳が守られ、人生の最終段階を穏やかに過ごせるように、終末期医療をはじめ医療のあり方を患者の意思がより尊重され得る方向で見直すとともに、看取りのための施設整備や在宅サービスの提供など、そのための環境を整備します。
予防医療総合プログラムの策定や、検診を定期的に受診した場合に医療費の自己負担を軽減するなどの誘導策の導入等により、健康の維持増進、疾病の予防及び早期発見等を積極的に促進するとともに、後発医薬品の使用拡大、二重診療(過剰投与)の抑制、さらには給食給付(医療上必要なものは除く)の原則自己負担化など保険給付の対象となる療養範囲の適正化を図り、保険料負担をはじめ国民負担の増大を抑制します。
国民健康保険の運営の安定化、保険者機能の強化を図るため、徴収事務の執行体制などを整理したうえで、運営単位を市町村単位から都道府単位に広域化します。また、官民格差を是正する観点からも、共済健康保険と協会けんぽの統合を進めるとともに、保険者機能を維持しつつ被用者保険の料率の平準化を図ります。
「現行の高額療養費の限度額は高い」との声に応え、誰でも安心して医療が受けられるように高額療養費の限度額を引き下げるとともに、社会保障番号の導入に合わせて医療と介護の総合合算制度を創設します。さらに、被用者保険の標準報酬月額の上限の引き上げ、市町村毎にばらばらで、また、同じ市町村内の資産だけに着目した資産割のように負担能力に応じているとは必ずしも言い難い国民健康保険の算定方式の見直しなどを目指します。
高齢者医療制度は現行制度を基本としつつ、消費税を中心に所要の財源確保を前提に長寿医療制度に対する公費負担の増加等、高齢者医療制度への支援の増大に伴う国民健康保険、協会けんぽ、組合健保などの保険料率の上昇を抑制するなどにより、国民皆保険制度を守ります。
患者の利益に適う最先端の医薬品、医療機器等が一日も早く使用できるように、現行の保険外併用療養費制度(評価療養)を積極的に活用し、保険収載されていない医薬品等をより使用され易くするとともに、審査手続きや体制の整備等を進め、海外で使用されている医薬品等が日本で使用できない状態の解消、さらには日本人により適した医療機器等の開発と迅速な導入を図ります。
サービスを利用する高齢者の立場に立って、年金、医療、介護などのサービスを自らの状況に応じて適宜組み合わせ、総合的に利用できるように検討します。医療に対する消費税の課税のあり方については、医療機関、薬局の税負担の検証を行い、引き続き検討を行います。
地域医療の中核的な役割を担う公立病院は、全国に883ありますが、約5割が赤字決算となるなど、極めて厳しい経営状況にあります。過疎地や産科、小児科、救急部門における医療などを中心に、地域の民間医療体制の状況も踏まえつつ、公立病院の経営効率化等を進めるとともに、地方交付税などによる適切な財政支援を行い、経営健全化と地域医療の充実に努めます。
全国どこでも救急患者が医療機関に確実に受け入れられる救急医療体制づくりや夜間も含めて全国でドクター・ヘリコプターの運用が行えるよう、体制の整備を行い、救命率の向上を目指します。
139 がん対策の充実
がんや心疾患など、専門医療に対する国民のニーズに応えるために、地域が求める医療機能や施設・病院の整備(ブロックごとの地域がんセンター、リハビリセンターなど)を緊急かつ集中的に行います。
「がんによる死亡者数の減少」、「すべてのがん患者及び家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上」を目指し、がん検診の充実、医療機関の整備によるがん医療の均てん化、専門医の育成、粒子線治療への支援を含めた放射線療法及び化学療法の推進、治療の早期段階からの緩和ケアの推進、がんに関する相談支援及び情報提供体制の整備、がん登録の推進、がん研究、就労支援など患者・国民の立場に立って、がん対策を総合的かつ計画的に推進します。女性特有のがん対策として、子宮頸がん、乳がんの早期検診を促進するとともに、成年男子の前立腺がんの早期検診も促進します。
140 ワクチン施策の推進
わが国はワクチン後進国と言われており、ワクチンの一層の活用を図るため、ワクチンで防げる病気はワクチンで積極的に対応するとの方針の下、健康安全保障の観点に立って、ワクチンの研究開発の促進と供給体制の整備、充実等を図ります。併せて、現在、任意接種となっている子宮頸がん予防ワクチン、肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン、おたふくかぜワクチン、水痘ワクチンの定期接種化も含め感染症予防を促進するなど、新たなワクチン政策の確立と推進体制を構築します。
新たな脅威に備えて、新型インフルエンザ等対策特別措置法に則り、新型インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザ等)が発生した場合、全ての行政機関・地方自治体・各企業・全国民が一体となった国民保護のための体制を整備します。
141 医療安全の確保に資する死因究明制度の検討
患者にとって安全・安心な医療の確保や不幸な事故の再発防止に資するために、医療事故による死亡を含む死因究明のための制度のあり方について検討を進めるとともに、死亡時画像診断システム整備事業の推進等、必要な財政支援についても検討します。
142 精神保健医療福祉の推進
精神疾患が医療計画における五疾患の一つとして位置づけられたことを踏まえ、国民の精神保健福祉医療に貢献するために、精神科医療の一層の推進と質の向上を推進します。
特に精神科救急医療、自殺、うつ病、身体合併症、児童思春期、認知症など精神科医療に対する新たな社会的ニーズの広がりと深刻化に対応して、精神科医療への適切な評価、精神科疾患に対する正しい知識の普及や早期発見・早期治療の促進を図るための啓発運動、児童や職場などにおけるメンタルヘルス教育、診断法・治療法等に関する研究の推進を支援します。
また、地域社会において障害があっても安定した生活を営むことのできる共生社会の実現を目指し、障害者の自立及び社会参加の支援等を促進します。
さらに、長期在院者対策として、地域生活をサポートするサービスの提供や受け皿の整備のため、地域での住居の確保や介護精神型老人保健施設等により精神科病床の適切な機能分化等による精神科医療福祉の効率化と質の向上を図るために努力します。
143 認知症対策の推進
認知症対策としては、認知症の早期診断、鑑別診断とともに、身体合併症、精神症状と問題行動、認知症終末期医療などあらゆる病態に機能分化して対応可能な適切な精神科医療を充実し、地域での生活を継続するための地域ケアと施設ケアを統合した医療介護総合モデルの体制の確立を目指します。また、かかりつけ医が中心となり、他職種と連携して高齢者や家族の相談等に応じる体制の整備を検討します。
144 看護職の処遇改善の推進
看護職の不足対策を推進し、看護職が働き続けられるよう労働環境を充実し、処遇を改善します。在宅医療・介護の充実の必要性を鑑み、介護保険施設や訪問看護に従事する看護職を確保し処遇を改善します。また、看護職(助産師・保健師含む)の更なる能力の向上、役割の拡大を支援するとともに、その専門能力を保健医療現場でより活用できる環境を整備します。看護職の養成所等に対する支援を推進し、看護職を志す人を支援します。
145 国民歯科医療の充実・発展
国民の生涯を通じた切れ目のない歯科口腔保健や歯科医療を推進し、生活の基盤となる「食」を支えます。
特定健診(メタボリック・シンドローム対策)に歯科健診を導入し、8020運動を促進します。
労働者の一般健診に歯科健診を導入し、産業歯科医の役割を明確化することを目指します。
また、要支援・要介護者を含めた高齢者に対する在宅歯科医療を充実させます。
146 B型・C型肝炎対策の推進
B型・C型肝炎対策は各々の和解に則り、更に完全解決に向け努力します。また、肝炎全体への一般対策の充実を図ります。
147 ヒトT細胞白血病ウイルス・難病・結核・腎疾患対策の推進
ヒトT細胞白血病ウイルスについて、全国一律の妊婦健診での抗体検査実施により母子感染を予防します。難病の診断・治療方法の研究開発を進めるための難病研究拡充等、難病対策を充実します。成人T細胞白血病、HAMの感染者・患者に対する診療体制の整備等とともに、難病の方々の医療費負担を軽減するため、助成の対象疾患を増やすよう努めます。難病患者の方々や家族の方々のご負担を軽減するために、治療法の早期確立・普及を図るとともに、相談支援や療育環境の整備、就労支援等に努めます。
結核は年間約2万3千人の新規患者が発生するなど、依然としてわが国の主要な感染症であり、確実な治療の実施等、総合的な結核対策を推進します。腎臓病、糖尿病性腎症の予防対策と腎不全・透析治療に移行しないための啓発活動を促進し、腎臓病の原因究明の研究を推進します。また、透析患者が安心して治療を受け生活できる環境及び体制の整備に努めます。
糖尿病等の生活習慣病対策、慢性閉塞性肺疾患(COPD)診療、リウマチ・アレルギー疾患対策及び、慢性腎臓病(CKD)研究事業を推進します。
148 薬局・医療機関の薬剤師の機能、役割の拡充と積極的活用
国民医療の向上とセルフメディケーション(自己健康管理)普及のため、医薬分業の一層の推進と地域の薬局(全国に約54,000軒)・薬剤師の積極的活用を図ります。医薬安全対策強化の一環としてチーム医療における薬剤師の業務の拡充と医療機関における薬剤師配置を推進します。薬剤師の卒後研修の制度化を検討します。更に安全優先の観点から医薬品のネット販売の安易な規制緩和は行わず、スイッチOTCの推進など、一般用医薬品の拡充を図ります。
149 薬物の乱用防止の総合的推進
薬物乱用防止については、薬物の種類ごとの取り締まり法規や複数の規制当局による対応がなされていますが、啓発、取り締まり、薬物依存者の治療・社会復帰の支援など薬物乱用防止対策を総合的かつ有機的に推進し、乱用防止対策を一層効果的に実施できるよう、総合法規としての基本法の策定を図ります。また、いわゆる脱法ハーブの使用による健康被害が増加していることに鑑み、指定薬物の包括的指定、麻薬取締官(員)への取り締まり権限の付与などを検討し、所要の制度改正を行うことにより、薬物乱用のない健全な社会を構築します。
150 製薬産業に係る成長戦略推進と国民医療、健康への貢献施策の展開
製薬産業がイノベーションを通じて付加価値のある薬剤の創造力を強化し、国民医療へ更に貢献していくため、研究開発減税の拡充、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の恒久化を図るとともに、基礎的医薬品の安定供給に資する措置を行います。また、先発品と後発品の役割が適正に反映された市場実勢価格主義に基づく透明性の高い薬価制度を堅持します。さらに、医療の効率化や国民の健康維持の観点から、後発品の普及を図るとともにセルフメディケーションを推進します。
151 医薬品の流通体制の充実
安全・安心・信頼の医薬品流通を確立するため、医薬品のトレーサビリティの確立、新型インフルエンザ・パンデミック対策の推進をするとともに、災害時のガソリン・電力確保等の危機管理体制を充実します。また、医療保険制度の円滑な運営を図るため、医薬品流通のあり方を改善します。
152 リハビリテーションの提供体制強化
誰もが安心し生き生きと生活できる社会を実現するため、リハビリテーション提供体制を強化し、医療と介護で切れ目のない相互連携のあるチーム医療を推進します。老人保健施設の在宅復帰機能の強化・在宅支援の強化を図ります。
153 漢方医学の推進
日本の伝統医学である漢方医学について、指導者・臨床医の教育・研修、科学的根拠確立のための研究を推進します。漢方医学を支える漢方製剤の安定供給が可能となる環境を整備します。
154 再生医療を国民が迅速かつ安全に受けるための総合的施策の推進
再生医療の研究開発から実用化までの施策を世界に先駆けて総合的に推進し、国民が受ける医療の質及び保健衛生の向上を図ります。すでに党の部会で了承された議員立法の「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けるための総合的施策の推進に関する法律案」を通常国会に提出し成立を目指します。
155 生活の質(QOL)を高める統合医療の推進
統合医療は、現代西洋医学に伝統医療や各種健康法を組み合わせることで、より効果的で安全性が高く、心のケアにも重点を置いた患者中心の医療を目ざしています。厚生労働省に統合医療の研究機関を設置し、各種健康法の安全性と有効性の調査・研究を推進し、その情報を公開します。
また、統合医療のための教育、人材育成、実践のための環境整備や心身医学的なアプローチの普及などに取り組みます。
156 健康で質の高い生活をめざすまちづくりの推進
地域住民が直面する健康課題には、一人ひとりの「心や身体の健康」のみならず、社会や文化、都市整備など住民を取り巻く多岐にわたる要因があります。その有効な包括的まちづくりとして、WHOが提唱する「健康都市プロジェクト」に参加する自治体を支援するなど、個人から家庭、そして地域へと拡がる健康づくりを積極的に推進します。
157 財政の安定化を図り、介護保険サービスの充実と保険料の抑制
高齢化の進展により、増大が予想される介護保険料の上昇を抑制します。そのために、介護保険の保険給付の対象となる介護サービスの範囲の適正化等による介護サービスの効率化、重点化を図るとともに、公費負担の増加などを行い、持続可能な介護保険制度を堅持します。併せて必要な介護報酬を確保等により介護従事者の一層の処遇改善等を図り、質が高く、必要な介護が行われ得る体制を整備します。
また、特養の待機者をはじめ、要介護者が安心して介護を受けられる居場所の整備を行うために、特養・老健をはじめ、特定施設やグループホーム、サービス付き高齢者住宅などの整備を進めます。
住民や自治体のニーズに応え、間仕切り等の工夫によってプライバシーの保護に配慮した上で、高齢者が適正な負担で必要な介護を受けられるよう、「多床室特養」の整備を進めます。
同時に、地域の高齢者が満足できる介護サービスを受け、安心して暮らせるよう、特養・老健などの介護施設の活用などによる在宅サービスの強化、24時間型の訪問介護や訪問看護、訪問診療の整備等により地域の高齢者が満足でき、安心して暮らせる介護サービス体系を推進します。併せて、家族介護者の精神的等負担の軽減のための施策を進めます。
介護保険法改正により平成30年まで延長となった介護型療養施設のあり方に関しては、同施設の必要性を重視し、見直しを行います。
大災害時において、被災した介護や支援が必要な方々を支えるため、支援チームの創設、他の施設等での受入れ等の仕組みづくりを推進します。
158 介護支援専門員の積極的活用
医療・介護・福祉サービスを必要とする人が過不足のないサービスを受けて、住み慣れた地域で自立した生活を営むためには、介護支援専門員(ケアマネジャー)による適正なケアマネジメントが必要です。そのため、居宅介護支援事業所の経営の独立性・中立性の推進を図るとともに、特養・老健などの「介護保険施設」において介護支援専門員の専従化を進め、自立支援や在宅復帰に向けた施設機能の強化と活性化を図り、高品質な介護サービスを提供できるシステムをつくります。また、それらを促進するため、社会保障制度において重責を担う介護支援専門員の国家資格化を目指します。居宅介護支援費に関しては、誰でも公平にケアマネジメントが受けられるように、介護保険制度で全額を賄う現行制度を堅持します。
159 在宅介護の支援
地域で多様な質の高い在宅介護サービスが提供できるよう、事業者の創造性と自律性が発揮できる環境を整えるための法令基準等を見直します。
160 運動器リハビリテーションの充実とロコモティブシンドローム(運動器症候群)の早期発見
運動器の衰えにより、要支援・要介護となることを予防するため、医療における運動器リハビリテーションの充実を図ります。また、転倒・骨折・寝たきりのリスクが高くなるロコモティブシンドローム(ロコモ運動器症候群)該当者(予備軍を含め全国で推定4700万人)を早期に発見し、リハビリテーションを指導することができるよう、運動器健診事業の導入を推進します。
161 障害者の方への施策の推進
障害者自立支援法については、応益負担から応能負担に改めるとともに、知的障害、発達障害、精神障害のある人に対して、自民党が障害程度区分から障害支援区分に修正した上で、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いがわかるような形に法改正を行いました。今後は、障害者総合支援法を着実に推進し、国と地方の適切な役割分担の下、地域の実情を踏まえながら、計画的なサービスの基盤整備を図ります。また、障害者に対する福祉的な給付を着実に実行するとともに、自民党が主導した障害者優先調達推進法(ハート購入法)を着実に実施する等雇用の促進に努めます。また、精神障害のある人が地域で安心して暮らすことができるよう、精神保健医療福祉施策の改革に取り組むとともに、障害福祉サービスの利用の観点から、成年後見制度の活用を更に進めます。さらに、障害の有無にかかわらず、国民の誰もが相互に人格と個性を尊重し支えあう「共生社会」を実現するため、幅広い国民の共感と理解を得ながら、「障害者虐待防止法」を着実に実施するとともに、障害のある人の自立と社会参加のための施策を着実に推進します。
162 生活に困窮している世帯の生活支援の拡充
若年者を中心に就労可能な者については、仕事へ就くよう促すため、求職者支援制度の活用等により就労を促進します。
生活に困窮している低所得高齢者等に対して、その実態に即した生活支援を的確に行うため、生活に困窮している方々の支援に精通したNPO等の活用を図るとともに、福祉的給付などの低所得者対策を実施します。また、単身高齢者や老々介護の増大などに対応するため、高齢者の生活の場となる養護老人ホーム、グループホームや特定施設などの整備を進めます。
契約を前提する社会において、判断能力が不十分なことによって不利益を被ったり、人間としての尊厳が損なわれることがないように、成年後見制度を充実させます。
163 生活保護制度について
生活保護制度については、真に必要な人に生活保護が行きわたるとともに、納税者の理解の得られる公正な制度に改善し、国民の信頼と安心感を取り戻します。
そのため、自助努力による生計の維持ができない者に対する措置ということを原点に、不正受給への厳格な対処とともに、生活保護水準や医療費扶助の適正化、自治体における現金給付と現物給付の選択的実施、自立や就労の促進など必要な見直しを早急に実施します。生活保護水準については、勤労者の所得水準、物価、年金とのバランスを踏まえ、生活保護の給付水準を10%引き下げます。ジェネリック薬の使用義務化やレセプトの電子化によるチェック機能の強化等により医療費扶助の抑制・適正化を推進します。
また、不安定な家庭環境等にいる子供たちへのセーフティーネットの確立、教育の提供体制の整備などにより世代間の貧困連鎖を防止するとともに、高齢者、障害者等の就労不可能者と就労可能者とに制度を二分し、就労可能者を対象に、就職斡旋を断った場合の給付の減額・停止の仕組みや有期制の導入などを検討します。
ケースワーカーの民間委託の推進や成功報酬制の導入等により、ケースワーカーのマンパワーを拡充します。稼働層の自立を促進するため生活保護卒業時の自立資金に充てる「凍結貯蓄」を制度化します。
164 原爆被害者への支援
人類唯一の被爆国であることを踏まえ、被爆者の方々への支援策を推進します。
165 中国残留邦人への支援
中国残留邦人の方々のための生活支援をはじめとした抜本的な支援策を講じましたが、今後さらに帰ってきて良かったと思えるような、きめ細かい対策を推進します。
166 さらなる国民の負託に応えられる「社会保険労務士法改正」の推進
社会保険労務士が、国民の利便性の向上とさらなる負託に応えられるよう、個別労働紛争について未然防止から解決まで一貫して関与できるようにすることや一人法人制度の導入等が可能となるよう、社会保険労務士法の改正を推進します。
167 生活衛生サービスの安全・安心の推進
生活衛生サービスが、安全・安心に提供されるよう、生活衛生営業指導センター、生活衛生同業組合の活性化を図ります。また、建築物の衛生環境・日本政策金融公庫の融資等の充実を図ります。
168 柔道整復師の活動の支援
柔道整復療養費の適正な見直しと卒後臨床研修の制度化を目指します。柔道整復師の業務に関して算定基準の明確化と法整備等に努めます。
169 鍼、灸、あん摩・マッサージ・指圧治療の充実
国民が鍼、灸、あん摩・マッサージ・指圧治療を身近な治療法として、介護分野を含め更に利用できるように、制度の整備に努めます。また、専門性と更なる技術の向上を積極的に支援します。
170 管理栄養士の積極的活用
今後、増加が想定される在宅療養者や高齢者に対して適切な栄養管理を提供できる体制を構築し、安心した生活を過ごせるよう、管理栄養士の積極的活用を進めます。
171 心理職の国家資格化を実現します
複雑化する現代の日本社会において、国民のこころの問題や、発達・健康上の問題は、ますます増大し、これらに対する心理的な対応のための専門的人材育成は急務となっています。こうした国民的ニーズの高まりに対応するために、先進諸国と同様に、心理職の国家資格化の実現を目指します。
172 一人ひとりの状況に応じた就労支援と労働環境の整備
ハローワークの機能強化等により、若者、女性、高齢者など一人ひとりの状況に応じた就労支援を積極的に進めます。
また、産・育休の取得範囲の拡大などによる子育てと仕事の両立など頑張る個人を支援し、経済のグローバル化や活力ある社会に対応した労働環境の整備を進めます。
173 就職、転職をしやすい環境の整備
職能別検定制度の充実とジョブカードの円滑な活用を通じ、職業訓練や職業能力開発などを活かし、就業につながるマッチングシステムを確立します。
また、労働者派遣制度の活用によるスキルアップやキャリア形成を行うなど再就職、転職支援の制度や仕組みを設けることにより、再チャレンジや成長産業への円滑な人材シフトを促進し、正規雇用の維持、拡大を図ります。
同一価値労働・同一賃金を前提に均衡待遇を目指し、非正規労働者の処遇を改善します。
174 新卒者就職対策の実施など若者の雇用対策の推進
新卒者の就職状況の厳しさが続く中、100%就職を目指して、トライアル雇用する企業へ3年間補助金を支給する制度など新卒者の雇用の受け皿の整備を促進し、若者の雇用対策を強力に進めます。
175 アスベスト対策
総合的なアスベスト対策を早急に図ります。すでに、わが党主導で被害者救済のための法律改正を行いましたが、今後も引き続き、国と企業の責任で、すべての被害者救済のための基金のあり方を検討します。
176 恩給の適正な水準を確保
国家・国民のために身命を賭して忠誠を尽くされた方及びそのご家族の生活を支えるための恩給は、国家補償として適正な水準を確保します。
併せて、戦没者遺骨収集と慰霊巡拝を推進します。
■2.財政健全化
政権公約 : 177 ~ 180 (クリックで開閉)
177 次代を見据えた財政構造改革
民主党政権のバラマキ施策で水膨れした歳出について徹底した削減を行うとともに、国・地方の公務員人件費の削減、生活保護の見直し等、さらなる削減を断行します。
また、財政による機動的対応が可能となる中で、成長戦略や事前防災等の分野に資金を重点的に配分することなど、わが国経済の成長に向けた施策を実施することで税収増を目指します。
こうした施策の実行により、まずは平成27年度(2015年度)には国・地方のプライマリー・バランス赤字の対GDP比の半減(平成22年度の水準比)を実現し、平成32年度(2020年度)までを目途に国・地方のプライマリー・バランスを黒字化するとの目標を堅持します。そして、国・地方の債務残高対GDP比を2020年代初めには安定的に引き下げます。
そのため、財政健全化に向けた中長期的な方針の下、5年を一期とする財政健全化中期計画を策定します。また、目標の実現と新たな施策実施の両立を図るため、新たな施策には、将来の成長に与える影響を考慮しつつそのための恒久的な財源を確保する原則を確立します。
上記の方針を明記した「財政健全化責任法」と「財政再建のための公務員人件費等の歳出の削減等に係る緊急措置に関する法律案」(仮称)をともに早期に成立させます。
なお、欧州債務危機問題等、国際経済情勢の動向によっては、国民生活等に重大な影響が及ばないよう、弾力的に対応します。
178 国・地方の公務員総人件費を2兆円削減
わが国の厳しい財政状況に鑑み、5年間の「集中財政再建期間」において、将来の国家像を見据え、計画性を持ちつつ、国・地方を含め幅広に公務員等の給与を削減すること等により、公務員総人件費を国・地方合わせて年間2兆円削減します。
179 国債市場の安定を確保
国債に対する信認を確保していくことは極めて重要であり、財政健全化に向けて節度ある国債発行に努めます。また、適切な国債管理政策を実行するとともに、あらゆるリスクを想定し、国債価格が暴落する「X-day」を防止するための処方箋を用意します。
180 安心社会実現に向けた税制抜本改革
わが党は、消費税の引上げを含む税制抜本改革についての考え方を既に前回の総選挙における政権公約、一昨年7月の参議院選挙公約、累次の「税制改正についての基本的考え方」において、明らかにしてきました。
財政状況の危機的な悪化により、近年、財政はその対応力を著しく欠いており、社会保障、安全保障への対応、国際競争力強化、人材育成、地域格差是正など、必要な分野への資源配分が進まず、日本の現在と将来に支障をきたしています。
一方、急速に進む少子高齢化の中で、持続可能な社会保障制度を確立するには、税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担を抑制しつつ必要な社会保障が行える制度を構築しなければなりません。
こうした点を踏まえ、日本の将来、次の世代、現在の国民生活を第一に考え、責任政党としてわが党が主導して、前回総選挙のマニフェストで国民に約束をしていなかった民主党を巻き込みながら、公明党とともに社会保障と税一体改革に関する三党合意を結びました。
その結果、社会保障制度改革国民会議における今後の議論を踏まえ、安定した財源を前提とした、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の成案が消費税率引上げまでに国民にお示しできることとなりました。
また、消費税の引上げにより、財政による機動的対応が可能となる中で、成長戦略や事前防災等の分野に資金を重点的に配分することなどにより、わが国経済の成長等に向けた施策が実施できることとなります。
(税率及び引上げ時期、使途)
消費税については、今回成立した「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」により、2014年4月に5%から8%、2015年10月に8%から10%へと2回に分けて引上げることが決まっています。
引上げに当たっては実施時期の半年前に、社会保障制度改革国民会議の結論を踏まえつつ、経済状況を確認の上、予定通り実施するかの判断を内閣が行うことになりますので、この総選挙は「約束は守る」わが党内閣を立ち上げるための大切な民意表現の場となります。
特に、2014年以降に財政の機動的対応が可能となる中で、成長戦略や事前防災等の分野に資金を重点的に配分することなどにより、わが国経済の成長を実現します。
なお、消費税の使途については、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げに要する費用を賄うとともに、これからも増加が見込まれる年金、医療及び介護の社会保障給付と少子化対策の費用に全額を充当することは当然のことです。
(低所得者、中小・小規模事業者への配慮)
消費税引上げが低所得者に与える影響を緩和するため、今後、食料品等に対する複数税率の導入を検討し、関係者の理解を得た上で実施します。簡素な給付措置については、低所得者に配慮した所得の再分配に関する総合的な施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として実施します。
独占禁止法等の必要な法制上の措置を徹底的に講ずること等により中小・小規模事業者の消費税の円滑かつ適正な転嫁に万全を期します。
(国民生活全般への配慮)
医療については、医療提供者の高額の投資に係る消費税負担について、医療保険制度において他の診療行為と区分して適切な手当を行う具体的な手法について消費税率の8%への引上げ時までに検討し、結論を出します。また、医療行為全般についての税制上の配慮等についても幅広く検討を行います。
住宅の取得については、取引価額が高額であること等から、消費税率の引上げの前後における駆け込み需要及びその反動等による影響が大きいので、平成25年度以降の税制改正及び予算編成の過程で総合的に検討し、消費税率8%への引上げ時及び10%への引上げ時にそれぞれ十分な対策を実施します。
個人所得課税については、各種控除や税率構造を一体として見直すことが必要です。所得税については、今回成立した税法に従い、具体的な措置について検討を加え、その結果に基づき、平成24年度中に必要な法制上の措置を講じます。さらに、社会の基本は「自助」にありますから、家族の助け合いの役割も正しく評価されなければなりません。その観点から、配偶者控除は維持し、児童手当との関係を整理した上で年少扶養控除を復活します。
資源・エネルギーの制約、急速な少子高齢化の進展、激動する国際経済・金融環境の下、特に、長引くデフレと急激な円高の中で、日本経済の成長を促進するため、研究開発税制及び投資促進税制を大幅に拡充します。
資産課税については、今回成立した税法に従い、相続税、贈与税の見直しについて検討を加え、平成24年度中に必要な法制上の措置を講じます。
自動車関係諸税については、国及び地方を通じた関連税制のあり方を総合的に見直します。安定的な財源の確保、地方財政への配慮の上に、簡素化、負担の軽減及びグリーン化の観点から、税制のあり方及び暫定税率を含む税率のあり方を総合的に見直し、自動車取得税及び自動車重量税について廃止を含め、負担軽減の方向で検討し、消費税率の8%への引上げ時までに結論を出します。
地方税制については、地方分権を推進するためにも、税収が景気変動による影響を受けにくく安定的で、かつ、税源の偏在性が小さい仕組みとします。具体的には、消費税を含む税制抜本改革の一環として、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人2税の在り方を見直します。
たばこ税については、たばこと健康に関するあらゆる総合的な検討を行うとともに、葉たばこ農家、たばこ小売店等への影響について検討します。
酒税のあり方については、税制の中立性・公平性・国際性の観点や財政状況等を踏まえ、酒類間の税率格差を縮小する方向で検討します。
低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化を推進します。
平成24年度税制改正で導入された地球温暖化対策のための税については、その使途について森林吸収源対策を含めた地球温暖化対策のための諸施策の推進に配慮します。
また、環境税については、税制全体のグリーン化を図る観点から、様々な政策的手法全体の中での位置づけ、課税の効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、既存の税制との関係等に考慮を払いながら、納税者の理解と協力を得つつ、総合的に検討します。
納税環境の整備を図るため、国民の理解を得ながら、個人番号法案に基づき、個人番号制度の早期導入を進めます。行政サービスの信頼性、透明性、効率性を高めるとともに、国民の利便、特に年金を始めとする社会保障サービスの向上や所得課税の更なる適正化を図ります。プライバシーに配慮したセキュリティ対策は当然のことですが、費用対効果を十分に検討した上で、徹底した国民視点に立って、国民にとって利便性の高い個人番号制度を構築します。
番号制度に関する情報システムについては、新設する政府CIO(最高情報責任者)など責任の所在を明確にすると同時に、適切な推進体制を整備し、審査のための第三者機関は天下りのない公平な機関とします。
また、スマートフォンの利用や生体認証の技術を取り入れるなど、民間事業者にも活用可能な将来性・拡張性に富んだ制度とします。
民間人となった日本年金機構の職員が行っている年金保険料の徴収業務を公務員である国税庁の職員が行う、いわゆる歳入庁構想は反対です。
Ⅵ.消費者、生活安全、法務
日々の暮らしを守るため、自民党は生活者・消費者の視点に立った施策を実行するとともに、治安対策を充実し、家族の絆を深める取リ組みを行います。法令を遵守した企業統治改革を推進し、公平・公正・透明な市場を形成します。
政権公約 : 181 ~ 193 (クリックで開閉)
181 消費者保護・育成施策の充実
消費者庁創設時の理念に立ち返り、真に消費者目線に立った行政機能の強化を図ります。
司令塔としての消費者庁、監視機能としての消費者委員会、センターオブセンターとしての国民生活センターの、それぞれの機能を充実させます。
食の安全・安心を図るための「食品表示の一元化」や少額多数被害者の救済策として「集団的被害者救済制度」を整備します。
「消費者教育」を推進することで、だまされない消費者のみならず、社会的な役割を負っている主体的に自立した消費者を育成し、公正で持続可能な社会環境をつくります。
182 適正な規模の小口金融市場の実現と真の返済困難者の救済
2006年12月の改正貸金業法の成立、2010年6月の同法の完全施行という一連の流れの中で、市場の収縮・マクロ経済への悪影響、新種のヤミ金の暗躍、返済困難者の放置といった様々な影響が顕在化しています。そのため、上限金利規制、総量規制といった小口金融市場に対する過剰な規制を見直すことによって利用者の利便性を確保します。同時に、多重債務者に対する支援体制を強化するとともに、ヤミ金融業者の摘発強化、適正業者の育成を図り、健全な借り手と健全な貸し手による適正な規模の小口金融市場の実現と真の返済困難者の救済を目指します。
183 総合的な治安対策の強化
平成20年に策定した「世界一安全な国をつくる8つの宣言」により、犯罪に強いまちづくりの推進、振り込め詐欺の撲滅、犯罪被害者の支援、生活の安全・安心を脅かす事案への対処、凶悪犯罪への対処、インターネット利用を含めたサイバー空間の安全確保、組織犯罪対策、銃器・薬物対策、客観的証拠の収集方法の整備、さらに死因究明体制の強化等を一層推進します。
そして、国際的なテロなどに対処するために必要な資機材を整備し、情報収集・分析の為の体制を強化・拡充します。
184 「第2次犯罪被害者等基本計画」の着実な推進と新たな犯罪被害者補償制度の確立
平成23年度から計画期間5カ年の「第2次犯罪被害者等基本計画」の着実な推進を図りつつ、犯罪被害者が、被害を受ける前の平穏な生活を取り戻すことができるよう、新たな犯罪被害者補償制度の確立を目指します。
185 矯正教育の充実
刑務所等での矯正教育の充実を図る観点から、介助犬や盲導犬育成プログラムを導入し、再犯防止を図るとともに、刑務所等出所者の社会復帰を支援します。
186 交通事故死者数を半減
現在、年間5千人弱の交通事故死者数を半減させるよう飲酒運転の根絶、高齢者の交通事故対策、高度道路交通システム(ITS)の推進により安全性を高めるための安全運転支援システムの実現など、総合的な交通安全対策を推進します。
187 自殺対策の強化
わが国における自殺死亡者数は、平成10年以降3万人を超える高い水準で推移しています。自殺者の減少を図るため産業医・専門医、心理職への紹介や、健康診断で精神患者チェックを盛り込む等、うつ病の早期発見に向けた社会としての対策を図ります。うつ病対応力を持つ精神科医師、精神保健福祉士等の活用を検討します。
さらに、一人でも多くの命を救うため、まず都市部における駅のホームドアの設置を義務付けるなど、目に見える対策を推進します。
188 家族の絆を深め、家庭基盤を充実させ、全員参加型社会の実現へ
社会の基礎単位である家族を大切にするという視点に立ち、家族の絆を深め、家庭基盤の充実を図ります。また、家庭や地域社会の機能を引き出し、老若男女が生きがいを持って働き続けられる社会整備を進めます。特に、家庭資産の形成がはかれるような税制の改正、三世代同居・近居の優遇、質の高い持家・借家制度等を進めます。
地域、職場、家庭などあらゆる場面で、年齢や性別、障害の有無に関わらず活躍できる社会環境づくりを推進します。
そして、配偶者からの暴力の根絶に向けた取り組みを図るため、DV被害者に対する相談体制の強化や、婦人相談所等での夜間・土日対応の強化について推進します。
また、青少年の健全な成長に資する「青少年健全育成基本法案」の法整備など総合的な施策を推進します。
189 保護司公務災害補償制度の導入
無償で犯罪者の改善・更生を助ける保護司が保護観察対象者から被害を受けた場合、人的被害しか補償されません。保護司が安心、安全に業務遂行できるよう人的被害だけでなく、物的被害及び保護司の家族に対する被害についても対象となる保護司公務災害補償制度導入のための保護司法の改正を行います。
190 成年後見制度の改正
遺体の引き取りや葬儀、永代供養、遺品処分等の死後事務委任契約は、現行法では本人に判断能力があることが要件のため、任意後見人のみが締結することができ、法定後見人はできません。しかし、独居老人の問題が社会現象化する中で、法定後見人が増加傾向にあるため、後見制度の更なる拡充のための成年後見制度の改正を行います。
191 電子記録債権法施行に伴う民法改正
現行民法上、根抵当権者が債務者との間の取引によらないで取得した手形上若しくは小切手上の債権については、これが根抵当権の被担保債権となることにつき明文上規定されていますが(民法398条の2第3項)、電子記録債権については規定されていません。こうした現状を改め、法的安定性の付与を通じた電子記録債権に係る業務の普及さらには金融の円滑化を図る観点から、同条同項に、「手形上若しくは小切手上の請求権」に加えて「電子記録債権」(電子記録保証に係る請求権を含む。)を追加します。
192 企業統治改革の推進
社外取締役の要件厳格化、上場会社における複数独立取締役選任義務の明確化、会計監査人選任における監査役・独立取締役のあり方の見直し、公益通報制度の実効化、親子会社等に関する規律の法制化、監査法人・公認会計士制度の見直し、違法行為についての刑罰厳格化と「過去は問わない」一定期の自首による免責などを検討し、企業統治改革を推進します。
193 公平・公正・透明な金融市場への適正化
昨今、AIJ事件や増資インサイダー問題といった金融商品取引をめぐる事案が多発し、信頼回復は至上命題です。公平・公正・透明な金融市場への適正化を図るべく、インサイダー規制の強化、金融検査官の任期付き外部登用(金融業経験者等)の増強や海外当局との捜査共助の強化等、金融検査・監督体制を強化します。
Ⅶ.エネルギー
いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期します。
当面は、再生可能エネルギーの最大限の導入と省エネの最大限の推進を図り、原発については、福島原発事故の反省を踏まえ、「安全第一主義」をもって対処し、3年以内に再稼働の結論を出すことを目指します。
中長期的には、10年以内に新たなエネルギーの安定供給構造を確立します。
政権公約 : 194 ~ 202 (クリックで開閉)
194 エネルギー政策の“安全第一主義”の徹底
東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故は、その甚大な被害によってわが国だけではなく、全世界に放射能の脅威を示すこととなりました。これまで原子力政策を推進してきたわが党は、このような事故を引き起こしたことに対してお詫びするとともに、今なお被災されている方々に対して心よりお見舞いを申し上げます。今後のエネルギー政策の根本に「安全第一主義」(テロ対策を含む)を据え、特に原子力政策に関しては、権限、人事、予算面で独立した規制委員会による専門的判断をいかなる事情よりも優先します。
195 当面のエネルギー政策
全てのエネルギーの可能性を徹底的に掘り起こし、社会・経済活動を維持するための電力を確実に確保するとともに、原子力に依存しなくても良い経済・社会構造の確立を目指します。
そのため、当面の最優先課題として、3年間、再生可能エネルギーの最大限の導入、省エネの最大限の推進を図ります。
原子力発電所の再稼働の可否については、順次判断し、全ての原発について3年以内の結論を目指します。安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。
なお、規制委員会により安全でないと判断された原発分については、太陽光や風力等の再生可能エネルギーの徹底的導入、省エネルギーの徹底的推進、環境負荷の少ないLNG火力発電所の立地推進、高効率石炭火力発電所の活用推進、産出国との交渉方法見直し等による化石燃料の調達コスト低減、電力会社間の電力融通、既存石油火力の活用などによって当面必要なエネルギーを確保します。
196 現在及び将来に責任の持てるエネルギー戦略の確立
中長期的エネルギー政策として、将来の国民生活に責任の持てるエネルギー戦略の確立に向け、判断の先送りは避けつつ、遅くとも10年以内には将来にわたって持続可能な「電源構成のベストミックス」を確立します。その判断に当たっては、規制委員会が安全だと判断する新たな技術的対応が可能か否かを見極めることを基本にします。
いかなる事態・状況においても社会・経済活動を維持するための電力が不足することのないよう、多少の時間は要しても将来の技術動向等を見極めた「責任ある戦略」を立案します。
197 エネルギー供給の確保
わが国で消費されるエネルギーは、ほとんどが輸入に依存しており、わが国経済は、原油価格等、世界のエネルギー動向に大きな影響を受けます。先の世界的な原油価格の高騰はわが国経済に暗い影を落としたことも記憶に新しいところです。資源小国の日本にとって、エネルギーセキュリティ(安全保障)は大きな課題の一つであり、資源外交や代替エネルギーの推進等によりエネルギーの確保に努めます。
特に、石油をはじめとした石炭、天然ガス等基幹的な化石燃料を安定的に確保するため、わが国の先端技術を通じた支援等により戦略的な資源外交を展開するとともに、資源の乱高下に対応できる体制を早期に整備します。
また、化石燃料の確保に戦略的に取り組むだけでなく、わが国の卓越した先端的環境エネルギー技術を発揮して産業部門や運輸部門、民生部門等でのエネルギー需給の効率化と燃料転換を図ります。天然ガスとともにCO2排出量の少ないガス体エネルギーとして低炭素社会の実現に貢献できるLPガスについては、その普及・促進を図るため、高効率ガス機器やLPG車の導入・普及の後押しと燃料転換を進めます。
198 再生可能エネルギー供給の引き上げ
風力、水力、太陽光、地熱(ヒートポンプ等)、バイオマス等の再生可能エネルギーの供給を引き上げます。
このため、①再生可能エネルギーの固定価格買取制度拡充、②様々なタイプの風力発電や小水力発電の開発・普及、③世界一の太陽光発電技術の蓄積を活かした、公共施設や住宅への太陽光パネルの設置促進及びメガソーラーの設置拡大、④電力系統の安定化の促進、⑤電気事業者による再生可能エネルギーの利用促進等に取り組みます。
さらに廃棄物等を有効活用するようなバイオマスエネルギーの拡大を図り、地熱発電所建設促進のために、自然環境・景観に十分に配慮しつつ国立公園内等に地熱発電所を設置可能とする等の規制緩和に取り組みます。
このような再生可能エネルギー産業は雇用創出力が高く、わが国の機械組立産業等の裾野の広さを活かした、国際競争力が期待できます。エネルギー安全保障の確保の観点を踏まえ、再生可能エネルギー産業を、新しい文明社会である低炭素社会のリーディング産業に育てます。
199 適正な電気料金体系の構築
電気料金のあり方については、事業者が発電施設の安全確保と安定した電力供給を行うための費用を確保する一方、国民生活や中小・零細企業等の経営に影響を与えない配慮が両立可能となるような適正な料金体系を構築し、国民の誰もが納得できるものとします。電力卸市場への事業者の新規参入を促進し、競争的環境の中で消費者が電気料金を選択できるようにします。
なお、現行の総括原価方式についてはその問題点を明らかにしながら、料金体系のあり方と併せて、その見直しも含めて検討します。
200 節電・省エネの徹底
国民全体で「節電・省エネ」意識を向上させるとともに、「技術による省エネルギー」の目標を設定していくこととし、省エネ商品(特に、まずは白熱灯の全LED化に向けた導入支援策)、石油の高効率利用機器の導入支援制度の創設、スマートグリッドの導入、火力発電所の高効率化等の政策を強力に推進します。
201 国家プロジェクトによる独自資源の開発協力の推進と産業化に向けた取組み促進
石油・天然ガス等のエネルギー資源が乏しいわが国にとって、国民生活の安定や経済成長のため、その持続的な確保は不可欠であり、国家の安全保障にもつながる重要な課題です。そのため、今後、早急に産官学による協力体制を構築し、海洋探査・採掘技術の向上など、国内のエネルギー・鉱物資源の自主開発促進を着実に進めます。
特に、わが国がものづくり、特に、国際競争力を持ったハイテク製品を開発する上でレアアース・レアメタルは不可欠であり、わが党は、一部の国による独占を防ぐ観点からも、産出国との連携等によって、その着実な確保を国家戦略として官民一体で強力に進め、世界的な争奪戦を勝ち抜きます。同時に、国内に廃棄された精密機械等に眠っているレアメタル(いわゆる都市鉱山)を効率的かつ低費用で回収できる「レサイクル事業(レアメタルのリサイクル)」を行い、わが国の独自資源として位置付けます。
さらに、小笠原や南鳥島等、わが国周辺にも多くもレアアース・レアメタルの存在が確認されており、その開発を強力に支援します。
一方、福島第一原発の事故によって火力発電の比率が増し、国民生活や経済活動に原油や天然ガスへの依存が高まる中、「化石燃料の持続的な確保」はこれまでにも増して重要な国家的課題です。まずは、これまで以上に「産出国との外交展開(共同資源探査・技術的支援等)」を行います。
また、わが国周辺の海洋にも天然ガスやメタンハイドレート(シェールオイル)が埋蔵されているとの報告があり、コスト高の問題などを克服し、その開発を加速します。特に、将来の「資源大国・日本」を目指し、メタンハイドレートへの開発に期待が高まっていますが、太平洋側においては「砂層型」、日本海側においては「表層型」と埋蔵形態が異なっているとの学術的な意見も出されています。そこで、実用化に向けた定量的な分析を行うべく、その調査・研究を加速化し、ポテンシャルを徹底追求します。加えて、調査・開発時に用いる機材や部材・工具等、わが国が持つ高度な技術を活かした裾野の広い分野を産業に結び付けていくことを国家的なプロジェクトとして取組みます。
202 原子力立地地域における地域振興に関する研究体制の整備
原子力立地地域の経済が原子力発電所等に雇用の面を含め経済的に大きく依存している状況に鑑み、今後のわが国のエネルギー政策における原子力の位置付けが同地域の将来に大きな影響を与えることは間違いありません。地域の「あり方」を早期に模索し、あらゆるエネルギー政策にも対応できるよう地域振興のあり方を検討する必要があります。
そこで、今後の「あるべき原発立地」や「地域振興のあり方」等を模索するため、産学官の連携の下、研究体制を整備する一環として、「原発立地地域振興研究センター」(仮称)を設立します。
Ⅷ.環境
美しい地球を次世代の子供たちに残すことは、今を生きる私たちの責任です。日本の優れた環境技術を活かして、地球環境保全に貢献しつつ、新産業として経済成長の原動力とします。低炭素社会づくり・生物多様性の保全などにわが国が主導力を発揮し、緑の地球と豊かな自然を守ります。
政権公約 : 203 ~ 229 (クリックで開閉)
203 環境分野における新ターゲティング・ポリシーの展開
蓄電池・燃料電池、次世代自動車、スマートグリッドなど、開発が先行した場合に莫大な需要が見込まれる技術開発分野をナショナルプロジェクトとして選定します。
また、日本の強みである省エネルギー技術等をより普及させます。例えば、鉄鋼をはじめとするわが国製造業の卓越したエネルギー効率、最高の水準を示す石炭火力発電の熱効率、ヒートポンプ、電気自動車、蓄電池などの先進技術の普及を図るとともに、CCS(二酸化炭素回収・貯留)やスマートグリッド等の新技術を開発して、世界の二酸化炭素削減に貢献します。
204 エコカー世界最速普及とモーダルシフト
環境にやさしいエコカーについて、補助制度により買い換えを進めます。自動車グリーン税制と併せ、1年間で100万台程の需要を増やし、2020年までに新車販売のうち2台に1台の割合で普及を図ります。
さらに、開発競争をリードし、電気自動車の量販・量産を開始するなど、地球温暖化対策に貢献するとともに、わが国経済の発展につなげることを目指し、電気自動車やハイブリッドカーなどのエコカーの世界最速普及を進めます。
また、鉄道、船舶等による物資の流通の促進、公共交通機関の利用者の利便性の増進、歩道及び自転車道の整備等により、モーダルシフト(自動車から温室効果ガス排出量がより少ない交通手段への転換)を促進します。
205 エコハウス化の加速
2030年までに新築公共建築物でのエコハウス化を大きく進め、建築物のゼロ・エミッション化を加速するとともに、断熱住宅を新築住宅の80%にするなど住宅等の省エネ化(エコハウス化)を加速します。
206 環境ビジネスの推進
優れた環境技術・ビジネスを、地球環境保全に貢献しつつ、わが国の経済成長の原動力とするため、新技術の開発支援と海外も視野に入れた普及、環境ビジネスへの投融資等を通じた「環境金融」の普及を積極的に推進します。特に温室効果ガス排出量削減等に役立つ新事業の創出を促進します。
さらに、マーケットにおいて環境性能に高い価値が与えられるよう、エコポイントの一層の普及や製品・サービスごとの環境情報の「見える化」を進めます。
また、新しい環境ビジネスモデルとして、国民や事業者が自らのCO2排出をクレジットの購入により相殺する「カーボン・オフセット」制度の普及を図ります。
207 低炭素社会づくり推進基本法の成立
すべての主要排出国の参加による衡平で実効的なポスト京都の国際枠組み作りを主導し、主要経済国の参加の下に2050年までの長期目標として温室効果ガス排出量を2005年比80%削減することは堅持します。
しかしながら、民主党政権が約束した1990年比25%削減はもちろん、2020年までの中期目標としてわが党が掲げた2005年比15%削減も、原発事故を踏まえ見直さざるを得ません。このため自民党は、広く開かれた議論を行い、国民が納得できかつ頑張れば実行可能な目標を設定し、現実的で実効性のある政策を実施します。
その上で、わが国として地球温暖化対策に真摯に取り組み、環境と経済が互いに刺激し合いながら成長していける社会を実現します。また、低炭素化を促進する観点から、国民経済及び産業の国際競争力に与える影響等を踏まえつつ、経済社会及び国民の生活行動の変化を促し、あらゆる部門の排出削減を進めるため、経済的支援や規制的措置を講じるほか、より包括的な環境税の検討を含め税制全般を横断的に見直し、税制全体の一層のグリーン化を推進します。
208 温室効果ガス削減のための全く新しい国際的枠組みを提唱
気候変動枠組条約についての国際交渉のこう着状態を打開するため、日本発で新たな温室効果ガス削減の世界的な枠組みづくりを提唱します。
開発途上の国や地域にまで最先端の温室効果ガス削減技術を普及させるため、自然体で導入される技術が導入された場合のコストと、最先端の技術を導入したコストの差額を、新たに世界レベルで設置される地球救済基金(仮称)から補填します。
基金の財源は、各国間の競争条件に大きな変化を与えない共通炭素税や国際連帯税といった、新たなグローバルな負担システムを構築することで賄います。これにより、途上国等には、最先端技術を導入する強いインセンティブが働くと同時に、技術を出す先進国側にも負担がありません。
209 地球温暖化に対する適応策の推進
地球温暖化に対する適応策を推進するため、生物の多様性の保全、国民の生命及び健康の保持、生活環境の保全、農林漁業の生産力の維持、社会資本の整備、災害による被害の防止、その他の必要な措置を総合的かつ計画的に講じます。
特に、地球温暖化の影響に関する観測及び監視の体制を強化するとともに、感染症等の予防、農作物の品種改良、洪水、高潮、渇水、干ばつ、土砂災害等による被害防止等を積極的に推進します。
210 温室効果ガス排出量等の情報開示の促進
温室効果ガスの排出及び吸収量の状況、低炭素社会づくりのために必要な措置の進捗状況等に関する統計の整備充実、集計及びその結果の迅速な公表、その他の必要な措置を講じます。
また、低炭素社会づくりに配慮した事業活動が経済社会の幅広い主体から評価されるよう、温室効果ガスの排出量、その他の事業活動に伴って排出する温室効果ガスの情報開示を促進します。
211 グリーンICTの利用促進
情報通信システムの利用により、温室効果ガスの排出量削減を促進するとともに、エネルギーの使用、人の往来及び物資の流通・生産及び消費の合理化等を促進します。
212 国民運動の推進
事業者、国民等の間で、低炭素社会づくりについての関心と理解を深めます。さらに、国民一人ひとりの自主的な行動による低炭素社会の構築に向けた国民運動を盛り上げ、毎年7月7日の「クールアース・デー」などを活用した様々な広報・イベント等により、ライフスタイル・ビジネススタイルの転換を訴えていきます。
213 低炭素社会を進める人づくりと環境教育の推進
環境教育・環境保全活動の推進の基盤的制度である環境教育・環境保全活動推進法をわが党主導で改正したことを踏まえ、環境教育を推進します。
持続可能な開発のための教育(ESD)の10年の取り組み等を推進することで、低炭素社会を主役となって支える人づくりを進めます。また、アジアにおける人づくりにも貢献します。
さらに、環境の保全に関する教育及び学習(環境教育)の振興、広報活動の充実等を図るとともに、草の根からの取り組みを支援します。特に、家庭、学校、職場、地域その他のあらゆる場における環境教育の充実を図るため、教材の開発、人材の育成、環境に配慮した学校施設及び学習環境の整備等を促進します。
214 COP10を踏まえた国際的リーダーシップの発揮
2010年に愛知県名古屋市で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)の結果を踏まえて、国際的なリーダーシップを発揮するとともに、生物多様性確保先進国を目指します。
215 豊かな自然環境を取り戻す仕組みづくり
時代の流れを先取りし、戦後の開発推進の過程で失われた鎮守の森や里山の復活、生物多様性の確保など、人口減少の状況を踏まえつつ、豊かな自然環境を取り戻していく壮大な仕組みづくりに挑戦します。今後のわが国の街づくり・インフラ整備・地域開発においては、より環境に配慮した取り組みが求められます。コンパクトで人や環境に優しいまちづくり、地域づくりを進めます。これらにより、都市機能と豊かな自然環境が共存する21世紀型の持続可能な都市・生活空間をつくります。
216 生物多様性の恵みを実感できる国立公園等の実現
美しい国・日本を代表する自然を有する国立公園等をより魅力あるものとするため、平成21年5月に成立した改正自然公園法等を踏まえ、国立公園や離島等における生態系の維持回復や海域保全等を推進します。
また、自然とのふれあいの場の整備、エコツーリズムの推進、温泉資源の保護等を通じ、自然環境を守りながらその活用を図るとともに、レンジャー(自然保護官)の活動や自然を守るNPO活動を支援します。
217 地球温暖化等に伴う生物の生息域の変化への対応
地球温暖化等の環境の変化による昆虫等の生息域の変化等に伴い昆虫等の防除の機会が増大することにより、殺虫剤等の使用による人の健康及び環境への影響が拡大するおそれがあります。
このため、『昆虫等の防除の適正化に関する法律案(仮称)』を制定し、昆虫等の適正な防除の推進に関し必要な事項を定め、人の健康の保護及び環境の保全を図ります。
218 希少な動植物の保護と管理
絶滅のおそれのある希少種動植物の保護・管理のため、生息・生育環境の調査・改善や繁殖の促進を図るとともに、野生順化訓練を通じ、トキやツシマヤマネコなど希少動物の野生復帰を促します。また、外来生物による生態系への被害の防止を図ります。
219 愛護動物と共生する社会の実現
改正した『動物愛護管理法』により、「犬猫の大量殺処分」を無くすとともに、ドッグラン施設等の整備に力を入れ、愛護動物と共生できる社会をつくります。
また、ペットの命を守るとの観点から、マイクロチップによる情報管理制度の導入について検討を進めます。
220 民有地の緑化推進と「緑化版エコポイント制度」の創設
都市公園に加えて民有地等の緑化(民有地等における植栽、芝生化、屋上・壁面緑化等)を推進するため、植栽樹木の種類、樹齢、樹形等の条件に応じてエコポイントを付与するとともに、植栽後においても緑被率に応じて毎年ポイントを付与または電気等の公共料金をポイント分減免するなどの「緑化版エコポイント制度」を創設します。
221 国立公園等の民有地売却において公的機関が優先的に取得できる制度確立
尾瀬国立公園は、その敷地のうち4割強が企業の所有地です。その土地を資産売却の対象とすれば、尾瀬の貴重な自然が脅かされる事態にもなりかねません。
同様に、地方自治体が管理する国定公園以下の公園についてもその敷地を民間が所有しているケースは多く、自然公園法の目的の一つである「自然の風景地の保護」のためには、民間所有者が敷地の売却をする場合に公的機関が優先的に取得できる制度が必要です。
このため、国立公園・国定公園・都道府県立自然公園内の民有地売却の際に、公的機関が優先的に取得できる制度を確立します。
222 自然環境保全基礎調査の拡充
わが国の「自然環境保全基礎調査」と生態系マップは世界トップクラスの精度を誇ります。世界に誇る自然生態系・生物資源を有するわが国にとって、生態系の調査と適正管理は国益に資するものであり、こうした事業の拡充を図ります。
223 フロン類対策の推進
地球温暖化の原因ともなるフロン類の適正かつ確実な回収・破壊、生産・使用の抑制に資する代替物質の開発並びに使用可能な代替物質を用いた製品の普及により、その排出量削減を促進します。
224 地域の特性を活かした循環型社会づくり
わが国において先進的な循環型社会の構築を一層進めるため、「もったいない」の心を活かし、廃棄物の発生抑制(リデュース)・再使用(リユース)・再生利用(リサイクル)の「3R」の取り組みを広げていくほか、国と市町村等が協力して、廃棄物エネルギー利用やバイオマス利活用を進めるとともに、地域内外のネットワークによる連携を後押しすることなどを通じ、地域の特性に即した低炭素の循環型社会づくりを加速します。
225 廃棄物のリサイクル促進
衣料品、電子機器、書籍、リユースペットボトルなどを回収・再販業者に持ち込みすることでエコポイントの付与が受けることができるようにします。また、中古市場、再生化業の産業醸成を奨励します。
226 生活排水対策の推進と不法投棄の撲滅
効率的な生活排水対策を進めるため、市町村等や国民の理解を得つつ、合併浄化槽の普及促進と管理の適正化に向けた体制整備を進めます。
また、産業廃棄物の適正処理を確保するとともに、わが国の美しい国土を守るためにも、ごみ不法投棄撲滅に向けた未然防止・早期対応の取り組みを推進していきます。
227 子どもの健康と環境
国民が安心して暮らせる安全で豊かな環境を保全することは、政府としての基本的な務めです。そのため、次世代を担う子どもたちが健やかに育つ環境の実現に向け、環境中の化学物質や放射性物質が子どもの発育に与える影響の解明に取り組みます。また、国際潮流を踏まえつつ、すべての化学物質・放射性物質を視野に入れた安全性評価・管理等を推進します。
228 大気・水・土壌等の安全・安心な環境の保全
水や大気などの環境保全については、新たな課題である微小粒子状物質(PM2.5)や漸増・広域化の傾向にある光化学オキシダント、湖沼及び内湾の底層の貧酸素化などへの対応が求められており、これらの課題に取り組みます。特に自然の恵み豊かな沿岸域(いわゆる「里海」)の創生やそれぞれの湖沼の特色に応じた豊かな湖沼環境の再生を図ります。また、「海岸漂着物処理推進法」に基づく取り組みを推進するとともに、重点的な地区における対策を進め、海洋環境の保全を図ります。さらに、工場跡地等の土壌汚染について、「改正土壌汚染対策法」に基づき対策を着実に進めます。
229 公害健康被害対策等の着実な実施
水俣病問題の解決、アスベスト被害者の救済やアスベスト対策に取り組むなど、公害健康被害対策を着実に実施します。
また、国内における毒ガス弾問題について、環境調査など必要な対策を引き続き推進します。
Ⅸ.地方の重視・地域の再生
地方・地域の元気なくして国の元気はありません。自民党は、自らの発想で特色を持った地方・地域つくりができるよう地方分権を推進します。地域経済を支える中小企業・地場産業を支援し、地域の経済・雇用・生活を守ります。
■1.地方行財政・地方分権
政権公約 : 230 ~ 235 (クリックで開閉)
230 地方分権の推進策
地方分権改革の当面の推進策として、①地方分権改革推進委員会の第3次勧告を踏まえ、義務付け・枠付けの見直しを実施、②地方公共団体の安定的な財政運営に不可欠な地方税、地方交付税等の一般財源を確保、③直轄事業を基幹的・広域的な事業に限定するとともに自治体との事前協議・情報開示の徹底などを基本として、直轄事業負担金制度を抜本的に見直します。
231 分権の推進に伴う地方の機能強化
国と地方の徹底的な議論が行えるよう、全国知事会など地方六団体の法的位置づけの明確化を図ります。また、地方分権の推進に伴い役割が拡大する地方議会の諸機能を充実・強化するとともに、政治活動との区別を踏まえたうえで、住民意思の把握などを含めた地方議会議員の職責・職務の範囲を法制化し、明確化することを目指します。
232 地方税財政の充実
地方財政の厳しい状況に鑑み、地方一般財源の充実・強化を図るため、税制の抜本改革に取り組む際には、地方消費税の充実、地方交付税の法定率の見直し、地方法人課税による地域間税源の偏在是正などを検討します。
これらにより、臨時財政対策債の増大を抑制し、財政の健全化を目指します。
233 地方への交付金拡充
「日本再生のカギは地方経済にあり」との観点に立って、十分な資金を確保し、地方の活性化を大胆に推進します。
まず、使い勝手が悪く、地方自治体からの評判も悪い「地域自主戦略交付金」(一括交付金)は廃止し、各府省に戻した上で大型の地域振興事業を継続できる交付金事業に充てます。
また、地方自治体が特色ある政策を実施できるよう、経済対策や雇用創出事業に活用できる交付金制度の創設を検討します。
234 大都市制度の見直し
都道府県と政令市などの二重行政による無駄、行政の肥大化による住民サービスの低下への懸念、基礎自治体のあり方など、大都市行政のあり方について、地方からの問題提起に真摯に対応するため、道府県において特別区制度を導入するなど、多様な新しい大都市制度を検討します。
235 小規模町村のあり方の見直し
人口の減少が続く中山間地の小規模基礎自治体においては、過疎対策などを充実させ、でき得る限りの支援策を取るとともに、支援のための新たな仕組みについて議論を進めます。
■2.中小企業対策・地域活性化
政権公約 : 236 ~ 257 (クリックで開閉)
236 中小企業基本法の改正と小規模企業基本法の制定
現在、中小企業基本法の定める線引きにより、各種施策の対象外となったり、逆に規模拡大の壁となる等、法制度が産業構造の変化に対応できていません。そのため、中小企業基本法を改正し、伸びる力のある企業が成長にメリットを感じ、伸びようとするベンチャーを含めた中小・小規模企業や分野に資金・人材が集まりやすくします。
また、地域経済の担い手である小規模企業は、資金繰り、海外展開、新規開業など様々な面で弱い立場に置かれていることから、小規模企業などに特化した支援が着実に実行されるよう「小規模企業基本法」を制定し、地域社会に活力を取り戻します。
237 新地方成長モデルの確立
地域がそれぞれの特色を持って経済成長を遂げることが日本全体の経済底上げにつながります。そのため、都道府県レベルでそれぞれ成長戦略を打ち立て、それに基づいて地域で新たな産業を創出し、雇用の拡大につながる「地域」「中小企業・農業」「事業革新」をキーワードにした新しい地方成長モデルを確立します。
そこで、時代のトレンド(グローバル、ICT、長寿、環境等)を取り込むため、都道府県で産学官の協議会を立ち上げ、決定された事業分野については当面5年間は人材召致等を含め国が支援を行います。
238 企業活動を支援し、地域に「雇用」を創出
地域の活力と独自性、そして「絆」を生む取り組みを進めるべく、『地域(中小・小規模企業)購入&再投資法』(仮称)の制定を目指します。具体的には、地域の預金を地域に還元するとの地域金融機関の基本的使命を踏まえ、地域への還元について一定の指標を設定します。
また、国及び国の出先機関、地方公共団体が公共事業の発注や物品及びサービスの調達等を行う際には、地元の中小企業の受注機会に最大限の配慮を求めるとともに、価格だけではなく「品質」に重点を置く契約の適正化を図ります。さらに、近年進出が著しい大規模小売事業者についても、地域からの購入と地場産品の後押しを定着させます。
239 資金繰りの確保・充実
東日本大震災の影響で景気の急速な落ち込みにより非常に厳しい状況にある中小・小規模企業に対して、その不況から脱出できる環境を整備し、更に、将来展望につながる資金を確保するため、「緊急保証」、「セーフティーネット貸付」などを大幅に充実・強化していきます。
特に、中小企業金融円滑化法の施行期限が到来する来年度以降も金融支援と経営支援を一体的に実施するなど、セーフティーネット機能を強力かつ実効的に果たす施策によって中小企業の資金繰りを徹底サポートします。
また、金融機関による「貸し渋り」、「貸しはがし」の実態と併せて中小企業金融の現状を把握し、求められる資金需要に的確に応えていきます。
240 公平・公正な取引環境の実現
頑張る中小企業が、大企業との取引において、不当な発注・値引き、契約を余儀なくされることのないよう、公平・公正な取引環境を実現します。「下請け代金支払遅延等防止法」・「適正取引推進のためのガイドライン」の運用強化、「下請け駆け込み寺」等の相談体制の強化を行います。
一方、大型店による地元小売業への影響(不当廉売や優越的地位の濫用)に鑑み、適正なガイドラインの運用を行います。
241 中小企業における技術開発及び「売れる商品」開発の支援
技術の進歩なくして企業の発展はありません。一方、中小企業単独での研究開発は、人材や資金面においても経営に大きな負担をかけてしまいます。そのため、ものづくりを支援する補助金を復活させるとともに、県などが持っている研究所や地域にある大学が中小企業と連携、研究・開発ができる体制整備を支援します。
中小企業が大きく羽ばたくには、「売れる商品」と「商品が売れる」ことが不可欠です。「売れる商品」を開発するには、「アイデア」とそれを生み出す「人材」は言うまでもなく、「売れる!」という「目利き」ができる人が必要です。したがって、「売れる商品」を発掘できる人材と「売りたい側」がマッチングできる環境を整備します。
242 地域から「日本全国」、「世界」への販促強化・支援
「売れそうなモノ」から消費者が求める「売れるモノ」の発掘・開発にチャレンジする地元企業や生産者等を官民あげて後押しし、各々の地域で全国的、世界的にも通じる産品作りに安心して専念できるよう応援します。
その際、地理的な側面を背景とした域外・海外からのビジネス・チャレンジに柔軟に対応できるよう、規制等の壁を除去していきます。それらに加え、地方から都会、地方から世界へと飛躍する販促強化のため、ワールドワイドなBtoC、BtoBマッチングサイトなどのICT技術の活用による実務のサポートや金融支援、販路・拠点等の早期整備を行います。
地域資源の発掘から試作品開発、商品化、販売までの一貫した支援体制により経済発展著しいアジアの需要を取り込むような、効率的かつ効果的な流通ルートを確立します。
243 中小企業の活性化、地域経済の発展につながる人材の育成・確保
地域経済の発展には、中小企業の発展は不可欠です。一方、中小企業の発展には、新しい製品や商品を開発し、さらに、その製品・商品を国内外に売り込んでいく環境を整備しなければなりません。特に、これらの研究開発や「セールス」を行う人材が重要であり、その育成・確保が企業経営の運命を担っていると言っても過言でありません。
我々は、こうした人材を育成する観点から、地域にある大学等の教育研究機関と中小企業との連携強化や中小企業が独自に人材の育成・確保を行える「人材育成研究会」(仮称)を設置し、人材育成の専門家が行政や教育機関と連携が取れる体制を整備します。
244 地方大学等と地域産業とのマッチング強化
地方大学や地域の工業高校等で学んだ卒業生を地元発のオリジナル人材として地域でその能力を十二分に発揮できるよう、商工会議所・商工会等の組織機能強化に向けた抜本的な対策を講じ、「地域のヒトは地域で育てる」体制を早急に整備します。これにより、学生・企業・地域の三者が共にWINWINの関係となれるよう、産学官民が連携して中小企業向け新卒者支援制度の創設等の支援を行い、高度な専門人材と地域産業とのマッチングを強化します。同時に、地元からの投資を促進させることで地方の研究機関と地元企業による技術革新や研究開発等の支援を強化し、地域独自で培った技術やノウハウを地域に還元できるサイクル作りを進めます。
245 商店街の活性化
「買い物難民」問題等を背景に、地域住民から商店街に寄せられる「地域コミュニティの担い手」としての期待はこれまで以上に高まっています。駅前や中心市街地等の賑わいを取り戻すことによって、地域経済の再生だけでなく、高齢化社会が進展する中で高齢者の方々にとって安心して生活できる地域のつながりが実感できる商店街の活性化等を目指します。
経営指導や商店街で起業・新業態開発への研修等とエンジェル税制を活用しての空き店舗の有効利用や公共交通機関と連結したアーケードや駐車場・駐輪場の整備、省エネ型街路灯の設置等、商店街の再生や中心市街地の活性化に向けた意欲的な取組みに対するソフト・ハード両面での支援を行います。高齢化や安全安心、環境等の社会課題へ配慮した街づくり(コンパクトシティ)と一体となった“身近で快適な”商店街づくりを進めます。
246 地域コミュニティの再生
地域の「きずな」を再生するため、町内会や自治会など地域に根ざした活動を行う団体等を支援します。各集落、小学校校区単位のコミュニティ活動や自治会またNPOなどの身近な団体活動を支援する『コミュニティ活動基本法』を制定し、地域内の活性化を図ります。
また、地方における人口定住を図るために、地域の様々な政策課題について、「集約とネットワーク」の考え方により、中心市と周辺市町村の相互連携を強化し、圏域全体を活性化します。
さらに、個性豊かで誇りある地域づくりに向けて、民間アドバイザー派遣等の人材支援を推進するとともに、地域の人材力の向上を支援します。
247 過疎地域対策の充実
わが党の主導により、『過疎地域自立促進特別措置法』が大幅に拡充強化されました。改正法には、過疎地域の方々から要望が大きかったソフト事業への過疎債の活用を盛り込み、医師確保やコミュニティバスの活用など過疎地の実情に即した対策ができるようにしています。
わが党は、過疎法を平成32年度末まで5年延長し、今後とも過疎対策に全力を尽くします。
248 郵政事業の新たな展開とユニバーサルサービスの確保
郵政民営化改正法に基づき、民営化の成果を国民が実感できる新たな事業の展開及び郵政三事業のユニバーサルサービスの確保を図ります。
249 IT遷都で地方経済活性化
中央官庁の人事、給与、会計など間接部門の業務システムを統合・一元化した上で、ICTの利活用による地方移転や業務自体の民間委託を進めます。業務システムの効率化と地方移転によって、中央官庁の人件費を削減する一方、地域ICT産業の振興を図ります。
中央官庁が率先して地方移転に取り組むことで、東京に一極集中している民間企業の業務システムが地方に移転されることを後押しします。
250 総合的な交通体系の整備
「生活の足」となる地域公共交通の確保と利便性を向上するため、適確かつ計画的に推進する枠組みを作るとともに、交通事業者や地方自治体など関係者の取り組みへの支援など財政上、法制上の措置等の施策を実施するとともに、羽田-東京-成田間を結ぶ環状リニア等、横田の空域返還等、空港・港湾や高速道路等の基幹ネットワーク作りを着実に進め、国際競争力に資する総合的な交通体系を整備します。整備新幹線は、既着工区間について早期完成に万全を期するとともに、工事実施計画の認可が行われた新函館―札幌間、金沢―敦賀間、武雄温泉―長崎間については、工期の短縮を図るとともに、並行在来線に関わる地方負担の軽減を図ります。また、北陸新幹線については、大阪までの延伸を検討します。超電導リニア(超電導磁気浮上式鉄道)については、整備計画の決定を受け、東京―名古屋間の着工に向けた環境影響評価の手続きを早急に終え、平成26年からの着工を目指します。建設にあたっては、「地産地消」の考え方の下、地元事業者が主体的に参画できるような環境を整備します。また、東京―大阪間の早期全線開通を目指して、あらゆる手段を講じ推進します。さらに、リニアを効果的に活用するためのアクセス整備や企業誘致のための優遇制度等を創設するとともに、超電導リニア技術の輸出を支援します。フリーゲージトレイン(軌間可変電車)についても、その実現を目指します。
モーダルシフトの推進やCO2削減の観点から、交通体系全般を見直します。
251 世界と競争できる航空・空港環境及び港湾機能の整備
航空自由化(オープンスカイ)を戦略的に進めるとともに、アジア諸国など世界と競争できる環境を整備するため、航燃税の更なる引き下げ、着陸料・航行援助施設利用料の低減、規制改革等、諸外国とのイコールフッティングを目指します。さらに、国民生活に必要な路線ネットワーク網を維持します。また、地域の経済・産業を支える港湾において、世界標準の大型船舶に対応した港湾機能の確保、アクセスの向上、港湾運営の効率化、サービス水準の向上、産業の立地環境の整備等や国管理への移行などを図り、国際競争力の強化を目指すとともに、わが国産業のライフラインとしての港湾の災害対応力の強化を目指します。
252 観光産業の再建・強化
東日本大震災以後、風評被害や訪日外国人の激減等により大打撃を受けた被災地を中心とする日本全国の観光地やわが国の観光産業を再建・強化するために官民を挙げて国が主導的に全力で取り組みます。官民協働して国内旅行の気運醸成に取り組むとともに、ビジット・ジャパン・キャンペーンの高度化や査証(ビザ)発給手続きの円滑化・入国審査の迅速化、双方向の国際観光交流の促進、国際会議等の誘致・開催の推進により「観光立国」を実現します。また、休暇を取得しやすくするとともに、無電柱化の集中実施や景観に配慮したまちづくりなどによる魅力ある観光地の整備と観光産業の育成により、観光を通じた地域活性化を進めます。また、高速ツアーバスに係る事故の再発防止・利用者の信頼回復に努めます。旅館・ホテル等のNHK受信料の大口契約について検討を進めます。
253 地方の良質な建設産業を守り「未来への投資」を実施
地域の発展と安全を支える良質な建設業を守り、将来のために必要な成長基盤や安全・安心基盤である社会資本の前倒し整備を進め、地域の特色を最大限に活かす国土の均衡ある発展を目指します。また、国土の管理上必要な土地は、国有地や公共団体用地として取得できるようにするとともに、日本の水源林を守るための法整備を図ります。さらに、公共分野における民間の力をさらに活用し、地域の活性化を図ります。わが国の優れた土木・建築技術と交通システムや水ビジネス等を海外に輸出し、世界に貢献します。
254 公共工事現場における適正な賃金等を確保
地域の発展と安全を支える良質な建設産業の健全な発展のため、公共工事現場において適正な資材・賃金の確保を図り、建設労働者、建築職人の生活を守ります。そのためにも、入札制度や最低制限価格の見直し・改善を図り、不当なダンピングによる弊害、不良・不適格業者を排除出来るよう公共調達の抜本的な改善を図ります。災害対応や冬期の除雪作業など、建設業が地域に果たしている公益的役割を正しく評価し、地域建設産業の健全な発展を目指します。
255 住宅の資産価値を高め、ライフステージに応じた住まい方を推進
あらゆる産業に経済波及効果のある住宅を重要な国富として位置づけ、総合的な住宅税制・融資等支援制度、規制緩和等を通じ、住宅を資産として残せる「ストック社会」を実現します。負担力の低い若年者を含めたライフステージの各段階や多様な働き方・暮らし方に応じたゆとりある住環境を獲得できるよう、長期優良住宅(200年住宅等)の供給、既存ストックの資産価値を維持増大させる耐震・省エネ・バリアフリー化などのリフォーム、住宅団地へのエレベーターの設置の推進、住み替え・中古流通のための市場環境整備を進めます。エネルギーの効率化やCO2の削減を図るスマートハウスの普及に努めます。また、少子・高齢社会に対応し、子育て世帯や高齢者等が安心して生活できるよう、都市再生を進めつつ、子育て施設やケア施設と住宅の併設・近接を推進するとともに、安心して生活できる賃貸住宅や2世帯・3世帯住宅の供給を推進します。また、国産材の活用を通して、地域の環境整備や経済の活性化を図るとともに、中小工務店の技術力向上の支援や過度な負担を軽減するため各種制度における書類・手続きの簡素化を徹底します。
256 抜本改正した離島振興法に基づく対策の充実
ソフト事業交付金の創設など、わが党の主張を十分に反映させた『改正離島振興法』に基づき、離島振興の取り組みの充実・強化を図ります。
離島航路が本土における国道と同じ役割を果たしていることを踏まえ、『離島航路航空路整備法』の制定により離島住民の交通手段(航路・空路)を確保するための国の役割を明確にし、人流・物流面での格差是正を実現します。また、高校の無い島から本土や他の島の高校に進学せざるを得ない場合に、居住費、通学費に対する財政支援を実現します。さらに、妊産婦支援などの離島医療対策、漂流・漂着ゴミ対策を行うとともに、情報格差の是正に取り組みます。
奄美、小笠原や一般離島について、補助率のかさ上げや本土と離島間の石油輸送コストの支援措置を講じます。
また、国境離島は、外洋に面しわが国の領域、排他的経済水域等の保全、国防上重要な役割を果たしていることを踏まえ、『特定国境離島保全・振興法』の制定により、港湾・空港の十分な整備等による安全・治安の確保、定住促進のための産業振興などの支援を強化し国境離島地域の保全と活性化を図ります。
257 新たな沖縄振興2法に基づく“強く自立した沖縄”の実現
『沖縄振興特別措置法』及び『沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律』の沖縄振興2法の改正法案が、一括交付金の拡充・使途弾力化・一部基金化、基地地主の土地譲渡所得の5,000万円控除等、わが党の主張を十分に反映するかたちで修正・成立しました。
今後、2法に盛り込まれた、国際物流拠点産業集積策や観光産業・文化等の振興策等を十分に活用して、沖縄がわが国21世紀の成長モデルとなるように“強く自立した沖縄”の実現に取り組みます。
また、当初の“ベスト・イン・ザ・ワールド”との理念に沿って開学した、沖縄科学技術大学院大学を国際水準の研究・教育拠点にします。さらに、那覇国際空港の第二滑走路建設の重要性に鑑み、早期実現を目指します。
Ⅹ.農林水産業
農林水産業が果たしている役割は、食料生産のみならず国土保全や集落機能の維持など極めて多面的です。自民党は、地域社会の核である農山漁村を守るために、構造改革を進めながら、農林水産業の高付加価値化及び農商工連携を図り、競争力ある「攻めの農林水産業」を展開します。
政権公約 : 258 ~ 298 (クリックで開閉)
258 農林水産業の多面的機能を評価した「日本型直接支払い」の創設
『多面的機能新法』の制定により、国土保全や集落機能の維持など農林水産業や農山漁村のコミュニティが果たしている多面的機能を正当に評価し、水田のみならず、畑地も含め、農地を農地として維持することに対価を支払う日本型直接支払いの仕組みを法制化します。更に、農業における中山間地域直接支払いや農地・水管理支払、林業における森林整備地域活動支援、水産業における離島漁業再生支援などの仕組みを抜本的に充実・強化します。
259 『担い手総合支援新法』の制定で夢と希望と誇りを持てる農業を実現
農家が望んでいるのは「戸別所得補償」という名の一過性のバラマキではなく、「再生産可能な適正価格」と「安定した所得」の両方です。米価を引き下げる戸別所得補償を全面的に見直し、全国一律ではなく、名称も変え、地域の自主的な努力を踏まえ、コメに加えて麦・大豆、畜産、野菜・果樹など複合的に取り組む農家や法人、集落営農など地域の実情に応じた多様な担い手の経営全体を支えます。このため、新規就農支援、経営移譲の円滑化や流した汗が所得増大につながる新たな「経営所得安定制度」を中心とする「担い手総合支援」を構築します。
260 東日本大震災及び福島原発事故の農林業補償救済等に全力
東日本大震災及び福島原発事故の農林業補償救済等に全力を挙げます。国の責任を前提として、除塩、ヘドロの除去、農地の再生、施設園芸、合板工場等の復活に補正予算を含め万全の体制を組みます。原発事故の東電による賠償については仮払い法に基づき速やかに国による仮払いを進めます。また、基金を設置して県・市町村の独自の支援上乗せ対策を実現します。コメ、畜産、野菜・果樹等についての放射性物質の検査体制及び除染を徹底し、風評被害を防止し、消費者へ安全な食料の提供に万全を期します。放射性物質の食品安全基準値の見直しにも伴う対策について万全を期します。
261 「平成の農地改革」で攻めの農業を実現
利用重視へと抜本改正した農地法による「平成の農地改革」を強力に実行し、担い手への農地集積を加速化するため、耕作放棄地の解消に努め、農地をフル活用するとともに、水田汎用化など土地改良事業費の復活等により生産効率を高め競争力ある“攻めの農業”を実現します。
262 国産農林水産物の消費と輸出を倍増
食料安全保障や食の安全・安心、循環型社会実現のため、「売り手によし、買い手によし、世間によし」の地産地消、農林水産業の高付加価値化や農商工連携を強力に推進し、国産の消費を拡大し、輸出を倍増します。そのための予算を戦略的に拡充するとともに、コメ、肉、果実、水産物等を海外へ積極的に売り込むため、全国的な品目別の輸出振興組織を設立します。
263 都市農業の保全と振興
子どもからお年寄りまで、都市に住む人々に新鮮な食料と災害時の避難場所となる安全で快適な生活環境を提供している都市農業の継続と農地保全が図られるよう、今後の都市計画制度見直しの中で法律、税制などの整備と振興施策を充実します。
264 大豆・麦対策の充実・強化
みそ・しょうゆ・とうふの材料となる大豆、めん用小麦などは日本人の食生活に欠かせない食料でありながら、その大半を輸入に頼っています。使い勝手がよく地域の自主性を生かした「産地づくり交付金」の復活強化など、畑作、水田転作の両方で政策を総動員し、大豆等の増産に向けた取り組みを強力に推進します。また、需要が高まっている国産そばの生産振興に取り組みます。
265 野菜の経営安定対策の充実・強化
安全・安心で多様な国産野菜を消費者に届けるための生産・加工・流通・販売・消費のシステムをつくります。そのために、現行の価格安定制度の見直しを行い、需給と価格の安定を図り、多様な野菜農家の経営を支える経営安定制度をつくります。さらに、規模拡大した産地や専業的な経営体については、それぞれの作物の特性を踏まえた所得安定対策を講じます。
266 果樹の経営安定対策の充実・強化
高品質な果実の生産に向けた基盤整備や収入補てんを含めた改植対策を強化するとともに、果汁等加工仕向けの制度を充実し、需給と価格の安定対策を強化します。また、加入率の低い共済制度を加入しやすく充実したものにし、多様な果樹農家の経営を支える経営安定対策をつくります。
267 てん菜、サトウキビ等甘味資源対策の充実・強化
てん菜による輪作体系の推進や離島における基幹作物であるサトウキビの増産対策、でんぷん原料用かんしょ・ばれいしょについて、経営と所得を確保する甘味資源制度の充実・強化を図ります。
268 お茶、花き対策の充実・強化
わが党が主導して成立させた『お茶の振興法』により、生産基盤の整備、需要に応じた生産の振興、加工流通販売体制の整備、消費の拡大、輸出の促進に取り組みます。また、放射性セシウムの除染、風評被害の一掃に万全を期します。需要の増加が見込まれる花きの新品種開発や生産・流通・消費の振興を図ります。
269 畜産・酪農経営安定化対策の充実
畜産・酪農の経営安定を図るため、畜種別・地域別・経営体ごとの特性に対応した、畜産・酪農生産者補給金制度の充実、国産食肉及び乳製品等の消費拡大等に取り組むとともに、経営安定資金の充実強化を進め、現場の声に即した畜産・酪農対策を確立します。
270 飼料対策
世界的な需給ひっ迫で高止まりしている飼料穀物について、積極的な備蓄を行い配合飼料価格安定制度を抜本的に見直します。あわせて、飼料自給率の向上のため、飼料国産化のためのコントラクターへの助成、廃棄される食品の再利用による「都市農場」の実現を図ります。
271 家畜防疫対策
わが党が主導して改正した「家畜伝染病予防法」に基づき、口蹄疫、鳥インフルエンザ、BSE、豚コレラなどの対策に全力を尽くします。
272 再生可能エネルギーの大々的な展開
原発依存を見直し、中山間地域における小水力発電や間伐材等を活用したバイオマス発電など再生可能エネルギーの取り組みのための固定価格買取制度も活用した発電施設整備等を推進します。
273 食の安全・安心、食育の推進、都市と農山漁村の共生・対流
生産履歴の確認が可能なトレーサビリティーの対象を拡大するとともに、食品表示の義務づけの拡大と厳格化を進めます。食に対する感謝の念を育み、自ら食を選択できる能力を身につけるための食育を国民運動として展開します。また、都市と農山漁村の住民が共に行き交う共生・対流を強力に推進します。
274 鳥獣被害対策の強化
全国で拡大している鳥獣被害に対し、わが党が主導して成立させた『改正鳥獣被害防止特別措置法』により、鳥獣の種類や地域の特性に応じて自治体が行う有効な駆除対策を強力に支援します。また、有害鳥獣に関する知識や捕獲方法などの普及に努め、猟友会を中心とする実施隊の設置を促進します。
275 森林整備体制の抜本改正
切捨間伐を一部しか認めない現行の森林経営計画による全国画一的な森林管理方式を抜本的に見直し、造林・間伐や路網整備における森林所有者の負担を軽減します。緑の雇用や森林組合の充実強化、外国資本等などによる森林買収を防止するための森林所有者の明確化を図ります。特に、木材需要拡大のためにも森林整備加速化・林業再生基金を拡充します。また、森林経営計画の申請事務手続きの簡素化を図るとともに、路網整備は地域の実態に応じて対応するよう推し進めます。
276 山村振興対策の抜本的強化
山村地帯は、人口減少と高齢化の進展に歯止めがかからず、耕作放棄地の増大、森林の荒廃、鳥獣被害の増加、集落としての機能低下に加えて、住む人々の医療、買い物などの生活環境も危機に瀕しています。そうした状況を十分踏まえ、山村振興法を抜本的に改正し、「山村地域をとことん守る」方策を強力に進めます。
また、水源のかん養等森林の多面的機能の維持増進の観点から、森林経営意欲を失った森林所有者の森林を公的に管理するための施策を進めます。
277 森林吸収源対策のための安定財源確保
国土保全や地球温暖化防止に大きく貢献する森林・林業を国家戦略として位置づけ、CO2吸収源対策として造林・間伐等の森林整備を推進するとともに、これに必要な国及び地方の財源を確保します。また、森林環境税の創設、地球温暖化対策税の森林吸収源政策への活用のため、全力で取り組みます。
278 森林・山村維持の直接支払い制度の創設
「森は国民全体で守る」ことを基本に、山村地域の活性化を図り、厳しい環境下におかれている森林の経営と維持を将来にわたり持続可能なものとするために、森林・林業の多面的機能を評価した山村・環境・水資源保全のための直接支払い制度を創設します。
279 木材価格安定対策の強化
木材価格を安定させるための新たな制度や木材需要拡大のための新たな制度を総合的に検討します。また、条件不利地域での切捨間伐や路網整備の先行実施など雇用にも配慮した供給調整を行います。
280 国産木材の利用促進と木の文化の普及
国産木材の自給率を大幅に向上させるため、『木材利用促進法』により公共建築物や公共土木分野において国産材の利用を積極的に促進するとともに、木造建築基準の見直しを図ります。また、震災復興住宅や災害公営住宅への国産材の積極的な利用を進めます。さらに現行の省エネ住宅エコポイントに加え、国産材利用エコポイントを創設します。
わが国が誇る木の文化の価値の幅広い発信や木育の推進、瓦やイ草などの国産材料を使った安らぎのある和風住宅の普及推進を図ります。
281 木質バイオマスの利用促進
山村地域の雇用拡大、エネルギーの安定供給をはじめ、山村地域の活性化を図るために、木質バイオマス利活用施設を整備し、木質バイオマスの利用を推進します。
282 災害に強い森づくり
地滑り、山崩れなどの自然災害から国民の生命と暮らしを守るため、災害に強い森林づくりを目指します。
283 違法伐採対策の強力な取組み
グリーン購入法による合法木材の使用を徹底するなど、違法伐採対策の取り組みを強力に推進します。また、国内林業を圧迫する高水準の円高を是正し、木材・木製品関税率を現行堅持します。
284 放射性物質に汚染された森林における林業対策
放射性物質に汚染された森林の今後の経営・施業にしっかりとした支援・補償を進めます。
285 東日本大震災及び福島原発事故からの水産業再生の加速に全力
東日本大震災及び福島原発事故からの水産業再生の加速に向け、全力で取り組みます。漁船・漁港・養殖施設など漁業生産基盤はもとより、水産加工施設や冷蔵施設・製氷施設等、関連産業施設の復旧・復興を、国がしっかりと支援するための予算措置を講ずるとともに、地域の実態に応じた対策を講じられるよう基金を設置します。併せて原発事故による出漁自粛などの直接被害や風評被害に対する賠償を速やかに実施するとともに、二重ローン対策など水産業の経営再建を全力で支援します。
また、太平洋や海底土の放射線モニタリングを徹底します。
286 漁業者の所得を確保
漁業者の経営・所得安定をはかるため「漁業共済制度」、「積立ぷらす制度」をさらに拡充するとともに、意欲ある漁業者は誰でも加入できるよう加入要件を抜本的に見直します。併せて持続的発展のできる質の高い漁業となるよう日本版水産エコラベルの普及と水産物のブランド化を支援し、誇りと意欲をもって漁業経営を継続できる浜値となるよう、漁業者が魚の値決めに関与できる仕組みを工夫します。
また、漁業経営の一層の健全化に向けて取り組む漁業者が、必要とする資金を迅速かつ円滑に融通できるよう融資制度を改正するとともに、保証制度についても無担保・無保証人でも活用できる制度を拡充し、漁業者のセーフティーネットを構築します。
287 漁師になろう!漁業・水産業への新規就業者を支援
地方の基幹産業である漁業・水産業に新しい力を注入し、漁村を活性化します。このため、新規就業希望者への細やかな情報発信を行える体制の構築を支援します。また、現場研修及び講習を行う漁業協同組合などや水産関係団体・企業など受け入れ機関の体制強化に向け国による支援の拡充・強化を図ります。具体的には、研修期間を実質2年間とし、希望者へはさらに1年間延ばし、その間、家族も安心して暮らせるよう、住居・生活費に見合う給付を行います。
288 燃油等高騰対策の推進
価格変動する燃油、養殖餌料の価格高騰に脅かされることのない安定した漁業経営の確立をはかるため国による助成を拡充し、異常高騰時にも速やかに漁業経営コストの上昇を抑制できるよう、「漁業経営セーフティ―ネット制度」を柔軟に発動できる仕組みに抜本的に見直します。また、漁業経営の安定のための漁業用A重油・軽油の免税・還付措置は今後も継続します。
289 漁船漁業の再編と規制の緩和
漁船漁業の生産構造を資源管理と経営が整合するよう再編を行い、老朽化した漁船には省力・省エネなどエコにも配慮した代船建造ができる新たな支援策を講じます。また、漁船の規格や従事者の資格などの規制については、安全な航行、操業が可能となっている現状を踏まえた見直しを行い、現在の技術水準に見合った規制緩和を積極的に進めます。
290 水産物の消費拡大と地産地消の推進
学校給食などへの水産物の供給をはじめとした地産地消の取り組みを一層充実強化するとともに、教育現場での体験漁業の導入など、子ども時代から魚に親しむ食生活へ向けた取り組みを進めます。水産物供給の橋渡し役となるコーディネーター制度の確立を目指します。併せて、未利用魚の活用や水産物消費拡大に取り組む水産加工業者に対しても原料確保、加工技術開発、販路の拡大・促進など意欲的な経営ができるよう支援します。
291 水産物流通の重要な拠点である卸売市場等の機能強化
生産者と消費者を結ぶ重要な拠点である卸売市場の機能強化を図り、消費者との直接対面による最前線での販売を営む水産物小売商等に今後も安定した経営環境の下で水産物消費拡大に取り組んでいただくよう、一貫流通経路(サプライチェーン)構築にあたっては、物流、情報流に関わる施設整備、高度衛生管理基盤の整備、安定経営対策などへの支援を強化します。
292 衛生管理の行き届いた水産業の構築で水産物輸出の促進
生産から加工・流通に至るまでEUなど輸入に高い安全性を求めている国等への輸出にも応えるため、HACCPシステムの導入・普及や当該システムに応じた加工・流通施設整備を積極的に支援するとともに、輸出に伴う検査・手続きを簡素化し、地域と水産業の振興、魚価の安定にも資する水産物輸出を促進します。
293 広域的資源管理による安定した水産物の供給体制の整備
漁場整備と栽培漁業を食料安定供給のための社会的インフラ事業として位置づけ、国直轄のフロンティア漁場整備事業と種苗放流事業などを地域の実情に応じて積極的に進め、広域的に資源管理計画を着実に推進し低位水準の水産資源を回復させ、安心して漁業経営ができるよう支援します。
加えて、きれいな海から水産資源も豊富な豊かな海への「里海」づくりも推進します。
また、新しい技術の導入を含め、環境に配慮しつつ収益性も重視した多様な養殖漁業経営の展開を支援し、わが国固有の急峻な地形と豊かな河川・湖沼での漁場環境の改善や稚魚放流を行うなど、内水面漁業振興対策を進めます。
294 国民の安全と国益を守る毅然とした水産外交の実行
公海などでの過激な環境保護団体等の人命にも関わる不当な妨害活動、不当な圧力による漁獲制限に対して、独立国家として断固とした対応を行います。カツオ・マグロ・鯨など回遊性水産資源の持続的利用を効果的に図れるよう、わが国がリーダーシップをとって科学的調査に基づいた国際的な資源管理や捕鯨問題にも取り組むなど、国民の安全と国益を守る毅然とした外交交渉を行うとともに、ODAなど国際協力を通じた海外漁場開発も進めます。
特に調査捕鯨については国家事業として実施する体制を整えます。
WTO交渉やEPA・FTA交渉など貿易交渉においては、国益を第一に先達が築き上げてきた実績と誇りを守る国際ルール作りに尽力し、地域において重要な基幹産業である水産業の国際競争力強化に努めます。
295 漁業者に責任のない経営難には国が責任
国際条約等による規制に応じた資源管理のための漁獲制限等には、知事許可漁業等を問わず、可能な限り漁業経営への影響が最小となるような配慮を行い、漁業所得が減少する漁業者へは経営安定支援を「国際減船」への支援並みに行います。
食料自給率の向上と消費者へ良質な水産物を安定供給することを求められている漁業・水産業の重要性を踏まえ、漁業者の責任でない国際的な景気変動などに伴う漁業・水産業をめぐる経営環境の悪化による過去の債務処理と健全な経営が行える財務体質へ改善する施策について、引き続き検討を進めます。
296 漁港などの強靭化、安全で豊かな漁村づくりの促進
漁港の衛生管理対策、エコ化を推進するとともに、地震、津波、台風などの自然災害に強く、安全・安心に配慮した漁港の整備や施設の老朽化対策を積極的に進めます。
小規模漁港の切り捨ては許しません。
併せて整備の遅れている生活排水の処理など生活環境の整った豊かで安全な漁村づくりを進めます。
297 水産の有する多面的機能を増進する「漁村地域直接支払制度」の創設
わが国の領土や国境の「防人(さきもり)」としての重要な役割や水産物の安定供給ならびに環境生態系の保全など、漁業や漁村のもつ多面的機能を増進するため、「離島漁業再生支援交付金」による支援が行われている離島なみの条件不利地域にある漁村へは、「漁村地域直接支払制度」を創設し、漁業集落の活性化を図ります。
298 有害生物の駆除と被害対策の確立
大型クラゲ、トド、アザラシ、ザラボヤ、グミ、カワウなど、想像を超える漁業被害を及ぼす有害生物や赤潮被害などについて、各種研究機関、わが国周辺の関係国とも密接な連携を行い、有害生物の発生メカニズムの早期解明を行います。早期の有害生物の撲滅など根本的な漁業被害発生の防止と軽減対策、有害生物発生や駆除作業に係る情報の関係漁業者への速やかな提供を行うなどの体制を整備します。
Ⅺ.政治・行政・党改革
自民党は、定数削減など国民の求める政治改革に前向きに取り組みます。
限られた人的・物的資源を有効に活用し、行政機能や政策効果を最大限向上させる真に国民のためになる行政改革を進めます。
政官の役割分担を明確にし、相互の信頼関係に基づく真の政治主導を実現します。
政権公約 : 299 ~ 319 (クリックで開閉)
299 国会議員定数の削減
衆議院議員の定数削減については、三党合意に基づき、選挙制度の抜本的な見直しについて検討を行い、次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行います。
300 ネット選挙の解禁
フェイスブック、ツイッター、ブログなどの普及にかんがみ、有権者への候補者情報の提供、国民の政治への参加意識向上等を図るため、インターネット等を利用した選挙運動を解禁します。
301 二院制のあり方の検討
憲法改正を前提に、わが国の二院制のあり方について検討を行います。
302 国会における秘密会の設置
国会において、外交・安全保障など機密保持が必要な案件の審議においては、国会議員に罰則付きの機密保持を義務付けて議論を行えるよう制度を整えます。
303 国会事務局の効率化・スリム化の実現
国会事務局の改革として、部局の再編などの組織改革や国会の施設・資産の売却を含む見直しを行い、無駄を徹底的になくし、効率化・スリム化を実現します。
304 政治資金の透明性の確保
政治資金のより一層の透明性を確保します。労働組合等の政治活動の収支の透明化を図ります。また、幅広く国民の支援を求めるため、税制上の優遇措置を拡充するなど、個人献金等の促進を図ります。
305 「真の行政改革」の推進
これからの時代にふさわしい行政の在り方を希求し、その実現に努めます。バラマキ政策の尻拭いのための財源の捻出や増税の言い訳の道具にしか過ぎない見せかけの「行政改革」は、むしろ行政をイビツにします。限られた人的・物的資源を最も効率的、機動的に活用し、行政機能や政策効果を向上させるという本来の目的に沿った行政改革を断行します。
また、政官の役割分担を明確にし、相互の信頼の上に立った本当の意味での政治主導を目指します。行政が民間の感覚や常識から遊離しないようにしっかり監督すると同時に、行政の能力を最大限に発揮させることも政治の責任です。
306 中央省庁改革
平成13年の省庁再編の主な目標は、官邸機能の強化と縦割り行政の弊害除去でした。10年余りを経過した現在、この目標が達成できているのかを検証します。さらに、この間の行政需要の変化や今後の動向を踏まえながら、国家統治の観点から国と地方が果たすべき役割の見直し、効率的で機動性、柔軟性ある行政機構を目指し、行政機能の地方移転を含む省庁再々編といった“これからの「この国のかたち」”をつくる中央省庁改革を政治主導で実行します。こうした行政を効率化・最適化するための改革の計画立案、実行、さらに改革進行の監視と定期的な機構や制度の点検をするため、現在、政府内で多くの組織に分かれている行政改革機能を集約した「行政改革推進会議」を重要政策会議として内閣府に設置します。改革計画は、会議発足から1年以内に総合的、戦略的なものとして立案し、3年以内に立法措置を行います。
307 ムダ撲滅の推進
政治や行政に対する国民の信頼を取り戻すため、政府の不要不急・無駄遣いを一掃すべく、あらゆる角度から制度や事業の意義や効果を不断に総点検し、歳出改革をゆるぎなく進めます。
308 公務員制度改革
国家公務員制度については、「国家公務員改革基本法」を踏まえて、国民の要請に応え得るという視点、優秀な人材が国民のために働くことに意義を感じられるという視点から、能力・実績主義に基づいた評価による信賞必罰の処遇と人事を厳格に実行し、真に頑張る者が報われる制度を確立します。そのため、幹部職への抜擢など、能力・実績主義に基づいた評価を厳格に人事に反映させ、昇任・昇給、降任・降給を厳正に実施し、連続3年間「不良」の評価の場合には、分限免職処分とするほか、人事評価の公平、公正性の担保のために評価者の責任・役割を明確化し、評価者訓練の実施などを進め、不公正評価の際の処分について明確にします。
また、年金の支給開始年齢の引き上げに伴い定年退職者が無収入となることがないよう再任用制度の拡充を当面の対応措置とし、将来的には65歳まで定年を延長します。
退職手当を含む給与体系については、全体を抜本的に見直します。特に、幹部公務員の給与を本俸と役職手当に区分することで、役職定年後の異動や降任・降給をスムーズにさせます。
採用制度については、中途採用や官民交流の促進を含め、少子世代の中での人材確保難を踏まえた抜本的見直しを検討します。
幹部候補を育成するシステム等の検討を進め、幹部人事制度を創設し、幹部人事を一元的に行う「内閣人事局」を設置します。地方公務員についても、再就職規制の強化、能力・実績主義による人事評価の導入など、国家公務員の制度改革と同様の改革を実施します。とくに、給与については民間準拠を徹底します。
309 国家公務員の年齢構成の是正
公務員の年齢構成は、「天下り」禁止による定年までの勤務化や定員の純減、新規採用の抑制が続いたこと等によって、高齢化が進み逆三角形化しています。今後、雇用と年金の接続等による高齢層の増加が顕著になると、高齢化は益々進みます。したがって、組織の活力を維持・向上させるには、将来の国家像を見据えた計画性を持った施策が必要です。
そのためにポストごとの役職定年制や早期希望退職優遇制度等を導入します。
民主党政権の無定見な新規採用の大幅抑制は、到底容認できません。
310 会計検査院改革
公金の不正使用や無駄遣いを防止し、公務員の責任を明らかにします。このため、「会計検査院法等の一部改正法」を成立させ、会計検査院の事務・権限を拡充し、不当事項の是正等の促進を図り、予算執行職員の責任のあり方を明確にします。同時に裏金作りを防止するための罰則を整備し、公務員による不正な資金の保管を防止する「国家公務員等による不正資金保管を防止するための虚偽行為処罰法案」の成立を目指します。また、会計検査院が独立性を持ち、しっかりとチェックできるよう推進していきます。
311 独立行政法人改革
独立行政法人制度は、行政内の企画立案部門と執行部門を分離し、行政の中枢に企画立案部門を集中させることでその能力を向上させ、執行部門を独立行政法人化することで業務の効率性と質の向上を図るという目的で設計されたものであり、その本来の趣旨に則り、さらなる制度改革を行ったうえで維持します。
基本的には、国が独立行政法人に対して求める使命を明確かつ具体的に示し、厳しい財政事情を踏まえた支出の最小限化の中で、法人の工夫と努力による業務の選択と集中、内部組織や給与水準の見直しなどを進めるとともに、その効率化努力によってもたらされた資金を法人本来の使命のために活用することなどを確保します。
独立行政法人は行政の執行部門といっても、多種多様な業務が存在するため、業務の性格や性質に合わせた制度にする必要があり、特に研究開発関係は、総合科学技術会議を活用して省庁の縦割りにとらわれない整理・統合を目指します。
評価については、評価項目の必要性を精査して「評価疲れ」を防止するとともに、業務の達成度合いと効率化度合いに分離します。さらに、それぞれの業務は、政策との関連が強いことから、総務省の「評価・監視」の対象とします。
また、行政の企画立案機能を一層向上させるため、いまだ国に残存する執行部門の独立行政法人化をさらに進めます。
312 公益法人の新制度への移行
平成20年12月よりスタートした新たな公益法人制度については、移行期間の5年間でスムースに移行できるよう引き続ききめ細かな対応を行います。また、公益法人への委託等は廃止することとし、その中で必要不可欠な業務についてのみ、低コスト、高水準を追求しつつ、国または独立行政法人において行うこととします。
313 「天下り」の根絶
「天下り」を排するには、そもそも「天下り」が必要ない公務員制度を構築し、国家公務員が、国民全体の奉仕者として真に公務に気概を持つことができる仕組みが必要です。
そのために、定年まで意欲的に勤務できる環境整備として、役職定年制の導入や専門スタッフ職の拡充のほか、60歳定年から年金支給開始までの収入の空白期間を回避するため、再任用制度の原則化を進めます。そのうえで、現行の再就職規制について、渡り・裏下りも含め厳格に運用し、再就職に関する国民の疑念を払拭します。
さらに、「各府省による再就職あっせん禁止」と「元公務員による働きかけ禁止」の違反については、再就職先の団体や企業等も対象とする両罰規定を新たに導入します。また、違反者については、氏名、所属先、違反内容等を公表します。
314 地方行革の推進
地方公務員の地域における民間賃金と同水準となるような給与の適正化、市場化テストの積極的な活用による公共サービス改革の推進及びそれに伴う組織改廃時の分限免職等による定員削減など、地方行革を推進し、総人件費を削減します。
一方で、成長分野の産業への転職のための職業訓練・再就職支援を強化します。
315 地方公務員の政治的行為の規制
地方分権の推進にあたっては、行政の担い手である地方公務員が住民全体の奉仕者であることを自覚し、政治的中立性を保持していくことが不可欠です。そのため、地方公務員にも、国家公務員と同様に罰則を附し、一定の政治活動を規制する地方公務員法の改正を行います。
316 人事院勧告制度の尊重
人事院勧告は、国家公務員において憲法上の人権である労働基本権が制約されていることの代償措置として、国家公務員に対し、適正な給与を確保するという重要な機能を有するものであり、政府として人事院勧告を尊重すべきことは当然のことです。
しかし民主党内閣は、公務員の労働組合に団体交渉権、団体協約の締結権を付与しようとして、人事院勧告を尊重していません。これはまさに民主党内閣の責務遂行の停滞及び労働組合至上主義の一例といえます。
平成23年度は、復興財源の確保として、人事院勧告分0.23%を含む平均7.8%の引き下げを行いましたが、これはわが党の提案により実施したものです。
平成24年度の人事院勧告についても、民主党内閣は再び先送りを決めたため、わが党は、勧告を実施するための議員立法をまとめ決定しました。
わが党は、国家公務員と民間企業の給与の格差解消を図り、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保するとともに地方公務員にも関連する人事院勧告を尊重します。
317 政党基本法の制定
政党の定義、機能、綱領、資金等についての原則を定める政党基本法を制定し、透明性の高い政党運営を国民に約束します。
318 公募制度の充実、特別職員制度の導入による最良の候補者の選定
候補者選定にあたり、常に最良の候補者が選定できる仕組みを整えます。公募制を原則とするとともに、予備選(予備選規定の検証・検討)の積極活用により、候補者選定に党員及び有権者の公平公正な意思を反映させます。さらに、世襲候補の制限を厳格化するとともに小選挙区候補者の年齢制限を引き下げます。
また、幅広く将来性のある人材を求め、人材を公募するだけでなく、候補者になり得る人材を育てる「特別職員制度」を導入します。国及び地域の将来を担う人材を発掘・育成する中央政治大学院と地方政治学校が連携し、各級選挙候補者の発掘・育成を行います。
選挙に立候補する場合の休暇、議員活動中の休職及び議員任期終了後の復職を可能にする労働法制等を整備し、国民の積極的な政治参加を容易にします。
319 国民本位の政治を実現
前回の総選挙後、「ふるさと対話」や「青年・女性局全国キャラバン」、「ネットサポーターズクラブ」など国民の皆様と意見交換する機会を大幅に増やし、党運営や政策づくりに反映してきました。
また、中央政治大学院や地方政治学校の開催を通じ、幅広い分野の人々との交流にも努めています。
さらに、全国でオピニオン・リーダーとして活躍する1万人を超えるわが党系の各級議員との連携をさらに強化し、民意を尊重する国民本位の政治を実行します。
Ⅻ.憲法・国のかたち
日本人の手で、「日本の誇り、日本人らしさ」を示す新しい憲法をつくります。民主党の進める「夫婦別姓」・「人権委員会設置法案」・「外国人地方参政権」に反対し、地域社会と家族の絆、わが国のかたちを守ります。
政権公約 : 320 ~ 328 (クリックで開閉)
320 憲法改正国民投票法の施行
わが党は、結党以来、自主憲法制定を党是としています。占領体制から脱却し、日本を主権国家にふさわしい国にするため、憲法改正に向けて多くの提言を行ってきました。
この間、わが党は、平成13年に衆参両院に憲法調査会の設置、平成19年には憲法改正国民投票法を成立、併せて衆参両院に憲法審査会を設置するなど、憲法改正のための法整備などを実現してきました。
平成22年5月18日には国民投票法が施行され、憲法改正への道が大きく開かれました。
321 憲法改正草案を提唱
わが党は、サンフランシスコ平和条約発効(昭和27年4月28日)から60周年となる平成24年4月28日、すなわち主権を回復した日に合わせ、「日本国憲法改正草案」を発表しました。
前文で、主権在民、平和主義、基本的人権の尊重の三つの基本原則を継承しつつ、日本国の歴史や文化、国や郷土を自ら守る気概、和を尊び家族や社会が互いに助け合って国家を形成していることなどを表明しています。
天皇の章では、元首の規定、国旗・国歌の規定、元号の規定、天皇の公的行為の規定などを加えています。
安全保障の章では、自衛権を明定し、国防軍の設置を規定し、あわせて、領土の保全等の規定を新設しました。
国民の権利及び義務の章では、国の環境保全、在外国民の保護、犯罪被害者への配慮、教育環境の整備の義務などの規定を加えました。
地方自治の章では、地方自治体間の協力などを規定しました。
緊急事態の章を新設し、有事や大災害の時には、緊急事態の宣言を発することができることとし、その場合行使できるようにするとともに、国等の指示に対する国民の遵守義務を規定しました。あわせて、国会議員の任期の特例などを定めることができるよう規定しました。
改正の章では、憲法改正の発議要件について、これまで、両院で3分の2以上の賛成を必要とされていたものを、過半数と改め、緩和しています。
「日本国憲法改正草案」の主な内容
【前文】
・主権在民、平和主義、基本的人権の尊重の三つの基本原則を継承しつつ、日本国の歴史や文化、国や郷土を自ら守る気概、和を尊び家族や社会が互いに助け合って国家が成り立っていることなどを表明。
【第1章天皇】
・天皇は元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴。
・国旗は日章旗、国歌は君が代とし、元号の規定も新設。
【第2章安全保障】
・平和主義を継承するとともに、自衛権を明記し、国防軍の保持を規定。
・領土の保全等の規定を新設。
【第3章国民の権利及び義務】
・家族の尊重、家族は互いに助け合うことを規定。
・環境保全の責務、在外国民の保護、犯罪被害者等への配慮を新たに規定。
【第4章国会】
・選挙区は人口を基本とし、行政区画等を総合的に勘案して定める。
・政党に関する規定を新設。
【第5章内閣】
・内閣総理大臣が欠けた場合の権限代行を規定。
・内閣総理大臣の権限として、衆議院の解散決定権(国会の章に規定)、行政各部の指揮監督権、国防軍の指揮権を規定。
【第6章司法】
・裁判官の報酬を減額できる条項を規定。
【第7章財政】
・財政の健全性の確保を規定。
【第8章地方自治】
・地方自治の本旨を明らかにするとともに、国及び地方自治体の協力関係を規定。
・地方選挙権について国籍要件を規定。
【第9章緊急事態】
・外部からの武力攻撃、大規模な自然災害などの法律で定める緊急事態において、内閣総理大臣が緊急事態を宣言し、これに伴う措置を法律に基づいて行えることを規定。
【第10章改正】
・憲法改正の提案要件を衆参それぞれの過半数に緩和。
【第11章最高法規】
・国民の憲法尊重義務を規定。
322 「憲法改正原案」の国会提出
「国民投票法」の施行に伴い、「憲法改正原案」を衆参両院に提出することが可能となりました。わが党は、「憲法改正原案」の国会提出と憲法改正を目指し、国民の理解を得つつ、積極的に取り組んでいきます。
323 道州制の推進
道州制は、まさに国のあり方を根底から見直し、統治構造を根本から改める改革です。中央集権体制を改め、地方分権型国家を構築し、地域経済社会の活性化、多極型国土の形成、中央・地方全体の行財政の効率化、二重・三重行政の解消によりムダをなくし、真の行政改革を進めます。
国は、国家の存立の根幹に関わるもの、国家的危機管理その他国民の生命、身体及び財産の保護に国の関与が必要なもの、国民経済の基盤整備に関するもの並びに真の全国的な視点に立って行わなければならないものに国家機能を集約し、その強化を図ります。道州は、従来の国家機能の一部を担い、国際競争力を持つ地域経営の主体として構築するとともに、基礎自治体は、住民に身近な地方公共団体として、住民に直接関わる事務について自ら考え、自ら実践できる地域完結性を有する主体として構築します。
このため、道州制基本法を早期に制定し、その後、5年以内に道州制の導入を目指します。
324 日本国旗損壊を禁止する刑法改正
現行刑法に規定されている外国国旗損壊への罰則に加え、わが国国旗損壊への罰則を規定し、日本国に対して侮辱を加える目的で、国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処するものとします。
325 民主党の夫婦別姓法案に反対自民党は働く女性を応援
民主党の夫婦別姓が導入されれば、必ず子どもは両親のどちらかと違う「親子別姓」となります。わが党は、民主党の夫婦別姓制度導入法案に反対し、日本の家族の絆を守ります。また、女性の社会進出については、旧姓の使用範囲を拡大する法整備などで支援します。
326 民主党の「人権委員会設置法案」に断固反対。自民党は個別法によるきめ細やかな人権救済を推進
民主党の「人権委員会設置法案」が定める「人権侵害行為」は定義が曖昧で、このままでは人権委員会が新たな人権侵害行為を誘発し、言論統制社会を招来することになります。
わが党は、人権侵害に対し「ストーカー規制法」(平成12年)「児童虐待防止法」(平成12年)「配偶者暴力防止法」(平成13年)、「総合法律支援法」(平成16年)、「裁判外紛争解決法」(平成16年)、「高齢者虐待防止法」(平成17年)、「障害者虐待防止法」(平成23年)などきめ細やかな個別法を制定し、人権擁護に積極的に取り組んできました。
また、人権委員会は強大な権限をもつ独立行政委員会ですが、現行の人権擁護制度で99%以上の人権侵害事案が処理されており、また個別法も充実しているなかで新たに機関を設置することは行政改革の流れに逆行します。わが党は、民主党の「人権委員会設置法案」に断固反対します。
今後も自民党は、差別や虐待の被害者等人権を自ら守ることが困難な状況にある人々を個別法の充実により積極的かつきめ細やかに救済します。
327 国のかたちを壊す「外国人地方参政権」導入に反対
永住外国人への地方参政権の付与は、国民主権・民主主義の根幹に関わる重大な問題です。憲法上、地方選挙を含めて選挙権が保障されているのは「日本国民」であることから、最高裁判所判例でも永住外国人に対して地方選挙の選挙権を付与する法案は憲法違反であるとされています。わが党は外国人地方参政権導入に反対します。
328 「建国記念の日」、「主権回復の日」、「竹島の日」を祝う式典の開催
政府主催で、2月11日の建国記念の日、そして2月22日を「竹島の日」、4月28日を「主権回復の日」として祝う式典を開催します。
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