source : 2012.12.31 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
安倍晋三首相は30日の産経新聞との単独インタビューで、「参院選前に私の考え方を隠そうとするつもりは全くない」と述べ、かねて見直し方針を表明していた「村山談話」に代わる「安倍談話」を作成する考えを表明した。集団的自衛権に関する現行政府解釈の見直しに強い意欲も示したが、共通するキーワードは新しい時代と国際環境に対応した「未来志向」と「現実主義」といえる。
「村山談話は、社会党の首相である村山富市首相が出された談話だ。21世紀にふさわしい未来志向の談話を発出したい」
この言葉からは、過去にとらわれた後ろ向きの姿勢を改め、国際社会で日本にふさわしい立場を占めたいという首相の意気込みが表れている。
また、集団的自衛権の行使容認に関連してはこう強調した。
「日米同盟を強化することは、別に米国に日本が仕えるということではない。同盟強化で日本はより安全に、地域の平和と安定はより強固になっていく」
アジア太平洋地域の安寧のためには、日米が一層連携を深め、軍拡を進める中国と向き合うべきだとの冷徹な「現実認識」がある。
国連憲章で認められた集団的自衛権について、内閣法制局は「権利はあるが、憲法上行使できない」との見解をとってきた。だが、これでは日本近海で米軍艦船が攻撃を受けても日本は何もできない。
首相は前回在任中の平成19年5月に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を設置した。9月に病で退陣したが、法制懇は翌20年6月、公海における米軍艦艇の防護や米国向けの可能性のある弾道ミサイルの迎撃など4類型に関して、行使容認を求める報告書を出した。
ところが、当時の福田康夫首相はそのまま報告書を棚上げにし、民主党政権でも見直しは全く進まなかった。
「あれから5年が経過し、アジアの安全保障関係が大きく変わった」
首相はインタビューでこう指摘した。日米の連携強化を急ぐ理由の比重は、北朝鮮への備えから本格的に海洋進出を始めた中国へと大きく傾いたのだ。
今後の外交交渉次第だが、首相は自民党が衆院選公約で検討するとした沖縄県・尖閣諸島への公務員常駐について「可能性はある」と述べた。
それでも、現状では日中2国間だけで平和裏に問題を解決するのは難しい。日米同盟に頼るばかりでも効果は限定的となる。
「地球儀を思い浮かべ、世界を俯瞰しながら日中関係を考えていくことが大切だ」
首相はこうも語った。28日には、中国を取り囲むロシア、インドネシア、ベトナム、豪州、インドと英国の6カ国の首脳と相次いで電話会談した。首相は今後、これらの国を訪問する意向も示す。
「日米同盟を再構築し、その上に立って東南アジア諸国やインド、豪州とエネルギーや安全保障で関係を強化していく」
首相周辺は「日本が一刻も早く集団的自衛権行使を認めるよう求める声が伝わっている」と明かす。中国の台頭に脅威を覚えている国々も、日米同盟強化に期待しているのだ。
「国際社会でどんな役割を果たそうとするのか、お互いを理解し合うことが大切だ。率直に話をしたい」
首相は来年1月にも予定する訪米と、オバマ米大統領との初会談について、こう抱負を語った。
source : 2012.12.31 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
■訪米
日本の外交・安全保障の基盤は日米同盟だ。同盟関係は信頼の上にこそ成り立つ。民主党政権によって信頼が失われ、日本は今、多くの国々から侮られている。日米同盟の信頼が回復したことを内外に示すことで、アジア地域も安定した方向に向かっていく。そういう意味を込めて訪米したい。
民主党政権の失態によって迷走した基地問題に終止符を打つ。米軍普天間飛行場の移設先は沖縄県名護市辺野古という方向で進めていく。「われわれは責任を果たしていく」とオバマ大統領に申し上げたい。
■TPP
聖域なき関税撤廃という前提条件が変われば、当然参加ということも検討の視野に入ってくる。これは論理的帰結だろう。基本的には国益を守ることができるかどうかを考えて判断していきたい。日米は同盟関係だから対話ができるはずだ。まず信頼関係を構築し、安全保障においても強力な結びつきを復活した上で、考え方を大統領に率直に話していきたい。
■集団的自衛権
日米同盟関係を強化することは、別に米国に日本が仕えるということではない。日本がより安全になっていくことだ。同盟強化で日本はより安全に、地域の平和と安定はより強固になっていく。
集団的自衛権の行使について、かつての安倍政権の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)で検討した。福田康夫政権で報告書が出されたが、来年早々にでも安保法制懇の委員に報告書を安倍内閣に出し直してもらいたい。会議を開き、私が出席し説明を受ける。
あれから5年が経過し、アジアの安全保障環境が大きく変わった。あの4類型でいいのか、もう一度検討してもらう。議論を深めてもらいたい。しかるべき時を選んで、どのように解釈を変更していくか考えていきたい。
■日中関係
日中関係は最も重要な2国間関係の一つだ。経済関係では国民を豊かにするために互いを必要としている。国益がぶつかったときでも経済関係を互いに毀損しない冷静さが大切だ。ただ、残念ながら今の中国の振る舞いはそうとはいえない。中国における日系企業への襲撃や邦人への危害などは厳に慎んでもらわなければいけない。日本もそのことを国際社会にもっと強く発信する必要がある。
地球儀を思い浮かべ、世界を俯瞰しながら日中関係を考えていくことが大切だ。日米同盟関係を再構築し、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインド、オーストラリアといった国との関係を強化をしていく。ロシアとの関係も改善していきたい。ロシアにもしかるべき時に訪問したい。インドネシア、ベトナムもそうだ。
日印関係は最も可能性を秘めた2国間関係だ。シン首相が来年に来日する予定があるし、こちらからも来年に訪問したい。
沖縄・尖閣諸島での公務員常駐は衆院選を通じて申し上げてきた。それは今でも変わらないし、可能性はある。日中の互恵関係を発展させていく意志に変わりない。
■村山談話
終戦50年を記念して当時の自社さ政権で村山富市元首相が出した談話だが、あれからときを経て21世紀を迎えた。私は21世紀にふさわしい未来志向の安倍内閣としての談話を発出したいと考えている。どういう内容にしていくか、どういう時期を選んで出すべきかも含め、有識者に集まってもらい議論してもらいたい。
■河野談話
平成5年の河野洋平官房長官談話は官房長官談話であり、閣議決定していない談話だ。19年3月には前回の安倍政権が慰安婦問題について「政府が発見した資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」との答弁書を閣議決定している。この内容も加味して内閣の方針は官房長官が外に対して示していくことになる。
■憲法改正
衆院では改正に必要な3分の2近い賛成勢力を得たが、参院ではほど遠い状況だ。来年夏の参院選で改憲勢力が勝たなければ憲法改正は無理だろうし、1回の参院選で事足りるかどうかも分からない。
■皇室典範見直し
皇位継承は男系男子という私の方針は変わらない。(女性宮家創設の検討など)野田佳彦政権でやったことは白紙にする。しかし、宮家がこのままいくと次々後継者がいなくなるという問題に直面するので、新たな方向性については有識者にもう一度ヒアリングを行いながら全く白紙から検討していきたい。
■教育改革
前回の安倍政権で教育再生会議を作った。今回も同じ会議を作りたいと思っている。教育委員会は極めて大きな権限を持ちながら、非常勤で、誰が最終的な責任を持つのか不明確だ。教科書の検定基準のあり方や、採択の状況が果たしてフェアな採択になっているのかという問題もある。
六三三四制の現在の学制を単線型から複線型に見直していくという大きな改革も考えている。大学入試の仕組みも抜本的に改めていきたい。官邸で下村博文文部科学相を中心に行う。
■経済対策
自民党の経済政策は大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして成長戦略の3本の矢だ。これを同時に進めていくことが大切だ。
2%の物価上昇率目標(インフレターゲット)は、しっかりと日銀に持ってもらう。そのためのアコード(政策協定)を日銀との間に結びたい。
そして円高を是正しデフレから脱却していく。財政政策では企業投資はすぐに出てこないし雇用も増えない中では、国が引っ張っていく必要がある。ただ、無駄遣いをしてはいけない。
企業が生産を増やし利益を上げても給与への反映はどうしても少し時差がある。その時差を短くしていくための努力をしていく。
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